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この人、顔が怖いんだけど嫌われてるのかなぁ・・・。

「こちらへ」

「え……? へ……?」


屋敷には結構な数の人がまだ残っているのを、グリエンタールのマップスキルで確認してから屋敷に転移する。突然屋敷内に人影が湧き出たらいきなり攻撃でもされかねない。今の状況じゃ、そんな些細な事でも時間をとられるわけにもいかないから、屋敷の外へ転移してちゃんと玄関を開けると、まるで待っていたかのように食堂へ案内された。


「シルヴィア様に言われまして、調理されていない状態の食材を保管してあります。必要な食材を教えてただけますでしょうか?」


調理場の食材保管庫まで、ボクはまだなんにも用事を伝えていないのに案内されると、大量の食材が山盛りになっておかれていた。調理場を含めた屋敷の中が、まるでこれからこの屋敷自体を解体するんじゃないかってくらい綺麗に片付けられて閑散としていたのに、この食材保管庫だけまるで手付かずのまま残されていたのだ。


「えっと、これ、なんですけど……判ります?」

「はい。……ええ。大丈夫そうですね。種類も量も足りるかと思います。……では必要な量を包みますね」


「あ、はい。お願いします」


ウルさんから預かったメモを片手にイサラさんが食材の選別を始めると、それを後ろから別のメイドさん達が覗き込んでそれぞれが別々の食材を纏めて集めていく。何と言うか、感動するレベルのチームワークかもしれない。


って言うか、よく考えたらボクだけじゃ食材の名前がわからないんだから、それを知ってる人が居てくれなきゃ食材を用意するとかそもそもできないわけで……。

さすが王子付きのメイドさんだよね。イサラさんが残っててくれて何よりだったけど……もしかして、この状況って想定されてたとか? さっきイサラさんも、シルに言われて食材を保管してたとかなんとか……いやいや。あんな大陸の一部が空に飛び立つだとか、さすがのシルでも想定してないでしょ……。ま、まぁ? そうでなくてもベガパーティの回復は必須で、ウルさんが現場にいる事はわかってるんだから、あんなとんでもない状況が起こり得ずとも何かしらの状況で食材が必要になる可能性は考慮されていたってことだろうけど……。


ってか、イサラさんってボクが転移出来る事を知らないはずだから、本当に現場から食材を取りに来るのかも不透明だし、もし取りに来たんだとしても、それをどうやって戦争現場最前線から逃げてる人たちに渡すの?  って考えちゃうと思うんだけど……。それでも何の疑いもなく残してくれてたってことになる。


……すごいなシルの信用。




「お持ちしやすい様に纏めておきました」


そう言われてイサラさんにバケットを渡された。


「あ、ありがとうございます……」


…………仕事はえー。

ってゆーか、改めてこの国、優秀な人多くない?

それとも最近ボクが関わってる人が国のトップみたいな大人の人達ばっかりだから、そういう人達が多いだけなのかな。まぁ大人だけじゃなくて普通に魔法学園の生徒だって相当優秀な人達が集まってる学校だと思うし、その通り各分野で既に大人顔負けの突出してるような人たちがいたのも確かだけど、その中でもやっぱり頭一つ飛びぬけてる人って言うのは目立つかもしれない。シルにせよ、ハウトさんにせよ。一回、頭の中でどんな思考が繰り広げてるのか覗いてみたいくらいだよ……。


こんな優秀な人材がたくさんいる国が、こんなバカげた怪獣大戦争で蹂躙されるとか、ほんとやめて欲しいんですけど。


「それじゃ、ありがとうございました」


今更隠してる場合でもないから、イサラさんの目の前でそのまま転移して食材をウルさんに届ける。


「ウルさん、ただいま。これで足りるかな?」

「あ、れてぃーしあちゃん。ありがとね。…………うん。だいじょうぶ! れてぃーしあちゃんも疲れてるだろうから、数分もしたら食事だけでもとりに来て?」


今更だけど、数分で料理が出来上がるって、物理法則無視してませんか?

疑ったところで出来ちゃうあたり、この人もその天才の一人なんだろうけど。


「わかりました。もし食材、足りなくなったらまだ沢山残ってたから、また言ってね」


そう言いながら、ダンジョンの入り口を部屋の様に見立てて作ってある中を見渡していく。

ここに来るまでにもかなりの休憩は取れていたのが功を奏しているのか、フラ先生達もフリージアで追われていた頃よりも大分顔色が良くなっては来ていた。この様子なら、やっと魔力の回復も見込めるだろうか。


「わりぃな。レティーシア。お前にばかり働かせて」

「ほんとだよせんせー。……これが終わったら、なんか美味しいものでも、お腹いっぱい食べたいなー」


ほんと。飛び回ったり警戒したりでまともに食事が喉を通らなかったのもあって、お腹がすごい空いているのを、今更自覚…………ぎゅぅ…………。う、うん。なんかすっごいいい匂いしてきたな……。ここで待ってたら、もう出来るんじゃないかなぁ、あの料理……。あぁ、でも先に先生たちの回復のために食事取って貰わなきゃいけないし、さすがにそれを待ってる時間はないよね……うぅ。


「ああ。終わったら、あたしがとっておきの食材仕入れてきてやるよ」

「お子様にも味の判るやつでお願いしまーす! じゃ、ボクちょっとシルのとこに行ってくるね」


「ああ。頼むな」

「あーい」


って言うか、これ以上ここにいたらお腹と背中がくっつきそうだよ……。





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