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ダンジョンでサバキンを捌き・・・ごほん・・・。

「お前えげつないことするな……。」


そろそろ理解がおいつかず説明を求めたいフラ先生が、ダンジョンの地形を変えてしまった魔法を見て呟く。そこにあったはずのヘルツクライン鉱石も結晶化してしまい、色も形も変わってしまっていた。


さすがのモンスターにも理性はある。この惨状を見て突っ込んでこようなんていうモンスターは1匹もいなかった。文字通り一網打尽にされた集団の向こう側で、運よく設置盾(アンカーシールド)の牢獄に入らなかったモンスターの陰は、既に跡形も無く消えていた。ま、そりゃ逃げるか。


「あ~あ~、これじゃ討伐登録も残んねぇよ……。せっかく倒したのにくたびれ損だぞ」

「ええ~! 再生は!? 再生してまた倒そう!」


「お前、金がからむと結構酷いよな。大体こんな炭の塊どうやったら再生すんだよ。こっから再生してくるモンスターとか逆に怖ぇだろ……」

「むぅ。向こうにいたモンスターちゃんも隠れちゃったし、体は多重自己強化の後遺症もあってだるいし……はぁ……疲れた……。」


「まぁ相当な魔力量を消費してっからなぁ……。ん~まだ昼過ぎだが今日は引き上げるかぁ。討伐数だけで大分稼げたし、少量の鉱石も採取したしな。別にクエストは期限付きじゃねぇから、今日すべてを終わらせる必要もねぇしな」


「うぅ、またここ来るの……?」

「うまいだろ? 今日はたまたま誰もいなかったが、ライバルがいないダンジョンなんてそうはない。その点このダンジョンは結構毛嫌いされるからな。クエストが複数でてる今なんかは完全にねらい目だろ」


ちなみに、フラ先生の“うまい”は味覚的な味のことを言ってるわけじゃないよ!?

金銭的においしいって方ね!


「まぁ……確かに。でも先生、今回の討伐数っていくらくらいになるの? 結構すごい量狩ったと思うんだけど」

「あ~、そうだな。魔物から売れる部位を解体したわけじゃないし、魔水晶取り出したわけでもないしなぁ。討伐数が大体750匹として、1匹銅貨1枚と換算しても……金貨1枚と銀貨1枚超えるぐらいか……? 半日としちゃかなり上々じゃねぇか?」


「ええ!? そ、それだけ?? そんなぁ……。あ、じゃあ4層の入り口に戻ってサバキンとか魚モンスターの死骸漁ってから戻るのは!?」

「……疲れてんじゃねぇのか?」

「こんなとこまできて、べとべとにされるわ制服は破かれるわで金貨1枚じゃ割りに合わないよっ!」


2人で分けたら半分。

制服買いなおす出費を考えると本当に割りにあわないんだよ!?


「いや、半日で金貨1枚って効率は普通に悪くねぇんだぞ?」


まぁ……確かに。前世で言えば半日給70万ってこと? こっちではボクの家族なら銅貨1枚で家族1日が過ごせるくらい。そう考えれば、金貨1枚ってボクの家族を2年も養える金額なんだよね。シルの支払いを間近で見てから、金銭感覚がちょっと狂っちゃったのかなぁ……?


「でもほら、お金がそこらへんに転がってて、時間もあるわけじゃない?! 見逃す手はないよね!」

「まぁ、お前ができるっつーんなら別にあたしはいいけどな。そういや、お前さっき次元収納使ってただろ。魔力量に余裕はあるのか?」

「うん。これから戻るだけなら、それなりには入るよ?」


「なら、サバキンのお頭だけ落として身も持ち帰るか。あれで結構美味いんだぜ?」

「うぇぇ……食べる時気持ち悪い顔が浮かびそうだよぉ……」


「別に売り払うんならお前が食べるわけじゃないからいいだろ」

「あ、そっか。……でもちょっと食べてみたいかも。お腹空いたし」


「それなら、どうせモンスターもどっか行っちまったんだ。焼いて食ってみるか? 丁度さっきお前が焼いた石がいい感じの温度だしな」

「おお! なるほど、それはいいかもっ!」


料理しちゃえば元の顔がどんなに気持ち悪くたって関係ないしね!


「レティーシア、土操作魔法術式(ロックオペレイト)って使えるか? 辞書に登録する魔法構造は全部載ってるはずだが」

「ん。多分使えると思うけど」


「こんなじめじめした場所で飯もなんだ。サバキン回収したら運河の河川敷で食おうぜ。この岩も持ってきゃ、わざわざ加熱する必要もねぇしな」

「おお、なるほど。了解しました! 先生!」


「はぁ。いつもそんくらいやる気があるといいのにな」

「ボクはいつでもやる気に溢れているんだよ?」


「はいはい。あたしはエレメンタル系は登録に時間がかかるんだ。先にサバキン回収しとくから、岩の回収頼んだわ」

「は~い」


そういうと、フラ先生は4層の入り口へと戻っていった。

ザパーンッ!と景気のいい音が聞こえる。


……気持ちよさそう。魚を焼くのに丁度いい岩を見繕ってから、ボクも4層で水浴びをした。

足が着けば怖いこともないのだ!




水中保護魔法を掛け、運河を戻る。

4層の入り口に浮いていたサバキンは200匹を超えていた。

残りは下層のどこかに引っかかっているんだろうけど、帰りに回収するには水中保護の時間が足りないし、新しいモンスターが湧いてきたら大変なので、また後ろ髪を引かれながらも後にした。



外に出ると、太陽が西に傾いてきた辺りで、春の陽気がとても清清しい。

河川敷でサバキンを調理してお昼にした。


おいしい。


……おいしい!


あの気持ち悪い顔の魚がなんでこんなにおいしいのか。

グレイウルフはあんましおいしくなかったのに。


「どっかの研究に載ってたな。魔獣は代謝が低いから、不純物を吸収しちまうんだと。だから肉はまずいらしい」

「へぇ、先生なんでも知ってるね」


「講師の前に冒険者だからな。飯事情っつーのはやる気にもかかわるだろ?」

「確かに!」


魔獣はマナで呼吸をするから、体が酸化しにくいのかも。だから代謝が低くなって不純物が吸収されてしまうのかな?


その後、不人気ダンジョンとはいえ、ダンジョンであることには変わりは無い。

近くに小さな町や露店があったので、肌を隠せるくらいの服をフラ先生に買ってきてもらった。フラ先生もべちゃべちゃな服のままじゃ馬車にも乗れないしね。

ここの露天商さんは、こんな状態の冒険者を見慣れているのだろう。

べちゃべちゃなフラ先生を見ても、嫌な顔一つしなかった。商魂逞しい。


っていうか明らかにフルカルド需要だろうなって思えるような石鹸や、露店に衣服が売っている所なんて初めてみたよね。



こそこそ着替え、馬車に揺られて王都に帰還。

馬車は実際お尻が痛いけど、3歳からもっと険しい道を馬車に乗り続けていたボクがこの程度で不自由を感じるはずもなく。

適度な揺れに疲れも相まって、帰りの馬車では寝ちゃったりしながらね。




フルカルド近郊の露店市で買い物を終えた頃には、既に夕日模様になってたから、結局寮にたどり着く頃には既に日が暮れていた。






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