表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
512/515

これからどうするんだろ・・・?

「そのリリーナって子には、会ったことがあるのよね?」

「うん。髪の毛が長くて、髪の色が白と黒で縦に分かれてるから、見かけたら割と判り易いと思う。自分よりもおっきな死神の鎌みたいな武器も持ってるしね」


「そのジュードって人とは会えるかしら? 居場所はわかるわよね?」

「あ~………………うん。主戦場とはちょっと離れてるから、多分今なら行けるかも?」


そう言いながらマップスキルで探した場所へ転移眼を飛ばすと、目を瞑り何かに集中しているジュードさんの姿が映しだされた。

ジュードさんが地面に向けて両手を伸ばした先にあるのは、アルメリアさんと会った時に画面に映っていた黒く焦げた吸血鬼と思しき物体。あの時一緒に映っていた女性は、今は一緒にはいないらしい。

ジュードさんの周辺に泥人形がいないのは、ジュードさんがいる辺り一帯が吸血鬼による泥人形の殲滅速度が上回っているからだろう。ジュードさんが伸ばす手の先以外にも、その周辺には動かなくなった吸血鬼が横たわって並べられているみたいだった。


「……あ、あの~」


転移してすぐ、次元牢獄で自分を囲ってから声を出す。


「……なんだ?」


特に敵対行動を取られることもなく、返事が返ってくる。


「アルメリアさんと会いに行く前に、ボクの契約精霊が交渉しにきてたと思うんですけど……ボク達側の指揮官と会ってもらって、吸血鬼の人達と連携してもらうことって……できますか?」

「………………」


長い沈黙が続き、ただ黙って返事を待つ。

場所と状況がこんなことになっているだけに、それがものの数分だったとしても、ものすごい長い時間に感じてしまうものの、状況が状況なだけに急かすような空気でも無ければ、情報量的にもボク達には何が何だかわかってもいないわけで、待つ以外の選択肢はとりようも無いんだけどね……。


ジュードさんが集中している魔法は回復魔法だろうか。驚いたことに黒焦げていて死体にしか見えない吸血鬼の形をした物体は、まだ生きている。吸血鬼は心臓を貫かない限り、相当な身体的損害が与えられようが生きていられる生命力を持った種族だとは言え、全身焼け爛れているのは吸血鬼にとっても相当な身体的損害としておかしくないレベルなはずなんだけど、ジュードさんが大切にしている人なあたり、この人もアルメリアさんを祖とした吸血鬼の始祖一族に近い人なら、その生命力も頷けるのかもしれない。


回復魔法に一区切り経ったのか、静かに返事をすると同時に、ちらっと視線が動いた。


()()もお前らが制御している戦力か?」


眩く光りながら空で動き回る先に、視線の先を追わずとも予想がつく。


「うん」

「高度な身体組成の回復魔法が使える奴はいないか?」


「回復魔法……? う~ん。聞いたことはないけど、その人に会って聞いてみればいるかもしれないよ?」

「……ちっ。お前等全員吸血鬼にしちまった方が早ぇんだけどな」


そう言われても、回復魔法って魔法文化が進んでるって言われてるグルーネ国ですら、死にかけてる人を万全の状態に蘇生できるような、奇跡みたいな魔法が使える人なんて聞いたこともないんだよ。

まぁ戦闘で欠損して原型をとどめないほどぶっ飛ばない限り、四肢が切断されたくらいなら治せるとは言え、それだって目の前で起きた瞬間であればの話。

例え綺麗に切断されたんだとしても、人体から離れたその瞬間から身体組織はどんどん死んで行ってしまうわけで、そんな壊死したパーツを後々くっつけようとしても当然無理があるってもの。

目の前に広がる光景は、正直それに近い損傷なんだよね。


……あ、そういえば昔、グルーネには次元魔法による回復魔法を使える人が1人だけいるって話を聞いたことがあったっけ。次元魔法による回復魔法って、予想されるのは“回復魔法”じゃなくて“時間復元魔法”じゃないかなって思うんだけど……その人なら出来るのかもしれないし、もしそうだとしてもボクはその人を知らないんだから、どっちにしろシルに聞いてもらった方が早いんだよ。


「違うんだよ。アテが本当にあるかもしれないんだよ。……それに、今()()と敵対して、お互い生き残れるの?」

「………………ちっ。アル姉が死んじまった今、お前を捕まえたところでどう使うかもわからねぇ。想定よりもお前等の国の戦力は使えそうだな。……いいだろう。案内しろ」


あ~……案内かぁ……。ここからシルの居るところまで結構な距離もあるし、何より黒い泥人形の群れが障害すぎて、地上を走ってくのは無理なんだよねぇ。

となれば、あの方法かなぁ。


「……って、え!? アルメリアさん、亡くなっちゃったの?!」


だって、さっきまで元気……とまではいかずとも、普通にしゃべってたんですけど!?


「こっちでも色々あんだよ。それより行くのか行かないのか。早くしろ」

「あ……うん。お、おっけぃ。じゃ、着いてきて……ね?」


あれ? ジュードさんの反応を見ても、ボクを探していたのはアルメリアさんで、色んな情報をジュードさん達には共有されていないまま亡くなっちゃってる気がするんだけど……ええ? どうしよ。これって大丈夫なのかな?

それに、こんな気を抜こうが抜くまいが、次元面の防御なしにこの人が後ろから着いてくるだとか。怖い以外の何物でも無いんだけど……。


まぁ、あちらにもメリットがあると踏んだから着いてきてくれるわけだし、信用しなくちゃいけないのはわかってるんだけどね?なにか急に思い立って攻撃なんかされた日には、一瞬で死んじゃう自信があるわけなのよ。


「ああ、この空の板、やっぱりお前の仕業か」


もちろん。

地上を走れないのであれば、空を走ればいいってわけ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ