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どうにかならないの!?

「まず星竜の活動を完全に停止させるにはコアを破壊する必要がある」

「ええ。……それでその『コア』というのはどこにあるのか、分かるのかしら?」


「ああ。急所だ」

「急所……?」


『急所』と言いながら、ジュードさんが親指で自分の左胸をトントン、と叩いて見せた。

急所と言われるとボクたち人類としては色んな部位を思い浮かべちゃうけど、そういえば吸血鬼の人たちは心臓がやられない限り、四肢が捥げようが頭が吹き飛ぼうが死ぬことはない。吸血鬼からしてみて“急所”と呼べるのは心臓だけ。


まぁ冒険者ライセンス上級のボクから言わせてもらうと、実のところ吸血鬼の急所は心臓ではないんだけどね。本当の吸血鬼の急所は、その身体を巡る血。

その血を操る為の機関が吸血鬼にとっての心臓であるがゆえに、心臓が急所だと誤解してしまいがちなんだけど。多分わざわざジュードさんが自分の急所なんてのを示して見せているあたり、ジュードさんは心臓が無くても血を巡らせる術を持つ吸血鬼なんだろうと思う。


こういう相手を唯一倒す手段。

それがジュードさんの弟であるジュニさんが全身黒こげで瀕死になっていた結果そのものだった。


まぁ今は敵対してるわけじゃないからいいんだけどね。


ジュードさんに心臓を指されて空を見上げるけど、そもそも竜の心臓ってどこなんだろ? って話以前に、物質的な大きさが規格外すぎて、いくら削れてきてはいるんじゃないかとはいえ、まともなダメージと言うダメージが通っていない中、そんな場所にあるコアを破壊する方法なんて思いつくはずもない。

まぁそう簡単に思いついて実行できるのであれば、こんなに焦る必要なんかなくて、こんなことになる前に既に事は終わっているわけではあるんだからこそ問題なんだろうけど。


ジュードさんがここまで自信をもって答えるってことは、それなりの根拠があるってことになる。それなのに、開戦当初より吸血鬼軍の攻撃はかなり広範囲に広がっていて、とてもじゃないけどその急所とやらを狙っているようには見えないのは、相手の速度と物理的な大きさによるものなのかな?


「あれ? そもそも、その心臓ってどれくらいの大きさなの?」

「俺達の心臓の大きさと然程も変わりのない程度のはずだ」


「………………おおう……」


ボクが思わず質問してしまった言葉にそう返されて、無意識に自分の胸元と、あの島が空で暴れまわっているような竜の巨体を見比べてしまった。


へ~……あ、うん。なるほど。

そりゃ無理だわ。


「それが難しいのは承知の上なのよね。それで? 完全に停止させるのではない方法があって、そちらの方が可能性としてはありえる……と言ったところなのかしら?」

「………………」


シルの言葉に、ジュードさんの顔が曇る。

正解ではあるんだろうけど、なんか嫌そうだ。


「……ああ。アル姉がいない今、それ以外に方法は無い。……あそこで飛んでいる状態の星竜は『完全体』ではない。……本来の星竜とは、この星を形作った神竜族の化身であり、その体格はロイテ族や我らと比べれば、多少は大きかろうが、一般的な竜族と然程変わらん程度でしかない」

「つまり、その『完全体』とやらになってしまえば心臓の位置も判り易いってことね」


「そう簡単にいくのなら……な」

「……なるほど、だから今、島そのものが暴れまわる宝探しの様な状態でも、その大きさの心臓を探せるのなら探してしまった方が遥かに楽ってことね……」


ジュードさんの険しかった顔が、シルがどんどん話を理解していくにつれ真剣になるのを眺めつつも、突然、途中の説明をすっ飛ばしてシルが一人で納得しはじめ、考え込んでいく。


何が『なるほど』なんだろう。

って思ってるのはボクだけじゃないのが、周りで2人の話を聞いていた人たちの頭の上にもハテナマークが浮かんでいるおかげで、皆と目が合った。まぁティオナさんに至ってはもう慣れているのか、考えるだけ無駄よって視線が返ってきたんだけど。


まぁね。あくまでジュードさんとシル、2人の会談であって、周りにいるボクたちはただ単に護衛しながら聞いているだけでしかないわけで。折角時間の無い現状の中、シルの理解がどんどん進んでいくのであれば、歓迎するべきであって、わざわざ理解できなかった人たちに説明するため会話を止めちゃうのは好ましくないだろうしね。


『ねね。なんで動いてて敵対的に攻撃してくるような、質量の塊みたいなドラゴンから宝探しするより、一般的な大きさに縮んだ方が難しいのかな?』


そこで聞ける人がいるって素晴らしいよね。


『一般的に、の話にはなってしまいますれば。……星竜とは、その命として星に眠っている間、大地に根付いて力を蓄え、その蓄えた力を生命として星に循環する役割を持っております。つまり、今回の内容で考えられるとするのであれば、あの空に飛んでいる大質量の肉体として機能している大地は、星竜の精神生命体が根付いたまま覚醒した状態であると予測がつきますれば』

『………………うん?』


なるほど。わからん。


『詳細にすべてが正解というわけではありませんでしょうが、イメージとして砕いた説明をいたしますと、つまりは現状、あの島に星竜が乗り移って操作をしている状態であるとします』

『あ~……うん? なるほどね?』


いくら取り繕ったところで、ボクの精神状態はルージュに把握されちゃうんだから意味ないんだけど。


『質量とは、エネルギー……つまり力です。現状、既に手の打ちようがない質量のエネルギーが、これからもし我々の知る一般的な竜のサイズにまで圧縮された場合、現状既に通っていない攻撃がそんな高密度な物質に通るとは思えません故、我々は傷をつける手段すらをも失うことになりかねません。そして、星竜が現状、あのサイズを扱えている今……』

『あ~……実際そうなる可能性が高くて、もしそんな凄い凝縮されたエネルギー体になっちゃったら、心臓の位置がわかっても手の出しようがないってこと?』


『左様でございますれば』


なるほど。


詰んでるじゃん。





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