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boy meets ?

アレクサイド。

視点別に表題が変わります。

ひらがな→幼少

別視点→英文

カシン カシン!


「あいたっ」


木剣(もくけん)と木剣がぶつかる音。

ぶつかり合う音が乾いた音なのは、木剣を握る僕たちがまだ幼いからだろう。


年齢は1つしか違わないのに、体格では一回りもの差がついてしまった兄の剣を受け、尻餅をついてしまう。


「兄さん、まって! こうさん! こうさんだよ!」


そうあわてて言うと、兄も木剣を下した。

横で見ていた大人がぬっと視界にはみ出てくる。


「アレク、お前はさすがに貧弱すぎないか? 勉強もいいが、もう少し体を作れ」


そう言っているのは、僕と兄を指導している戦士風の男だ。僕たちの先生。

戦士風って言うか、どこからどう見ても戦士なんだけど、よく顔を見てみるともうそれなりの年齢なのがわかる。既に頭髪は真っ白。

元、第一騎士団所属 騎士団本部 大将だった人だ。

何年も前に現役は退いており、今はこうして僕たちの面倒を押し付けられてしまっている。


「先生……」


自分には剣の才能が無いとは思わない。周りの4歳の子たちとなら剣の勝負をしたって悠々と勝てるだろう。

ただ兄の才能が高いのだ。1歳の違いと言われても、1年後に兄に追いつくイメージは僕にはわいてこなかった。



それならば僕は何をしたらいいんだろう?修行終わり、汗を流しながら考える。


僕は次男だが、上には兄と姉がいる。

姉は年がかなり離れているため、僕が生まれると同じくして結婚してしまい、そこまで会うこともないが、兄が元気なので、よほどのことが無い限りは兄が後継者になる予定だ。


「坊ちゃまは頭もよく、魔法適性も高いのですから、魔法の道なんていかがでしょう?」


僕付の執事であるじいに相談すると、そんなことを言われた。

確かに勉強は嫌いじゃない。むしろ好き。勉強ができると、お父様もお母様も褒めてくださる。


それならば、と。魔法学をじいに習い始めた。


自分の家にある蔵書は閲覧制限がかかっており、いくら主の子とはいえ満足に手に取ることはできなかった。やっぱり子供だからかな。危ない本などは真っ先に遠ざけられてしまう。


そんな折、お父様のお仕事の関係でフルスト領への長期滞在が決まった。確かあそこには一般開放された大きな図書館があると、じいが話していたはずだ。これを使わない手はない!




と言う事で。


フルスト領へ到着するや否や、外出の許可を取る。

ここから図書館は歩いて5分程度の場所だ。そんなに難しいことではない。

あまりにウキウキしすぎて


「兄さんもいっしょに行こうよ!」


なんて誘ってみたが、兄さんは剣術のほうが好きらしい。魔法や勉強には嫌な顔をなさる。

いやなものはしょうがない。


「じい! はやく図書館へ行こう!」

「坊ちゃま、図書館は逃げませんので、落ち着いてからでもよろしいのでは?」

「じい! 図書館ということは、もしかしたら同じくらいの魔法学をいっしょにべんきょうできる友達もできるかもしれないんだ! じいだってお友達とけんさんするのがよいといっていたよね?」

「そ、それはそうですが……坊ちゃまと同じくらいとなりますと、さすがにいらっしゃらないといいますか……」

「兄さんもべんきょうはしているじゃないか」

「リンク様は、一応手はつけてらっしゃいますが、まだ勉強してるという域ではないですしなぁ……それに、お誘いしても来てはくださいませんでしたでしょう? なかなかこのお年で図書館に来ているお友達はいらっしゃらないかと思いますが……」



行ってみなければわからない! そう駄々を捏ねて図書館へ向かうと、一発で同じくらいの年の子を見つけた。

正直僕だって同じくらいの歳の子が僕と同じレベルの勉強をしているだなんて思ってもいなかったし、少しくらい年上だってお友達にくらいなったっていいと思ってたんだけど……。


そこにいた子は、背格好が明らかに周りと違った。机の無い椅子に座っているのは、机が高すぎて邪魔だから。

足をぶらぶらさせながら、その背丈には不釣合いなハードカバーの本を広げている。


「ほら、じい! 僕と同じくらいの年の子もいるじゃないか! やっぱり兄さんが魔法にきょうみがなさすぎるんだよ!!」


「ほ、ほんとにいらっしゃいましたなぁ……」


階段を上がり、2階の奥には机と椅子が並んだスペースがある。

持っている本ですぐにわかるが、わざわざここまで絵本を持ってきて読むようなスペースではない。


あまりに嬉しくなり、一直線に近づいてしまう。


「やあ! 君……」


嬉しさのあまり近づき声をかけると、その子の顔がハードカバーの向こう側からこちらを覗く。


女の子だった。


白いというより、もはや透明で綺麗な髪が肩下まで伸びて、絹糸のように煌いている。

肌も白く透き通っていおり、もはや周りの人間の白さとは一線を画している。

見透かされるような大きな薄ピンクの瞳。


綺麗だった。すべてが。


「はい?」


と、突然素っ頓狂な声を上げられてしまった。


……もしかして今の声に出てた……?


「もうしわけございません。へんなこえを出してしまいました」


謝られてしまった。いきなり変なことを言ってしまったのは自分なのに。


「えっっ! あっ……えっとご、ごめん、僕のほうこそ、おかしかったみたいだよ! 突然変なことを言ってしまってごめんね。えっと……僕はアレ……アレク! 君の名前は?」


おかしい。口が思ったように動いてくれない。

心臓の音が聞こえる。


「は、はい、レティーシアとも、もうします」

「へぇ……レティーシア様ですか。よい名ですね」


精一杯平静を取り繕ってみる。

レティーシア……いい名前だ。



その後、話してみると彼女は平民の子だという。びっくりだ。

魔法学の勉強を独学でやってるんだとか。彼女が平民だとか出自などなんの関係もなく、ただただ尊敬した。


きっと、僕はじいに言われていなければ、魔法学の勉強など始めなかっただろうから。

きっと、僕は家に都合のいい書物がなければ、早々に諦めていただろうから。


彼女は、村の大人が街に出る際、ついてこれる日だけ図書館に通っているのだそうだ。


また逢いたい。

今まで何をやってきたどれよりも強くそう思った。


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