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なにこの人。格好良すぎでしょ。

「それで? 皆は今どこに?」


さも当たり前かのように、あの状況下で皆が生きていることを疑わないのは信頼の証ってやつなのか、それともボクが大した焦りを見せずに顔を出したことで察したのか。当然のような口調で聞かれたことに、少し安心してしまう。

ただでさえ現場にいるボク達にも何が何なのか全然わからないなかで、当たり前の様に落ち着いて、当たり前の様に信頼してくれている人のいることが、どれだけ心強いか……。

いつも一緒にいて、既にシルに傾倒してる自覚があるボクですら、今もっと、倒れるくらいに傾倒していきそうな感覚を覚えてるんだから、普段シルとそこまで接していないような人がこんなところ見せられたら、恋をしかねないよね。恋を。


この戦争なのかもよくわからないこの状況が終わってから、誰かに話しだけを聞いたら、また大袈裟なって思うのかもしれないけど……だってさ、エリュトスの内陸部へ結構入ってきた、この場所からボク達がさっきまでいた場所を見ると、もう地獄絵図しか見えないんだよ。本当に。


「あ~……うん。ね。……あそこ」


そう言って割と地面と平行目に空中を指を指す。

すると、シルの目が細まった。


その更に向こうにいる特大の竜が大きすぎて距離感が狂うし、爆裂魔法を始めたとした爆炎や竜の吐くブレスが光源となり目がチカチカしてよく見えないし、何より地面というか大地って規模の陸地そのものが大きく削られているせいで地形が大きく変わっちゃっている。

その削られ真っ黒な岩盤をむき出しにしている大穴の途中、大地から見た水平位置に、なぜか削られておらず、肌色を残す砂漠地帯が一部だけポツンと残されて浮いているように見えるのだ。

しかもその周辺にはうじゃうじゃうと人型サイズの吸血鬼が集まっていて、外から見てれば何がどうなってるのか、意味がわからないし、ここから見れば吸血鬼が自分達が空中戦をする為に作った足場に見えなくもない。


「……何? あれ」

「あ~……っとぉ、次元牢獄をね……いつものアレを張ってたら、周りの地面が急にダンジョン毎飛んでっちゃったもんだから、あそこだけ残っちゃった……みたいな?」


起きたことをありのまま話してるだけなんだけど、自分でも何を言ってるのかよくわからないんだよ。

視界のピントを次元牢獄の向こう側に向けると、蠅のように群がる吸血鬼が、竜のブレスを受けて地面に落ちていき、それと同時に竜の羽にもまた、閃光が木霊する。相変わらず一つの島規模程度もあろうかという巨体の竜にダメージが通っているようには見えないし、最前線で戦っている吸血鬼の軍勢にも進軍の陰りが見えるようなこともない。まさしく妖怪大戦争が目の前で繰り広げられていた。


今のところ、ハウトさん達のいる次元牢獄が吸血鬼に敵対行動を取られているってことは無いみたいで、良い足場として都合がいいから周辺に吸血鬼が集まってしまっているみたい。いつ、中にいる先生達に目が向くのか気が気じゃないような状況ではあるから、どうにかはしなきゃいけないんだけど。

“飛天”は重ねて使うと消費する魔力量が反比例的に上がってっちゃうからね。どっかでリセットしなきゃいけない分、空中に足場があるっていうのはありがたいはずなんだよ。それを考えれば吸血鬼としても邪魔どころか竜のブレスも通らないから盾にもできれば、足場にもできるような物を無下にしようはずもなく。あの足場を誰が作り出してるかまでは把握していないうちは、吸血鬼の手が次元牢獄の内部に伸びる可能性は少ないんじゃないかな? ……そう勝手にボクが願いたいだけかもしれないけど。


モンスターパレードの時にも足場を作ったけど、飛天の法則はティオナさん以外、人間であろうが吸血鬼であろうが逃れようがないのあれば、そこまで遠い推理でもないと思う。


「プトレマイオスの状況は?」

「怪我人は無し。あのでっかい竜が出てきたときもボク達は次元牢獄の中で篭城してる最中だったからね……。まさか大地が生き物として動き出すなんて予想もしてなかったけど、運よく何事もなくやりすごせたかな? って感じ。今は皆も、一旦追われたりするストレスから解放されてるから、さっきウルさんが急速回復用の料理も作ってたから……今頃はベガの皆も少しずつ体力を回復させてるんじゃないかな? まぁさすがの先生達でも活動限界超えちゃってるみたいだし、全快ってわけにはいかないと思うけど……」


「そう。フェミリアさん達はどうしたの?」

「ん~……それが、全員反応、消えちゃったんだよね……」


「貴女のスキルでも? ここ周辺一帯は見てみたけどいないってことかしら」

「うん」


「そう……」

「……」


少し沈黙が続く。


「で、一番の疑問だけれど。あのバカでかい竜は何かしら」


シルがしている質問の意識が、ボクから少し外れたのを感じた。

なんとなく、だけど、今までボクと話してたのが、ボクに聞いているというよりは、()()()に向けて聞いたのだろう。それを判断してかルージュが姿を現した。


驚いた姫騎士の人達が一瞬殺気立つけど、ティオナさんとヴィンフリーデさんがすぐに止めに入る。


「あれが本来、我々が探していた古代竜、そのもので間違いはないでしょう。ただし、我々が求めていた古代竜の状態とはかけ離れているようですが……」

「状態?」


「ええ。大前提としてフェミリア殿が竜王国の復興を目的としていたのなら、あの古代竜は星竜であるはずでした。それは我々の神魔大戦時の記憶を以てしても同じ意見ではあるのですが……星竜であるのなら、目覚めて動き出すはずがないのです。そもそも星竜に神聖力が無くなるという事は、この星の生命力そのものが失われている事を意味してしまいますので……正直お応えできる言葉としては、我々も判らない……でしょうか」

「なるほど。でもそれで言うのなら、神聖力はもうないのだから、あれが本当に星竜なのだとしても倒してしまっても構わないのでしょう?」


「……できるのであれば」

「できる? ヴィンフリーデ」


「ご命令とあれば」



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[一言] そのセリフはダメぇ!
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