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現実味がないんだよね。信じられないって言うか。


「……はぁ」




さすがに、あの沸いたギルドロビーの空気と、慈愛の目で見られ続ける防具屋店内の居心地に完敗して逃げてきた。ここは王都内の広い公園にあるベンチ。空が青くて気持ちいい。

長閑で日風も気持ちいいし、王都内としては比較的静か。とてもいい場所を見つけたものだ。




……よく考えずとも、こんなチャンス勿体無いくらいなんだよ。

うちは平民の中でも、どちらかと言えば貧しい方だと思う。

そんな家庭の娘が、もしこの国の何番目かはわからないけど……、妾だろうがなんだろうが、王宮に入りましたってなれば、家族も喜んでくれるだろうし、何より楽をさせてあげることができる。

弟達が、身分でいじめられる心配もなくなる。


そう考えれば悪い話じゃないのはわかってるんだけど……

ボクの気持ちが追いつかない。

今この火照っている頬も、恥ずかしさであって……。


嫌いじゃないけど……好きでもない……と思う。

ああっ……これ考えすぎて馬鹿王子のことで頭がいっぱいになるやつだ!


あの空気じゃ、今度会ったら面と向かって言われかねない。

そうなったらちゃんと答えなきゃいけない。


平民のボクが、否定なんてできようはずもない。

実質、面と向かって言われたらゲームオーバー。

ボクが世界を廻る夢はそこで潰えることになる。



なんかそれでもいいんじゃないかとか思える自分もどっかにいる。


うぅ……頭がぐるぐるしてわかんないよ。




「……はぁ」


「どうしたんだい?」


「え?」


何度目かわからないため息をついていると、突然話しかけられた。


「あ、アルト様……」

「浮かない顔をしているね。何かあったの?」


アルト様は、学園からしてみれば外部の人で、冒険者ギルドに所属しているから、どうせいつかはこの話も耳に入るだろう。それならば、相談してみるのもありかもしれない。


どうせ1人で考えてたって埒があかないのだし。


さっきギルド内であった話をしてみる。


「あはは、まさかこの国の第一王子様を虜にしちゃうなんて、すごいじゃないか」

「そういう話じゃないんですよ~……」


「リンク王子は、冒険者としても腕が立つし、俺から見たって有望株だと思うけどねぇ」

「そうなんですけどぉ……」


「答えがでないのかい?」

「嫌いじゃないけど好きでもないっていうか……でも、ボクは冒険者でもなんでも、世界を巡るのが夢なんです。王宮に入ったりしたらそんな自由もないですよね?」


「う~ん、あの王子なら、君がそう願ったら融通してくれそうな気もするけどね。まぁ王宮の人はいい顔をしないだろうね……」


「わ、わかってるんですよ?リンク王子はもう16歳だし、結婚しててもおかしくないですから、もしボクがここでOKなら、妾とかじゃなくて……その……」


「いや、あの王子は多分、2人も奥さんを取らないよ。君が王妃様になる。それだけだろうね」


みなまで言わないでよ……


「……はぁ。それが幸せだろうってこともわかってるんですけど……」


「じゃぁ待ってもらえば?」


「待ってもらう?」


「王子のほうが勝手に暴走してるだけなんでしょ? じゃあ待たせちゃえばいいじゃない。君が答えを出すまで。何年でも」


「……えぇ……そんなことボクにはできないですよ……。やっぱり身分差って考えちゃいますし、面と向かって言われたら断れないですよ……」


「うん、だからシルヴィアちゃんに頼んじゃえば?」


「……え? シルに?」


「100%相談に乗ってくれると思うな」


「シルに……。うーん、どうせシルの耳にも入るだろうし、先に相談してみようかなぁ」


「いい結果が返ってくるといいね」


「あはは……まぁどっちに転んでも、結果はいいんですけどね。ほんと、幸せな悩みでごめんなさい」


「いいじゃないか。君が幸せなら、俺も嬉しいよ」


うぅ、ボクはアルト様に惚れそうだよ……。


「あ、ありがとうございます……」


「ま、とりあえず結論も出たし、俺はそろそろ行くね。レティーシアちゃんも、日が暮れるまでこんなとこにいちゃだめだよ? 君はただでさえ薄着なんだから」


「え?……あ、はい……」


え? ボクってそんな薄着なの?

確かに、周りに半袖だったり5部袖着てる人って少ないなぁとは思ってたけど……。


アルト様が公園の陰に消えていくまで目で追ってしまった。



……はぁ。


ああ、もう!


グリエンタール!!! フラグ回収しないでって言ったじゃん!

しかも回収の方向が斜め上過ぎるでしょ?


大体、恋愛シミュレーションゲームって、ボクのほうの選択肢もあるはずじゃん!

ボクの行動の結果、リンク王子とか……アレクとか……アルト様とか? そういう出演者を落とすんじゃないの!?

確かに、あのゲームは落とす落とされるが自由だったから、相手側が積極的に落としに来る女性側が楽で、それで確かに、ボクは最初女性側でプレイしていたんだよ??


まぁ確かに今は正真正銘女ですけど。


でも、これじゃ一方通行じゃん!!


ボクに選択肢が回ってきたことが、過去1度もないし! あったの? なかったし! なかったよね!?


ああ、シルになんて相談したらいいの……。





はぁ。そんなことをぐだぐだ考えていたら、結局暗くなってきてしまった。

ボクの1日ってなんだったの? 意味がわからない。

これじゃあ、普通に魔法科の授業受けて復習してたほうが遥かに有意義だったよ。


ほんと、何してんだろ……。



「ぐひひ、姉ちゃんいい格好してんな」



もうそういうフラグはお呼びでないっつの!!!


わけのわからないことに悩む余り、怒りがこみ上げてきた。

小汚いおっさんはもうお呼びではないのんだよ!




「はぁ」


光騎槍を呼び出す。

魔法構造の構築に失敗したのか、刃の先からものすごい熱量を放っていて、暗くなってきた風景に熱が光で揺らいでいるのが見える。


公園の中、光源となった槍がボクの顔を映し出す。


「ひっ化け物っ……!!」


はぁ? 失礼ね。襲ってきておいて化け物呼ばわりとか。ほんとに失礼にも程がある。


……こんなおっさんに構っている暇もないのだ。

また絡まれる前に帰ろう……。


あれ?自分がどんな顔をしているのか、わからない。


なんか怖い。



早く帰ろ。





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