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馬鹿なの?じゃなくてもう馬鹿だよ!!

ボクは防具を買いに、冒険者ギルドにやってきた。


え? いやいや違うよ? 間違ってないんだよ?

防具屋さんに向かっていたんだけど、防具屋さんは冒険者ギルドの隣でしょ? ほら。クエストとか気になるからなんとなく。なんとなく……ね?


1人で冒険者ギルド……あまりいい思い出もないけど、さすがに何回か来てしるし、一緒にいるのがフラ先生ということもあって、周りからは魔法学園の生徒という認識がついている。

普通に私服で来ても、あんなことにはそうそうならないはずだ。


それとなく、いつもの癖で掲示板を見てしまう。




掲示板は大きな物が5つ並んでいて、それぞれの掲示板毎にある程度依頼内容を分けた作りになっている。


採集・護衛・討伐・その他・優先の5つ。


なんとなく、いつもの癖でいいクエストがないか探してしまう。

いつもっていったって、ここに来たの4回目だけどね。


むむむ。優先掲示板にゴブリンの排除依頼が3枚も来ている。

しかも違う村ごとに。

ボクとしてみれば、本当ならこういうクエストをこなしてるくらいだったはずなんだけど……。なんで駆け出し冒険者が水中で死闘を繰り広げているんだろう。


それにしても、これって結構危ないのでは?

ゴブリンの討伐依頼が同じタイミングで一度に3件。それも近隣とはいえ違う村からっていうのは、なんか違和感を覚えるのはボクだけだろうか。


そう思いながら眺めていると、ボクと同じ登録冒険者のパーティがゴブリン討伐の話をしていた。

登録者で受けられるクエストではあるけれど、違う村で3件同時ということはやっぱり相当大規模なゴブリン集団が発生している可能性だってあるわけだし……。


3人パーティ。大丈夫なのだろうか。


まぁボクは今日、クエストを受けにきたわけじゃないから、他のパーティが先行したりしているのかもしれないし、登録してから数日しか経っていないボクからしてみれば、あの人達は先輩なのだから、大丈夫か。


「ん? レティーシアか?」


そんなことを考えていたら、後ろから声をかけられた。男性の声。


「ん? あら、王子様。お久しぶり」

「おう……一昨日兵科総合の時に一緒に走ってたけどな」


「え? そうなの……? そういえばあの日って、あまりに疲れすぎてたから、あの日の訓練のことほとんど覚えてないんだよね……」

「だろうな……死んだような目をして話しかけても反応なかったからな……」


「えっ、そ、それはごめんなさい。後でフラ先生に聞いたら、多重自己強化? の後遺症だったらしいんだけどね。あの日はその後遺症の1日目で4時間走らされたから、もうほんと記憶飛んじゃったよ」


「ああ、なるほどな。あれ最初は結構辛ぇよなぁ」


リンク王子様は、アレクと違って女性の取り巻きをいつも周りに連れていない。


「リンク王子様はこれからクエストでも受けるの? 1人?」

「いや、これから兵科の連中と一緒だぜ。お前もくるか?」


「ううん、ボク今日はクエスト受けに来たわけじゃなくて、防具を買いにきただけなんだよね」

「ああ? だって今クエスト見てたじゃねぇか」


「う~ん……クセ?」

「クセがつくほど通ってんのかよ……。」


「4回目!」


どや顔をしてみる。


「王子の俺よりすくねぇわ!」


「ふふふ」


ぞろぞろとギルドの入り口に魔法学園の制服を着た生徒が集まってきた。

王子と待ち合わせている兵科の生徒だろう。

やっぱり1学年上の制服を着ている人が多いかな。

そのうちの男女2人がこちらに歩み寄ってくる。


ティグロ先輩もその中にいた。流石に研究室を何度も出入りしているだけあって、最近一番親しくなった先輩の1人だろうか?


「あ、ティグロ先輩もこれからリンク王子様とクエストですか?」

「やあ。レティーシアちゃん。今日は先生は一緒じゃないのかい?」

「あれ? 先生、研究室にいませんでした?」


「ああん? いつの間にティグロと仲良くなってんだよ?」


リンク王子様、そんなあからさまに嫌な顔しないでよ……。


「王子、レティーシアちゃんはフラ先生が特殊魔法課の授業を持ってるから、研究室でよく会うだけだよ」

「へー」


「そうそう。最近よく会いますね!」

「そうだね」

「……」


あ、そうだ。ティグロ先輩って前衛タイプじゃない?


「あ、ティグロ先輩って前衛タイプですよね? 今度ボクもクエストに連れてってほしいな」

「ん? 先生といってるんじゃないの?」


「あ、先生とも行ってるけど、先生は仕事で忙しいじゃない? でもボク生活費くらいは自分で稼がなきゃいけなくて……。だから授業じゃないときも冒険者ギルドで仕事したいの」

「へぇ、そうなんだ。いいよ?」


「おいおい、待て待て、俺も前衛特化でティグロよりは強いんだから、俺だっていいだろ」

「え? リンク王子様は王子様なんだからダメだよ……。何かあったら平民のボクじゃ責任とれないもの……」


「……お前ちょっとシルヴィアに似てきたな……。ティグロだって伯爵の3男で立派な貴族だぞ?」

「え? うそ。似てきたかな? 嬉しいかも……」


「嬉しいのかよ……。とにかく、俺が王子なのは忘れていいから。行くなら俺と行けよ。…………嫌じゃないならだけど」

「え……? うん、嫌では……ないけど……」


「じゃあ決まりな。今度、日にち決めとくから」

「う、うん……。予定が合ったらね……? あ、お隣の防具屋さんに行くし、皆さんの足を止めちゃ悪いから、ボクはもう行くね」


「ああ」


リンク王子様は別に嫌いなわけじゃないんだけど、ぐいぐいこられると引いてしまう。

嫌いでもないけど、好きなわけでもないんだよね……。


ギルドの横にある扉を抜けると、視線が一気にこちらに向いた。


……え? 何?


向こう側から先輩たちの会話が聞こえた。

うわぁ。会話が全部筒抜けだ。話してる声が王子なのを皆わかっているような顔で注目されている……。居心地が悪い。けど防具を買いに来たと言って逃げてきた手前、すぐに店を出ることもできないんだよね……。




「あらあらぁ~~??王子ぃ。今回は手ごわいじゃな~い? ぜんっぜん脈ないわね。諦めたら?」


女性の声かな? 扉を抜けてくぐもって聞こえるから、正確にはわからないけど。


「うっせぇ。すぐ手に入るようなもんじゃ面白くもねぇだろ……」


「あ~……。いるのよねぇこういう男。女を落とすまでがゲームで、落としたらそのまま。釣った魚に餌をあげないタイプ。ダメ王子じゃない」

「フィ、フィーラ……! 王子になんてこと言うんだよ……」


「いくら国の王子だからって女の敵は女の敵よ。あの子あれでしょ? よく噂になってる平民から飛んで魔法学園に入ったって言う超天才ちゃん。真っ白ですぐわかるって本当ね。そんな、いたいけな平民の女の子を身分で落とそうなんて可哀想じゃない」


「ああ?」


うへっ。なんかゾクっとした。王子様本気で怒ってない?

っていうか扉が薄いのか全部聞こえてるんですけど。そろそろクエスト受けるなら受けて行ってくれないとボクがめっちゃ恥ずかしいんですけど!皆ボクのほう見ないで! ボクもうここにはいないよ! いないからっ!!

後、王子様……この国の王子が街中で、平民の女の子口説いてるって公言してるのはどうなの!? いいの!? 周り皆聞いてるんですけど……。


「な、何よ?」


「次期王の座なんてアレクにくれてやってもいいぜ」


「は……? え? 何いってるの?」


「だから! 自分から欲しいと思った女はあいつが初めてなんだよ! あいつが王子だからダメだというなら、俺はそんなもの捨てるっつってんだ!」


はぁぁぁぁぁぁ!?


王子!馬鹿なの?あ、シルによく馬鹿っていわれてるけど……

自分が何言ってるのかよく考えて!


後、そこ冒険者ギルドのロビーですよ!?

周りの人皆聞いてるんだよ!?

馬鹿なの!?


……馬鹿なの!?!?


え、ちょ、ちょっとまって……


グリエンタールの好感度表を開いてみる。

ハートマークが右に動いていった。


ああ、これ煽られて完全に思い込んだタイプのやつだ……。




わあ!っといきなり隣のギルド内が騒がしくなった。

どうやら聞いていた冒険者が一気に騒ぎ出したようだ。


……は!? これボクの立場はどうなるのよ……?


え? 何? 皆さん、そんな暖かい目で見ないで……

ち、違うよ? ボク王妃様とか……いやだよ!?

ボクは世界を廻りたいんだよ!?


ああっ、シルの声で「レティーシア様」が再生されるっ!!

絶対嫌だっ!




「……王子、マジの本気じゃん……」


「……いや、俺もさすがにここまで本気だとは……」


「……これ、あの子の知らないところで公認されたわね。可哀想に……」


「……今度研究室で会ったら、俺からそれとなく伝えておくよ……」


「……シルヴィア様、めちゃくちゃ怒るんじゃない?」


「うわぁ……それは怖いな」






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