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何が起こってるの?!

「ジュードも、行って協力してあげて頂戴」

「アル姉はどうするんだよ」


「もう少しでリリーナへの力の譲渡が終わるから……。それが終われば海に小石を落とすくらいの波紋は広げられるわ」

「それが終わるとアル姉はどうなるんだ?」


「あら。親が子を残して逝くのは、生命として当然の摂理じゃない?」

「……」


「この世界はあの神族共が無理を通してこないあたり、多分一番最後でしょうから……どこかに()が残っている事を祈るほかないのよ」

「どうしてここにきて突然、こんなに未来が進んだんだ?」


「……わからないわ。神ども(あいつら)が何かしたのかもしれないし……」

「しれないし?」


「多分ですけれど、彼女(あの子)が間違えたんじゃないかしらね」

「?」


「……なんでもないわ。ごめんなさいね、最後の最期に何の力にもなれなくて」

「最後だなんて言うな。とにかく俺も戻る。レンとリリーナにも何か伝えておくか?」


「……何もないわ。無事で帰って来てくれればいいのよ」

「……ああ。当然だ」


そう言ってジュードが支えていたアルメリアの身体をゆっくりと床へ寝かせる。

目を瞑っている顔が、安らかな眠り顔に見えた。


「行ってくる」


いってらっしゃい






「 盛れ聖杯の(しるし) 啼け強圧せし願いの(みち)よ 我が願うは絶超の封装 」


うわ、びっくりした……。

戦場へ戻ってきた瞬間に抱いた感想はこれに尽きた。

だって身体が震えるんだよ、ほんと。ヴィンフリーデさんのこれ。

身体が震えるっていうよりも、大気そのものが震えてるって言う方が正しいのかな。周りを見渡せば皆が皆、この異常な空気に当てられてるのがわかる。


まるで精神や記憶みたいなもの、そのものが拒否反応を起こしてるかの如く……むしろ命のない無機物すらも恐怖に怯えるかの如く、震えるの。空気が。大地が。命が。そして空が。


解放せし創世の秘装(ゲネシス・ハート)





「おいっ!!! レティーシア!!! ここから出せ早く!!!!」

「わっ! ごめん!!」


突然目の間に、()()()()精霊武装をしたフラ先生が必死の形相で現れ、大声が耳に響いた。


ボクがいた僅か数分程前でしかなかったはずの戦場は、辺り一帯の景色がまるで変ってしまっており、空を駆けている吸血鬼と人間の数が信じられないくらい増えている。

空は赤く染まり、焼けた大地は大規模な魔法でそこら中が不自然に隆起し、海の水が流れ込んでいるのか大きな水たまりが辺り一面に形成されていた。


まるでタイムワープでもしてしまったかのような光景。ジュードさんに連れられてアルメリアさんと会った、あの時点のどこかで時間軸にズレが起きたのか……? それともあの場所の時間の流れが外とは違うのか……? それにしてはジュードさんも驚いてたわけだし、そう言う訳ではないのかもしれないけど。


そんな中、ポツンと取り残されたように宙に浮いている島。

そんなダンジョンの入り口であった場所へ戻ると、炎の塊のようなものが突進してきたのだ。まぁそれがフラ先生だったのは言うまでもないんだけど、前に見た精霊武装とは違い炎が弱弱しい。



「おい! 今までどこ行ってたんだ!? 外はかなり不味い事になってんぞ!」

「ごめんなさい! 吸血鬼の王様? に会ってきたんだけど、ボクとしては体感で数分しか経ってないんだよ!? それなのに戻ってきたら突然こんなことに……」


「あぁ!? お前がいなくなってもう余裕で数時間は経ってんぞ!?」

「えぇ!?」


アルメリアさんと短い会話をした後、アルメリアさんが見せてくれたこの戦場の風景は、明らかにおかしな光景になっていた。

さっきまで戦場の外でタイミングを見ながら情報を集めようとしていた、シルとその姫騎士隊が戦場のど真ん中に引きずり込まれてるわ、今みたいに……ヴィンフリーデさんがもの凄いオーラを放ってる武装を召喚するにまで至っている。


また一段と眩く光るヴィンフリーデさんは、前に見た(つるぎ)が既にその右手に握られており、今の詠唱による召喚だろうか、まるで大天使かの如く6枚の大きな翼を象ったような、黄色く半透明な装甲を纏っている。その姿は直視することができないくらい眩しく輝き、何より……空に浮いていた。


ボクが作った足場はまだ健在で、空に立っている人は吸血鬼の人達も含めてかなりの数が見えるんだけど、足場はちゃんと視認できるように作られているのに、ヴィンフリーデさんの足元にはそれがないんだよ。

ティオナさんも空を主戦場と出来るような特殊なスキルなのか、はたまた特殊魔法適正なのかを持っているにせよ、ティオナさんのそれは推進力によるものであって、宙にただ浮けるなんて類のものじゃないわけで。つまり、単純に空に浮くことができる生物なんて、未だ存在していなかったはずなのに。


まぁ翼をもつ生物や、ティオナさんみたいに推進力を軸にして空に舞い上がる方法だとしても、その推進力を調整したりだとかすれば疑似的に『浮く』ことはできるだろうけど、やっぱりそれでも惑星が引力を持つ限り重力と言う物に引っ張られることになるわけだから、それに反するだけのエネルギーを消費する必要があるわけで。


単純に宙に浮くっていうのは、重力を克服するという事に他ならないわけだ。

どういう原理なのか、まるで意味が分からないけど。




「レティーシア! 戻ったか。俺達は随分休ませてもらったからいい。お嬢には?」


先生の後ろから、ハウトさんを含め、この場所に軟禁されてしまっていたプトレマイオスの人達が見える。皆、戦闘準備は万端の様で、ボクがここを出たときの様な魔力不足を感じなくなるまでに快復しているみたい。


「ううん、まだ!」


「じゃあ直ぐそっちに行け。吸血鬼の首魁とは会えたんだよな?」

「了解! 会えたには会えたんだけど……」


「いや、いい。ここであまり悠長にしてられる時間はない。ヴィンフリーデが2つ目の“ノイト・リノ”を召喚してるってことは、あっちは相当不味い状況だ。俺達もすぐに発ち戦闘に参加する」


結局、大した話もできずにいたことをハウトさんに報告させてはもらえないまま、先生とハウトさんの意識が外へと向いていく。


「あともう少しで……押しきれそうなのよ。貴女も、貴女の仕事を頑張って」


セレネさんがそういって、ぽんと、ボクの肩に手を乗せた。


「私は一旦、ここから離れたら姫様と白隊に戻ると、姫様に伝えて欲しい。ここまで大規模な戦場でクランの連携に外部の人間がいても、足を引っ張るだけだからな」

「了解!」


ボクの声を聞くと、そのままフィリシアさんは皆とは違う方向へと走り出した。


ウルさんやメルさんと言った他の皆が、先生とハウトさんを筆頭に、ボクから見て正面側へと飛ぶように走り去っていく際に手を振ったりしてくれるのを見て、ボクも手を小さく振り返す。


見送りながらシルのいる戦場を探し……

転移をすると同時に、皆を閉じ込めてしまっていた次元牢獄を解除する。


残っていたダンジョンの入り口部分や砂や岩が自由落下を始め、そこからいくつもの影が飛び立って行く。




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