ただいま朝の5時前です。
「お、来たか。ずいぶん早いな」
次の特殊魔法課授業の日。午前中からということと、前回が朝の6時に出発してクエストを受けに行ったりしたこともあり、少し早めにフラ先生の研究室に行くと、どうやら先生はこんな時間でももういるらしい。とりあえず入ってみた。
「先生、なんかいい匂いがするね?」
「ああ。 さっきそこで朝飯作ってたからな。お前も食うか?」
「食べる!」
「ん? 朝飯食ってきてないのか?」
「食べたよ?」
「はぁ? 成長期かよ。それ以上無駄に脂肪つけてもいいことねぇぞ?」
「失礼ね! ボクはそんなに無駄な脂肪は無い方だと思うな!」
「ああん? これとか結構余計だろ?」
「ふひゃいっ! 先生! それセクハラだよセクハラ!」
胸を掴まれた。フラ先生の手って結構大きいのね。
「なんだ、お前貴族でもないくせにちゃんとブラ着けてんだな。一昨日傷痕治してる時にアルトがちらちら見てたけど、お前着やせするタイプか?」
「えええええ!? アルト様に見られてたの!? なんで!? なんで先生隠してくれなかったの!?」
「いや……それどころじゃなかっただろ。あたしは治癒系どころか他人に魔法をかけられるような適正持ちでもないしなぁ。アルトの方が確実なんだから。」
「ええ~……でも~サイアクだよぉ~……はぁ」
どさっと身を預ける形で、椅子に座り込む。
「あれ? じゃあ先生はブラとかつけないの?」
「あ? ブラじゃ揺れるだろ。邪魔なんだよ。あたしは前衛特化だからなぁ。こんな感じに締め付けちまうな」
そういうと先生が服をたくし上げて見せてくれる。なるほど、さらしか。
「へ~……」
机にべた~っと頬を預けていると、フラ先生がさっきまで作っていたという朝食を持ってきてくれた。
パンにコーヒーと野菜。後……鶏肉?
「まだ疲れが残ってるか?」
「ん~……一昨日、森から帰ってきてからなんか体がだるいんですよね。お腹はちっともいっぱいにならないし」
「ああ、多分そりゃ多重自己強化の後遺症だな。途中で結構上乗せしてただろ?」
「あ~確かに。少しでも基礎あげないと話にもならなかったから、結構上乗せしたかも?」
「それなら多分それが原因だな。多重自己強化はマナを体内エネルギーに強制的に変換するからな。筋肉量が増えるわけじゃねぇが、筋肉が切れた瞬間に自己治癒で筋肉が繋がる。切れると繋がるを一瞬で繰り返すからなぁ。やりすぎると相当体に負担はかかるぞ」
「うわっちゃぁ……どれくらいで治るんですか?」
「うーん、人にもよるが飯食って寝てりゃぁ早ければ2,3日、遅くても1週間ってとこか。ま、そんだけ無駄な脂肪つけてりゃすぐ治んじゃねぇか?」
「だーかーらぁ、無駄じゃないってば! さすがに減るのはやだなぁ。ちゃんと食べよ。はむ」
「おお食え食え」
もぎゅもぎゅ。
先生こー見えてちゃんと料理とかできるんだね。
「このお肉はなんですか? 鶏肉にしては硬くて淡白な味ですね」
「ああ、そりゃこないだのグレイウルフの肉だよ。たんぱく質の塊だぞ。今のお前にゃもってこいだ」
「へ~、なんか結構硬いし……あんまりおいしくはないですね」
「まぁ家畜とは違って喰うために育てられた肉じゃねぇしな。しかもマナ溜まりから発生した魔獣の肉だ。食えるだけましってもんだろうよ。……ああ、そうだ。あん時のクエストの話、しとかないとな」
「あ、そうでした」
「今日もこの後、クエストでも受けに行く予定だけど行けるか?」
「うわぁ。なんか嫌な予感しかしないよ……まぁ行きますけど。もぐもぐ」
「さすがにあそこまでレベル差のやばいクエストはそうそうねぇから、あれ経験してたらF難度以下のクエストなんて大概なんでもいけるだろ。安心しとけ」
「確かに……。ごちそうさまでした」
「はっや。あたしまだ食ってすらいねぇんだが……まぁいい、まずはこれだ」
そう言うと、フラ先生が片手で朝食を取りながら小袋を取り出した。中の物を順に取り出していく。
「まずクエスト報酬は銀貨10枚。これは全部お前のものだ」
「死に掛けて銀貨10枚かぁ。でも報酬全部で銀貨10枚じゃなかった? 先生たちの分はいいの?」
「もちろん上乗せがあるぞ。金貨5枚だ。クエストは全部お前がやったんだから報酬は全部お前のものだ。あたしはグレイウルフのパーツを解体して売ってるから収入にはなるしな」
「え!?うそ!金貨5枚ってすごくない!?」
「いや、むしろクラウンウルフ種で金貨5枚はすくねぇな。でも元々の調査があの森での調査だったから予算がそこまでないんだとよ」
「ええ!十分だよ!これでシルに少しはお金返せるよ~!」
「まだあるぞ。お前が倒したシュヴァルツ・クラウンウルフの毛皮だ。肉は大した金にはならんが毛皮は高級品だぞ」
「売ったらいくらになるの?」
「ん~、正直そんなに手に入る素材じゃねぇから、売るのはあんまお勧めしねぇけど、そうだなぁ。状態も悪くないし金貨20枚……くらいはいくんじゃねぇか?」
「うっそぉ!? ボクお金持ちじゃない!?」
「ま、子供にゃ過ぎた金額なことは確かだな。そして最後にこれだ」
そう言いながら魔水晶と、透明な水晶細工のようなものがでてきた。魔水晶は見覚えがある。最初に拾ったやつだ。
「18センチ級の魔水晶が1つと、これが今回一番のお宝だな。魔宝珠だ。あのクラウンウルフの体内から出てきた」
綺麗な、水晶で模られたミニチュアの王冠の形をしている。冠の直径が大体5cmくらいの大きさだろうか? ん?魔宝珠ってなんだろ? 初めて聞いた。
「魔宝珠?」
「そ。まぁ魔結晶よりは珍しいが、そんなに見かけないものでもないな。有用性が高い分出回ることも少ないけどな。」
「へ~?」
「魔宝石って聞いたことあるか?」
「あ、シルが欲しがってたやつ! なんか上級冒険者になって? なんか功績だかなんだか?で冒険者証に埋め込まれるって言ってた」
「ああ、そうだな。あれも魔宝珠の一種だぞ。傷や成分の違いで色が変わったり綺麗に光ってるのは魔宝石つって、それだけで価値が高くなるんだ」
「へ~、それじゃあ元々の魔水晶の機能も残ってるの? 魔法が登録できたりとか」
「もちろん使えるぞ。しかも魔結晶とは比べ物にならないくらいティア度が高い。ある程度の大きささえあれば指輪サイズでも十分使える」
「じゃあ、この王冠みたいなのは?」
「こんな感じで魔結晶が形を持ち始めているものを魔宝珠って言うんだ。魔宝石の様に色はついちゃいねぇが、ティア度が高いのは魔宝石でも魔宝珠でも変わらん。」
「でも王冠の形ってすごくない? なんかすごい綺麗」
「だなぁ。装飾品としてはいいかもしれねぇが、あたしとしては尖ってるし中が空洞になってる分壊れやすいから、丸い方がありがてぇな」
「も~、先生だって女の子なんだからね!? ちょっとくらいおしゃれした方がいいんだよ?」
「ああ? 嫌だよ、そんな面倒くせぇし一文にもならねぇ」
「え~楽しいのに~。もったいない。先生、筋肉はつきすぎだけどスタイルいいし、おしゃれしたら映えるのになぁ」
「あーあーはいはい、わかったわかった。とりあえず、これはお前にやるから。好きに使え。もし売らないなら魔宝珠はすぐに血約しちまったほうがいいぞ。盗まれたんじゃ目もあてらねぇからな」
「せっかくだし、使っちゃおうかな!」
売る欲が出てくる前に、すぐに血約をしてしまった。
先生もちょっと欲しそうな顔をしていたんだけど。
ごめんね!
なんか、こう……先生みたいな強い人をがっかりさせていると……嗜虐心が刺激されるね……
うふふ。
よろしければ、ご意見・ご感想お聞かせください。
ご評価・ブクマのワンクリックがとても励みになります。是非よろしくお願いします。
ブックマークのクリックはすぐ↓に!
ご評価いただける場合は、『連載最新話』の↓にスクロールするとアンケートが表示されています
是非よろしくお願いします!




