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天候操作なんて、出来ても責任とれないからなぁ……。

「ちょっと待って……? 言いたい事、3つあるって言わなかった?」


ハウトさんが方針を決めて、一刻も早くこの砂嵐の中を進む準備を始めようとする中、耳聡い種族であるセレネさんからストップがかかった。流石うさ耳。あのぴくぴく動いてるお耳は伊達じゃないらしい。


その言葉に、行動を開始しようとしていた人たちも一旦足を止めた。


「……」


まぁ……ね。正直、最後の1個は言うべきかどうか迷ってたところもあって、皆が忘れてくれるなぁいっかなぁ……? なんて考えちゃってたとこもあったんだけど、そうもいかないらしい。


「本来、こういう報告って、後に行くほど言い難いことであることが多い。ってことは、最後の3つ目を聞かないわけにはいかない」


セレネさんに核心を突かれて思わず苦い表情が出てしまった。

そしてなんとも都合の悪い事に、そういう機微を見逃してくれるような鈍感な人はこの場に一人としていないのだ。さっきハウトさんに促されて思わず行動に移してしまい、「あっ……」って顔をしていた人達の表情が険しくなってしまった。


「最後の3つ目はその……正直、今の状況がどうにかならない限りはどうにもならないし、折角やることも決まったんだから言うべきかどうかな~って、ちょっと迷ったんだけど……」

「うん」


目の前でボクを直視して(みつめて)離さないセレネさんを筆頭に、休憩から復帰して準備のある人達が手を動かしながら耳だけをこちらに傾けている。

兎獣人さんの習性か何かだろうか。真面目に聞こうとしすぎて距離が近すぎると思うんだけど、こういう動物的なところって可愛いよね。


「ルージュが感知した限り、この先にあるダンジョンの入り口からは神聖力が感じられなかったわけなんだけど、なんでこの先のダンジョンから神聖力を取り出せる期待があったのかって説明は、もうハウトさんがさっきしたよね?」

「うん」


神聖力は、どこの誰なのかはわからないけど、魔族側の何者かによって歴史上から消しさられようとしている。だけど、この先にあるダンジョンには消すことのできない神聖力があったはずのだ。


無くしたいのなら最後まで無くしてしまえばいいのに、消すことのできない神聖力。

それは、この星を廻すのに必要だった力。


……うん。じゃあ、その神聖力すらも無かったとなると……?

実はそこに起こりうる問題って、吸血鬼の対策だけじゃなくて。

それよりも重大な問題があるんだよね……。


これが、シルの頭をパンクさせていた最大の理由だった。




「……ってことは、吸血鬼問題が最低限どうにかなったとしても、その歴史上から神聖力を消した理由だったり、この先のダンジョンから神聖力が消えた原因を突き止めてどうにかしねぇ限り、俺等の未来はねぇってことになるじゃねぇか」

「……に、なっちゃうね……」


色んなことが一度に置きすぎて、ここにいる人達各々にも表情として心が覗く。

そんなこと言われたってどうしたらいいのか困惑するのが当たり前なのは判るんだよ。

でも、じゃあ言うべきか言わざるべきかと言えば、ここにいるメンツを考えれば先に知っておいてもらった方がいいに決まってるわけで。

だってボクが知っている限り、吸血鬼問題をどうにかクリアしたとして、その先まで協力してもらうなら最高峰な人達なわけだし。


「はぁ……。今回ばっかはレティ子ちゃんがいても、起こる奇跡も起きる気がしないんですけど」

「ま、こいつが居たからここまでやってこれたってのはあるけどな」


「それで、姫様はなんと?」


あまり意見を出すことのなかったフィリシアさんから久しぶりに声が上がった。

もちろん、道中他の皆と雑談とか、話はちゃんとしてたんだよ?

ただやっぱりフィリシアさんからしてみれば、ちょっと今ここにいるメンバーから見てちょっと部外者っぽく感じてたのかもしれない。当然他の皆はそうは思っていなかっただろうけど、無駄に気を使っちゃうことってあるよね。


「シルの頭でも正直参っちゃってるみたいなんだよねぇ……。まぁ事の大きさとか、色んな事が重なりすぎてる事とか。当然と言えば当然なんだけど。あのシルがこっちはハウトさんに丸投げする! って言いきったくらいだもん」

「……はっ。なら期待に応えてやろうじゃねぇの。次の世代の奴らにこれだけ有能な人材がそろってんのによ。俺達の世代で人類終わってたまるかっての」


希望なんてあるのかどうかわからない。

でも、ハウトさんがそう言った瞬間から、ボク達の行く手を阻んでいた砂嵐が急激に弱くなっていく。……まるで、行く手を阻んでいたんじゃなくて、護ってくれていたかのように。


「お、タイミングばっちしだね!」


ハウトさんの鼓舞に触発されてそう言うと、ヴィシュトンテイル家の2人がものすごく怪訝そうな顔をボクに向けた。

まるでお前が言うと都合のいいことも悪いことも全部お前のせいに聞こえるからやめろと言わんばかりの表情だったけど、ボクは賢王様の血を引いてるわけじゃないからね。


きっと気のせいに違いない。



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