王都で初めてのお食事だよ!
「じゃぁ、ゴブリンの討伐登録だけしちまうか。崖が崩れた分、形くらい残ってるだろ?」
「ほいほい。じゃあ登録しちゃうね~」
崖の辺り一帯を座標指定してモンスター討伐登録術式の入った魔水晶に魔力を流す。
色んな種類のゴブリンが登録された。
総数は213匹。
後は外で倒したゴブリンをあわせれば約250匹といったところかな。
「ふぃ。お疲れ様」
「お疲れ、レティちゃん」
さすがに外までだと範囲が広すぎるので、ボクとイオネちゃんが2人で待機して魔力を回復している間に、先輩とリンク様の2人で討伐したゴブリンを登録して回っているところだ。そちらのほうは死体も確認できるので、魔水晶の確認をして死体を1箇所に集める。ダンジョンの中じゃないから放置しておいたら死体が残ってしまう。
血の臭いや死骸っていうのは、もちろんそれによって魔獣やモンスターを集める事になってしまうこともあるし、何より衛生的にもよろしくない。
ただでさえモノブーロ村からは血の臭いが漂っていそうなのに、このままゴブリンの死体を放置するわけにはいかないよね。
死体の処理までが仕事のうち。
フラ先生は1人、崩れた崖を調査している。
「他の村は大丈夫だったかなぁ?」
「そうだね。無事だといいんだけど……」
「フラ先生が当たりはここって言ってたし、ここより酷くないといいなぁ」
「そうですね……。ギルドに帰ったら確認しておきましょう」
1時間ほど休憩していると、3人が揃って戻ってきた。
崖の調査の結果、アークゴブリン種は1匹だけだったようだ。安心する。
戦い方はもう把握したけど、さすがに連戦はやめてほしい。
3人の疲労もあり、来たときほどは無理をせず、ゆっくりと帰ることにした。
「……。」
王都に戻ってから、ギルドに報告を終えた帰り道。
沈黙が続く。
「あ~……お腹すいたぁ……」
「確かに。疲れたな……」
「リンク様ー、なんかおごってぇ」
「……ああ? 何がいいんだ?」
「……え? 奢ってくれるの?」
「はぁ? お前が言ったんだろ」
「イオネちゃんもいいよね?」
「……ああ、まぁ……別にいいけど」
「あ……えっと……すみません……。」
「王子、俺は俺は?」
「お前は自分で払え」
「あたしのも頼むわぁ」
「講師が生徒にたかるな」
「いいじゃんかよぉ。たまにはよぉ」
ギルドに報告してからすぐに皆でご飯を食べに行くことになった。
いやな空気を吹き飛ばしたいのもあるだろう。
ギルドに報告されている情報を調べると、今回のゴブリンスタンピードの件の続報が上がっていた。
上級冒険者パーティのベルデが向かったピーノ村は、先生の言ったとおりゴブリン軍団の拠点が近くにできていたらしい。ピーノ村もかなりの損害を受けており、男性はほぼ全滅。
そして、ボクたちが向かったモノブーロから連れ去られた女性もあわせ、約30人近くの女性が見つかったんだとか。
……生存者として。
他の女性は、もう亡くなっていたらしい。
生存者が30人いた。
……と言っても正直、報告書を読んでいて頭が沸騰しそうになるくらいの憤りを禁じえないほどの惨状がそこには記されていた。同じ女性として許せるわけがない。
死んでいたほうがましだったんじゃないかと思えてしまうほど……
酷い惨状だったらしい。
ゴブリンスタンピードが発生してからまだ1週間も経っていないはず。
それなのに、ゴブリンの子供が100匹以上生まれていたらしい。
それがどこから生まれてきたかなんて、考えたくもないんだけど。
抵抗できないよう。逃げられないよう。
殆どの女性は手足が切り落とされるか、使い物にならなくなっていたらしい。
それでも……命があっただけましだと言うのだろうか?
四肢欠損は一般的な神聖治癒系魔法で治らない。
もちろん強力な固有魔法や、上級の神聖適性持ちなら治せないことはないのだろうけど、村を襲われ、突然手足を無くした彼女たちが、どうやってそんな治療費を稼ぐのだろうか?
ましてや家族も亡くしてしまった彼女たちは、どうやってこれから生きていけばいいというんだろう?
救出者の規模もあり、ピーノ村のクエストはまだ完了されていない。
大規模な救援隊が明日、出発するんだそうだ。
思い出しただけで腸が煮えくり返る。
今後、この被害はどうなっていくんだろう……。
そして最後に孤立していた3つ目の村。シルロ村。
ここはまだ他の村より幸いなことに、それほど被害が拡大していなかったようだった。孤立していたのがむしろ幸いしたのだろう。
モノブーロ村に侵攻していたゴブリンどものルートから外れていたようだ。
ただ、残党は結構な数がいたらしく、一般冒険者のパーティがいくつか協力して結構な数のゴブリンを討伐したと報告が上がっていた。その数60。
こうやって報告を見ていると、村が60匹のゴブリンに襲撃されたって言うだけでもものすごい大事なのに、それが300匹……?確かに大事どころの話しじゃない状況だよね。
ボクたちが向かったモノブーロ村のクエスト難易度はNと認定されることになりそうだ。
今回はそもそもスタンピードが危惧されていたので、難易度等級が前ほど跳ね上がったわけではないのだけれど、それでもかなり跳ね上がった。
まだ難易度が確定したわけではないけど、Nと認定されればこれでまた上級冒険者要件が1つ溜まっていくことになりそうだ。
まだボク、登録冒険者ですけどね? 冒険者証、ポイントカードですよ?
少し暗い雰囲気の中、リンク様に連れられてご飯屋さんに入る。
王子様ということもあり高級なお店なんかも期待していたんだけど、そういうわけでもなかった。酒場ではないけれど、いかにも冒険者が通う食堂といった感じだ。
“999匹の子豚”という名前らしい。
「へぇ~ボク、王都でお食事するの初めてかも!!」
「あ、そういえば私も学食以外は初めてかもです」
「そうなのか? 結構うまいんだぜ。ここの料理。特にやっぱ店名にもあるように豚料理がうまいな」
「王子、ここ好きだよね」
「ああ、兵科の連中とクエスト行くときには結構くるよな?」
「だね。ただその……普通の女の子にはちょっと油っこいかもしれないけど……」
「あ……あぁ、確かに……。兵科の女を基準にしちまったな……さ、先に言えよ……」
「ん? ボクは全然平気だよ? イオネちゃんは?」
「私も多分大丈夫ですよ? 豚肉のお料理好きですし」
「ならよかったか。フラ姉も食ってくだろ?」
「ああ、食ってくぞ。これから学園戻って報告書とか残ってんの、だりぃなぁ」
5人で999匹の子豚に入ってみた。
内装はかなり綺麗だけど、どこか冒険者が好みそうな木造をしている。
注文を王子様たちに任せると、かなり大ぶりな料理が沢山運ばれてきた。
骨付きの豚ステーキに、とろっとろになった角煮のような豚肉の塊。
野菜と炒められた赤い香辛料の利いた豚肉料理、揚げ物みたいなものまである。
肉料理だけじゃなく、パンやサフランライスのようなご飯も大皿で運ばれてきた。
さすが男注文。野菜類が極端に少ない。
ジュースで乾杯する。先生はお酒だけどね。
料理からして、ちょっと重いかと思ったけど、どの料理も空いたお腹に染み渡るように消えていく。
めちゃくちゃおいしい。
油が多いから途中で胃もたれするかな?とか思っていたら、そんなこともなく完食してしまった。
……ちょっと食べ過ぎたけど。
苦しいかもしれない。イオネちゃんも苦しそう。
クエスト終わりにまたこようかな。
お支払いもそこまで高くなさそう。
ま、今日はボクたち払わないんだけどね!!
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