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水の中ってすごい幻想的なんだよ?

フラ先生の後に続き運河を渡る。

空気を纏っているため沈まないので、運河の上を泳ぎとはまるで言えない様な手探りでダンジョンの塔まで必死にたどり着いた。

さらにそこからは、入り口が運河の底にあるのでダンジョンの塔を伝って水の中へと潜らなくちゃいけないっていうね。


水の中に入ると辺りの騒音が一切かき消され、しんとした静寂に包まれる。

水面が波打つ音だけが聞こえ、揺らぐ太陽が水底に行くに連れて消えていく。




水底にダンジョンの入り口が見えてきた。先生が入り口で待っていてくれている。

水中で声が聞こえないので、身振り手振りで意思疎通を図らないといけないんだよね。


『こっちに来い』


って言っているのかな? 手招きされたので近づいてみると、次元魔法構造の空間収納から取り出した鉄の塊を体に括りつけられた。


……なんの訓練でしょうか?

それとも新手のいじめですか?


そう思いながらジト目で見ていると、気にする様子もなく先生はダンジョンへと入っていった。


……あれ? 重りをこんなにつけられたのに、大して不自由を感じない。

なるほど、浮力を相殺するための重りらしい。


次元魔法構造の空間収納は、アレクが使ってるのを見た時に登録はしておいたんだよね。

ただ、何せ収納中は収納量によって魔力が消費されてしまう。ボクはグリエンタールスキルのお陰で魔力回復量が異常に多いから、ある程度収納していたとしても魔力が消費されることはないけど、魔力回復量は魔法士の生命線でもあるのだ。わざわざ減らしてしまうのは憚られる。


そういったことを考えると、ボクが水中で自由に動けないだろうことを事前に想定して、魔力を消費して重りまで用意してくれていた先生はさすがですね。


変な目で見てごめんなさい。




ダンジョンに入ると、塔の内面は青一色だった。

どこかから漏れてくる光が水中で揺らめき、幻想的の一言。

ダンジョンの壁も、建造物のようなまっ平らなコンクリのような物ではなく、岩と岩を重ねたピラミッドのような作りをしている。


水中なんか見たこともないボクにとっては見たことのない世界。

ここも、ボクにとっては異世界だ。

色んな異世界を廻ってみたい。そう思う程度には非日常の世界。

そんな世界に魅せられていると、最初のお出迎えが訪れた。


サバキンという魚型のモンスターが3匹、猛スピードで突進してくる。


フラ先生も、収納魔法からかなり薄手の大剣を取り出した。

ボクも先日登録した光騎槍(ルクスランス)から、熱構造を取り除き発現させる。


一番前で突っ込んでくるサバキンが、三叉の槍を構えながらフラ先生へと突っ込んでいく。

先生は受け止める素振りも見せず、槍へ向かって大剣を上段に振りかぶりそのまま振り下ろした。


そのまま真っ二つに下ろされた槍と魚が、フラ先生の左右をひらひらと泳いで沈んだ。


それを見た後続の2匹も魚なだけにぎょっとして……


ごほん。


スピードを緩める。


1匹はフラ先生の牽制に、もう1匹は自由に動けていなさそうなボクを餌とみたようで、ボクのほうへ突っ込んできた。


フラ先生はそれを咎める素振りも見せない。

まぁボクの訓練目的なのだから当たり前といえば当たり前なんだけど。


動きづらい水の中、槍を構えて応戦してみる。

サバキンと交差する瞬間に槍を突き出す。


が……


「いったぁ……」


肩に血が滲んだ。


水中で槍も思うように動かないのに、相手は自由に動いてくるんだよ。

そりゃ、相手のホームなわけだもんね。ボクが突き出す槍の速度なんて簡単に見切られ、サバキンが槍をずらして突っ込んできた。

そのまま交差した槍と槍がボクの肩にだけ突き刺さる。


槍術も持たないボクの槍は水の圧力に負け、大して水も切らない。

肩を抉られ、また制服が1枚だめになってしまった。


まだ入学して1ヶ月くらいしか経ってないのに何枚目よ……。

ほんと、泣けてくる。


この制服高いんだからな!!!


サバキンは魚大の大きさなので、槍はさらに小さい。そこまで致命傷でもないが怒りがこみ上げてくる。先生は丁度、牽制していたサバキンを3枚に下ろしたところだった。


薄く綺麗に捌かれた切り身が海水を泳いでいて……おいしそうだ。


多重自己強化のせいで、いくら食べてもお腹がいっぱいにならないボクに、魚の切り身はお腹に訴えるものがあるね……。




そうだ!ボクもこのお魚を調理すればいいんじゃないだろうか?

どうせ扱えもしない槍を捨てると、サバキンは獲物が抵抗を諦めたのかと、にやっと笑ってきた。


気持ち悪っ!


魔法術式を組み上げる。


三重火炎魔法術式(トリプルクリエイト)水 中 放 火(アセチレンブラスト)!!」


手のひらの少し先に魔法の発生点を設定し、そこから水中に火炎放射を解き放つ。

水中の炎は、水蒸気をボコボコと吐き出しながら理解の及ばないサバキンを巻き込んだ。

一瞬で消えた炎の後には黒い炭と化したサバキンが残る。


げ。あれじゃおいしく食べられない……。


フラ先生もぽかんとしている。

が、そんな場合でもなさそうだ。


サバキン型のモンスターが今の戦闘でわらわらと奥から湧いてきたのだ。


……


目を疑う。


その数、100は超えている気がする。


いやね、嫌な予感はしてたんだよね。

入り口に入るのに魔法が必要ってことは、魔法士が必須。しかも長時間潜っていられるわけじゃない。


ってことは、このダンジョンにくる冒険者はかなり限られるし、水中であるこの階層は相手に先手を取られるし、早く抜けたいよね。ボクが現状そうであるように。


多分、間違いないと思うけど、基本水の中にある1~3層は、戦闘をせず抜けていくのが正解なのだ。


しかし戦闘を始めたのはフラ先生。


つまりどういうことかというと。


この数を最初から相手にするつもりでここにきたってことだ。

心の中で、これでもかというくらい呪いの言葉を吐き捨てながら、サバキンの群れへ水中放火をぶち込んでやった。




摂氏3000度の炎が水中で渦を巻く。




先生は自分で避けてね? 燃えてもボクは知りません!!






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