ダンジョン環境がボクに優しくありません!
さて……
人ってこうも理解の範疇を超えると絶句するものなのかな?
と、とりあえず、ボクはフラ先生に同行してもらい初めてのダンジョンに着きました。
着いたはず……なんだけど……。
ボクのダンジョンのイメージは、地下に続く洞窟であったりだとか、地上にタワー状に建てられた建造物のようなものだ。
うん、確かに間違ってはいない。間違ってはいないんだけどね……。
グルーネという国は、領土の7割が陸地で、残りの3割は海。
陸地の形は、扇形……と言うほど綺麗な形ではないけど、前世知識で言えば、北海道を北側からぎゅっと押さえつけて、横に広げたような形をしている。北側が広く、南側に行くにつれ狭まる。
南側はボクの出身地であるフルスト侯爵領があり、港街がある通り、海に面している。領土の半分より北側は陸地。王都ヴェーレはほぼ国土の中心にあり、王都の北西には険しい山脈が北から南西方面へと縦断していて、その先、領土の北西は未開拓地が広がっている。
今回ボクたちが訪れたダンジョンは、その山脈に沿って、南西側の海に流れる運河のど真ん中にあった。
そう、ど真ん中に。
「ねぇ先生。あのタワーみたいなのがダンジョンだよね?」
「ああ? そうだぞ?」
「運河のど真ん中に建ってるね」
「建ってるな」
「入り口水中だね」
「水中だな」
「……水中だな、じゃないよぉ!」
「水中保護の魔法術式は辞書に載ってるだろ」
「載ってるね! 載ってるよ……でもボク大して泳いだことなんてないんだよぉ!」
「大丈夫だ。水中保護魔法中は泳ぐと言うより浮かんでる感じだしな」
「ごめんね、先生。ボクが言い方を間違えました。ボク泳げません」
泳ぐなんてこと今まで一度も必要がなかったのだから、まともに泳いだことなんて一度も無い。そりゃ領地の海くらいにはちょっと旅行っぽく遊びにくらい行ってるけど、まともに足のつかない場所で泳ぐなんてことしないしね……。
水の中を移動するなんて、考えただけでも怖いのだけど……。
「どうせいつかは水の中に入らなくちゃいけない時がくるんだ。それが今ってだけだぞ。じゃ、行くか」
「水の中に入らなくちゃいけない時なんてそうそう来ないから!」
「今来てるよな」
「そ、そうだけどぉ……」
フラ先生は、そんなボクにお構い無しで水中保護の魔法をかけてくれる。
「切れたら自分で掛け直せよ」
「ま、まって先生、自分で掛けるから! 自分で!」
水中で水中保護魔法が切れるとか怖すぎるよ!
「水の中なのは3層までだ。大したことじゃないだろ?」
大したことじゃなければここまで絶望してないよっ!
水棲ダンジョンって水系モンスターの棲家的なダンジョンなのかと思ってたら、ほんとにダンジョンが水の中に棲んでました! そんな馬鹿な!
急いで自分で水中保護魔法術式を辞書から呼び出し、登録する。
水中保護魔法は、自分の体の回りに薄い空気の膜を作って水の浸入を防いでくれる。
圧縮された空気なので体積よりは呼吸は続くが、とはいえ限界があり精々2時間程度。
さらに、水中は10m潜るごとに1気圧上昇する。体にかかる圧力が、10mごとに倍になるのだ。
圧力が上がるということは、空気の消費量は増える。
今回は入り口が地下3層に相当するので高さは大体15~20m前後になる。
最大2気圧が加算されるので、呼吸が続くのは精々30分程度だと見積もっておいたほうがよいだろう。
つまり、30分で3層まで上らなくちゃいけない。
え……? 無理じゃない?
フラ先生はとっとと運河を渡り始めている。
……考えてる余裕もない。ボクも急いで後に続いた。
最悪、水中で保護魔法をかけ直すの……?
ってことは、一旦水の中に放り出されるってことだよね?
なんというか……フラ先生ボクに対してスパルタ過ぎません?
ボクってどっちかっていうと、か弱い系の女子なんですけど……。
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