ダンジョン環境は良好にね!
後から後から湧いてくるサバキンを、先生が2枚に下ろし、ボクは消し炭に変えていく。
下ろされた魚と、焼かれた魚の山が築き上げられていった。
とはいえ、大分水温も上がってきてボクの水中放火の方はこれ以上乱発したら水蒸気爆発を起こしそうだ。不安定な水泡が水中を漂い始めている。
水温が変化したことで、サバキンの動きもかなり鈍ってきた。
ならば先日、先生に教えてもらった講義の知識を活用させていただこう。
魔獣はマナで呼吸している。
しかし、このサバキンはモンスター。モンスターは空気かマナのどちらか、もしくは両方で呼吸するのだが、どうやら魚は魚らしくエラ呼吸をしているようだ。
水温が上昇したことで動きが鈍ったということは、最低限、酸素で呼吸はしているということだ。
さらに先生が自分で処理しているサバキンの対応を見ても、魔装技でマナを操っている様子がない。
サバキンはほぼ酸素で呼吸していると見て間違いないだろう。
まず、次元魔法で3層までのダンジョンを満たしている水を範囲に設定する。
ダンジョン構造物内の水は、入り口と、どこかから光が入ってきている穴の部分以外からは循環が行われていないはずだ。
これだけで魔力が1000以上も削られた。
ただ、ボクの魔力回復量はグリエンタールの魔力回復力と、自分の魔力回復力の合計で1分あたり69回復する。1000削られたところで15分もあれば戻るんだけどね。
範囲設定をし終わると、魔法構造を構築する。
「元素魔法構造・化 合」
「三 重 構 造元素魔法術式・水 質 改 変」
ボクの体がどんどん浮いていく。どうやら成功したようだね。
先生も突然の変化に対応が追いつかず慌てている。
ボクに厳しいと自分も大変なんだとわかってくれれば僥倖だと思う。
動かなくなった魚生物を横目に、浮力を使って3層まで一気に駆け上がった。
駆け上がるというのは正しくないかも?……実際には、浮かび上がった。
3層から4層へ抜ける階段の途中で水面が見える。
階段に足をつけると、自分の体がものすごく重く感じた。
重りをはずすが、かなりだるい。
「はぁ」
先生もボクの後に続き上がってくる。開口一言目にため息をついている。
……幸せが逃げちゃうよ?
「お前の規格外も大概だな。いったい何をしたんだ? 突然浮かぶような感覚に襲われたかと思ったら、3層までの水棲モンスターが死んでいったようだったが……。」
「先生、ボクは先生の授業を参考にしてお水に毒を混ぜてあげたんだよ。先生も低位の魔獣ならマナを抜いてあげればいいって言ってたでしょ? それと同じよね?」
実際には、ナトリウムイオンを化合してあげたのだ。エラ呼吸している魚にとって、水の塩分濃度が急激に上昇するというのは猛毒以外の何物でもない。
変わった塩分濃度も、水の流れでそのうち溶けて沈静化するだろう。ボクはとても環境に優しいと自画自賛しておく。
「ああ? 3層までの水すべてにか? 水の中で炎を吹き出したり、かと思えば効率的じゃないような方法の極大魔法を構築したり、お前はなんだ? 馬鹿なのか?」
「むぅ! 毒って言ったって塩なんだからね!? 海まで流れれば変わらないんだからとっても環境的じゃない!?」
「はぁ? モンスターに塩食わせたら死ぬのか? そんなもん聞いたこともねぇぞ」
「先生も突然体が浮いて慌ててたじゃない。そういうことよ?」
「……意味がわからん。わーった。お前の頭が異常なことはなんかよくわかったわ」
「異常って……。先生! ボクは生徒なんだからね。ムチばっかじゃなくてちゃんとアメもないとダメだと思うな!」
「ああん? 魔装技の講習っていうアメが役に立ってよかったなぁ? レティーシア」
「むぅ!」
頬を膨らませて抗議してみる。
「はぁ。にしたってなんで塩でモンスターが死ぬんだよ……くっそ、意味がわかんねぇ。冒険者じゃなくて研究者になったほうが将来のためなんじゃねーか?」
フラ先生が階段の上からモンスターが次々浮かんでくる水面を見てぼやいている。
ボクはこの世界に科学を興す気なんてさらさらないので、研究者は遠慮したいな。
ボクは広い世界が見てみたい。
世界は変わろうとも、前世からその願いはずっと変わらない。
討伐クエストは、討伐したモンスターの体内にある魔水晶か、個体の識別できる部位或いは丸ごと、もしくはギルドが貸与している“討伐魔獣・モンスター登録管理魔法術式”の入った魔水晶に登録することで管理される。
魔水晶っていうのは全ての魔物やモンスターから摘出されるわけでもないわけだから、基本的にはモンスター管理魔法術式の入った魔水晶にて数を数えていくのが冒険者のベターな方法なんだけど、魔水晶ってことは魔法が使えないと扱えないからね。
魔法士のいないパーティなんかは素材を証拠品として提出したり、魔水晶を起動するための魔導具を貸与してもらったりして対応するわけなんだけど、魔水晶や魔導具の貸与も無料じゃないわけで……。それなりの数を登録しなければ元も取れないし、そこはパーティ毎の活動量によって相談となるわけ。
……いかに魔法士のいるいないが冒険者にとって活動の幅を制限してしまうのかなんて、容易に想像がついちゃうよね。
モンスター討伐数登録用の魔水晶に魔力を流すと、ステータス管理術式のように画面が表示され、モンスターの死体に魔力を流せば自動で討伐数が登録されていく。
できることなら、どんな小さな魔水晶の欠片だって売値でも最低銅貨数十枚から、銀貨数枚にはなるんだから、本当はモンスターから魔水晶を取り出して売りたいんだけどね。
でも、今回は時間もないし数も多い。すべてのモンスターに魔水晶が生成されているわけでもないため、探すだけでも1日以上かかってしまう。
ボクとしてはそれでも全部やりたいんだよ?
でも魔法学園に特待生として通っている手前、先生に
学校サボってでもいいから全部調べよ!
なんて言えるわけもなく……。
モンスター登録魔法の範囲を、ボクが3層すべてに拡張して一気に登録して討伐数を記録した。
その討伐数。なんと694匹。
なんて数が放置されてたんだよ。
もったいない……。
とは言え討伐クエストだけでもかなり報酬がでそうなので、魔水晶は諦めるしかないよね……。
ダンジョンというのはモンスターが自然発生するように、一定時間経つと死んでしまったモンスターがマナに分解されて、逆にダンジョンに吸収されてしまうらしい。後でまた来て回収というわけにもいかないんだよね。
うぅ……後ろ髪を引かれるようで、なかなか次の層へ進めないよぅ……
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