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先生のスパルタのせいで、一般常識がわかりません!

「レティちゃん! 皆! 大丈夫!?」

「……ねぇレティ、さすがにこれは趣味が悪いわよ……?」


帰ってきた2人が襲われた事に気づき、駆け寄ってきてくれた。

……実際駆け寄ってきてくれたのはイオネちゃんだけか。シルは落ち着いたものだ。


「え~、ちょっとかっこよくない??……。ダメかなぁ?」

「あまりいい趣味とはいえないわ……。ちょっと(わたくし)、貴女の将来が心配になってきたくらいよ。」



「クアル!しっかりして!」


あ、そうだった。


「イオネちゃん、クアルが怪我しちゃったんだけど、治せる?」

「あ、任せて!……よいしょっと。」


イオネちゃんが薬草が山積みになった背負い籠を地面に下ろす。

……籠?籠っていう大きさじゃないような……。

ボクが立っててもすっぽり入るくらいのサイズじゃない?


そこに薬草やら見たことのない木の実やらなんやら、もうわけのわからないものが沢山入っている。

何あれ? 全部錬金素材なの?? ここって薬草4種類以外にそんなに採れるの……?


クアルに駆け寄ったイオネちゃんが、治癒を始めた。

ボクはシルと一緒に串刺しになっているグレイウルフを1匹ずつ下ろし解体を始める。

収集クエストの中にグレイウルフ種の牙と爪が含まれているからね。

ついでにもちろん、今はクエストの出ていない皮も頂いておく。


気持ち悪い。グロい。臭いがきつい。精神的にもきつい。うえぇ……


魔獣といっても、死んでしまえば1匹の獣。

その死体を冒涜するようでなんとも気の進まない作業だった。


数をこなせば慣れるのかなぁ……?


「グレイウルフが襲ってきたの?」

「うん、最初は3匹だったんだけど、その時に負傷したクアルの血の匂いで寄ってきたみたいで。」


「グレイウルフが3匹で行動してるってことは狩りの最中かしら? 不運だったわね。」

「まぁボク達、獣から見ても強そうにも見えないもんね。襲われちゃうかぁ。」


シルが手を止め、考える素振りを見せる。


「ん? ……あれ? そういえばおかしいわね。グレイウルフってマナで活動している魔獣よね……? レティを襲うなんて……?」

「え? なんで?」


「だって貴女、確か魔力量が桁違いだったわよね? マナで活動してる魔獣やモンスターなんかは、相手のマナ量を感じやすいから、低位の魔獣なんかは向かってこないはずなんだけど……」


「……そうなの? あ、でも確かにグレイウルフはボクにはむかってこなかったけど……。うーん、でも今回ボクの方にこなかったのはそういう理由じゃないしなぁ」


ん? でもそれだと最初のクエストの時には、姿や音を消していたとはいえグレイウルフのど真ん中にいたんだけど……? 特にグレイウルフに変化もなかったような気も?? マナを感じられても、流石に見えなければ警戒もしないのだろうか……? 確かに、シュヴァルツ・クラウンウルフだけは、マナの波動を飛ばしていたわけでもない最初っからボクの方を見ていた気がする。あれ、本当に見えてたのか。


シルの言っていることがただの推測や憶測であればいいのだけれど、シルが推測や憶測でそんなことを言うだろうか? 余りそういったことを言っている所は聞いたことが無い。気になるけど、この場で答えは出ないからしょうがないけどね。


ふと魔力量が気になったのでパッと久しぶりにステータスを開いてみる。


最大魔力量:2212


「あ、魔力量もちょっとあがってる。2212だって」

「え?増えてるの?こんな短期間で……? ……貴女おかしいわね」


「ええ……おかしいって」


「逆にありすぎて気づかれないのかしら?まぁわからないことを考えていてもしかたないわね」




「どう? 足、動きます?」

「えっ、全然痛みもなくなったかも……ありがとうございます!」


「クアル! よかったぁ」

「心配かけてごめんな」


「造血剤作っておくので、飲んでおいてくださいね。緊急じゃない限り魔法で造血するのはお勧めしないので。こちらの錬金術で作った丸薬の方が副作用もなく調子いいと思いますよ」


「何から何までありがとう……!」

「ありがとうございます!」


どうやら治療も終わったらしい。


「イオネちゃん、もう採集はいいよね? 後はグレイウルフの解体だけ皆でやっちゃって、それが終わったら帰ろっか」


「はい! 採集の方は、もう籠もいっぱいになっちゃったので大丈夫です。解体、手伝いますね」


イオネちゃんの大きすぎる籠はボクの次元収納にしまっておいてあげる。

質量が増えすぎてイオネちゃんの次元収納じゃ魔力が枯渇してしまうからね……。



次元収納を使えばまだまだ採集はできるんだろうけど、このレベルの薬草を大量に採集したところで、全部買い取ってもらえるのかといえばそうでもないし、採取してしまえば長持ちするわけでもない。何事も限度が重要だからね。

いくら自然に生えてくる草だろうが、根こそぎ取ってしまえば資源が枯渇してしまう。


採集に結構時間を使っていたので、これから手分けしてグレイウルフの解体と、残った使わない部分の処理を15匹分やってから王都に帰れば夕方くらいになるかな……?


丁度いい時間だ。


今日は皆も誘って、王都のお店で食事でもしたいな。

昨日行った所もおいしかったけど、王都には沢山のお料理屋さんがあるんだから、色々な所に行って見たいよね。きっとシルがいいお店を知っているに違いない!


そんな期待をしながら手を進めた。




王都に帰ると、夕日も暮れてしまっていた。予定よりも遅い時間。

すぐにギルドへ報告に寄る。


「今日は本当にありがとうございました!! 僕達、今日が最高収入です!」

「私、魔法士の方と初めてパーティ組んで、魔法がどれだけすごいのか初めて知りました……。今度組む機会があったら、もうちょっとうまく立ち回れるようにしておきますね!」


「レティは規格外よ? あれを基準にしちゃだめよ。」

「そ、そうなんですか……?確かに、なんというか話に聞く魔法よりもすごかったです。」

「そ、そうなの……?」


いつもフラ先生と行ってるクエストじゃ、あの程度じゃ何も捌けないんだけどね……。

やっぱり先生、受けるクエスト間違ってるんじゃない?




ギルドで報告を終えると、2人と別れた。


一緒にご飯でもどうかと誘ったのだけれど、今日のクエスト収入は、薬草4種類の納品・グレイウルフ15匹の討伐・グレイウルフの牙・爪の納品。全部込みで1人あたり銀貨1枚に満たない程度だったので、王都で食事をしたら収入が消えてしまうという理由で辞退されてしまった。


……え?1食で?そんなに外食ってお高いの……?


「ね、ねぇシル。王都でお食事するとそんなに高いの?」

「あら? 昨日イオネと一緒に外で食事したのではないの?」

「あ、はい。私も行ったんですが、リンク王子様に出していただきまして……。」


「あら、あいつが人に奢るなんて殊勝な事するじゃない?……どうせレティが奢ってとか言ったんでしょ?」

「あはは……」

「流石シル。よくわかったね!」


「そんなことだろうと思ったわよ。さっきの2人が外で食事をすると今日の儲けがなくなっちゃうって言ってたのは、別に1食で無くなるって意味じゃないわよ?」

「そうなの?」


「そりゃそうよ。(わたくし)も今日のような純粋な方達だったら、一緒にクエストを受けるのは嫌でもないし、レティの為になるのだからいいのだけれど、レティは今日一緒に戦闘したのならわかるんじゃない? 登録冒険者の基礎戦闘力とか、知識とか……。諸々……ね。」


「……。」


あれが一般的なの……?

もしボクがイオネちゃんとシルと一緒に森の奥に入っていたら、2人は確実に死んでいたよ?

戦術も戦略もあったもんじゃない。

ただ死ににいくような戦い方。


……確かに、半年前のボクが剣1本渡されてあの状況に立たされたら?

同じ事をしていたかもしれないと、今になってぞっとしてきてしまう。




「だから、あの方達は今日の収入を大事に使わないといけないのよ。装備を買い換えることも、消耗品を買い足す事だってできないでしょうね。」

「そう……なんだ……」


「不謹慎な事を言うようだけど、レティの好感度スキルポイントって、好感度がある人物が亡くなってしまったらどうなるのかしらね……?」

「え? どうなるんだろうね……。今の所そういう人がいないからわからないや。でも、正直知らない方が幸せかな。」


「そうね。」


「レティちゃん、またあの2人と組んであげたらいいんじゃない?私も楽しかったし、授業が無ければ一緒に行きたいな。」

「うん。そうするよ。他にも誘えそうな人いたら、誘ってみようかなぁ。」


「貴女、ここで何があったのか忘れたわけじゃないわよね? 不用意に変な人に声をかけてはダメよ?」

「ああ、確かに……! 難しいなぁ。」


「フラさんの紹介で研究室の生徒さんと一緒に行けるのでしょう?暫くはそれでスキルポイントを獲ったらいいじゃない。」

「とりあえずそうするしかないね。明日からがんばろ。」


「食事にでも行きましょうか。(わたくし)が安くて美味しいお店に連れていってあげるわ。」



そういわれて連れていかれたのは、999匹の子豚だった。




思わずイオネちゃんと顔を合わせて笑っちゃったじゃない。ふふ。




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