神聖魔法ってなに?
この世界のことや学園祭中にルージュ達が何をしていたのかのまとめに入ってきているので
ストーリー的に少し進んでいきませんが、数話程度ですのでご承知おきください!
神魔大戦時代を「懐かしい」と呟いていたルージュは、バルハリトとして召喚され戦っていた記憶を持っている。最初にボクと契約した時に言っていた通り、ルージュが完全な状態で召喚できずにいくら弱体化していようとも、その記憶が消されるわけではないのだから、当然当時の記憶を呼び起こせば今とは大きな変化に気付けて当たり前だった違い。その大きな要因の一つが、この世界の元素となり根付くこととなった『魔力』と『神聖力』の存在についてだった。
神族と魔族の戦争は、魔族側の勝利となって幕を閉じている。
ボク達はそんな数百年も前のことなんて知ってるわけが無いんだから、今この時代の常識からしてみると信じられないような常識も、その数百年前の当時であれば当然であったように、神魔戦争前のこの世界では魔素の他に神聖力の素となる素体がこの大気中を覆っていたらしい。
ボク達が才能や努力を以て得る魔法と呼ばれる力では、魔素を用いて使うものを『魔法』と総称する。でも、ボク達が使っている魔法は大きく3つにカテゴライズされていて、元素・次元・神聖と分けられているのは学園の講義で最初に習うような基礎のお話。
だけど、ここで本当は不思議に思わなきゃいけなかったのだ。
例えば元素魔法って言うのは、魔素を用いて元素を操る魔法。
次元魔法って言うのは、魔素を用いて次元を操る魔法。
なら神聖魔法って言うのは、魔素を用いて神聖を操る魔法ってことになる。
……いや、神聖ってなんだよって話じゃない?
簡単に仮説が立てられそうな例としては、神聖魔法は自己強化に寄った魔法になることが多い。人によっては神聖魔法を外部に放出できるような才能を持っていたり、それこそ特殊魔法の延長線上で通常の神聖魔法では見られないような効果を及ぼす魔法もあったりはするけど、それでも元素や次元魔法の様に、この世界にある環境に変化を及ぼす魔法と言うよりは、人体の内部に干渉するような魔法効果であることが多いのだ。
これによって立てられる仮説っていうのはつまり……神聖力は人体の内部に存在していて、魔素の様に大気中には既にほとんど存在していないってこと。
これは神聖魔法としてバフを他人に掛けようとすると、ものすごい効率が落ちることから割と証明できるんじゃないだろうか? まぁこの世界でそれを証明までする必要があるのかどうかと言われれば、それは学者先生のすることであってボクが考えるようなことでは無いんだけど。
それにボクは証明なんかできなくったっていいわけなのよ。
だってルージュ達が知ってたわけだし。
まぁそんな感じで神魔大戦の結果によって大きく失われた神聖力は、神族の衰退と共に減っていき、最後に残ったのが神族の子孫として宿っている遺伝子の中だけ。となってしまったのだ。
イオネちゃんやウルさんみたいに神聖力に適性の高い人って言うのは、もしかしたら先祖が神族に属していたのかもしれないね。
そして時が経つにつれて魔力が世界を覆い、神聖力は失われていったわけなんだけど……。
別に神聖力が大気に満ちていたところで魔力を用いた魔法を阻害しないのであれば、別に神聖力を世界から衰退させる必要って、論理的に考えたら無いわけなんだよね。
もちろん意識的にそういう相手の魔法や神法? なんかを阻害する効果を創り出して使うならまだしも、無意識的に阻害するんなら神魔大戦で魔族が勝利なんて出来るはずもないからね。
まぁ戦勝側が相手側の戦力を奪っちゃおうって考えるのはわかるんだけど、当然そこにはもっと致命的な問題があったわけ。
さっき言ったように、意識的に神聖力で魔力を阻害する効果は作り出せるのだ。
これってとっても厄介で、実際『魔法によって魔法の発動自体を阻害するような魔法』だなんて物は存在しない。……まぁ存在しないっていうか、物理的にって言うのかな? それとも魔法だから魔理的に? 無理なのよ。
相手の魔法構造や魔法術式を妨害するってことは、イメージ的に考えると相手が魔水晶に魔力を流し込んで魔法が成立する間に、魔水晶に登録されている魔法構造や魔法術式に対してハッキングみたいなことをして一瞬で書き換えなきゃいけない様な話になってしまう。
魔力を流し込むことを阻害する程度なら物理的に攻撃をしたり意識を反らさせたりすれば可能かもしれないけど、それはまぁ物理的方法論であって魔法そのものを阻害してるわけじゃないし、そもそもボクが設置盾や次元牢獄を使っていた時に悩んでいた魔力を体外で構成させて魔法の始点を作ること自体が相当難しいって先生が言っていた中で、戦闘中に相手が自分の身に着けているであろう魔水晶に魔力を流した瞬間に、魔力を相手の魔水晶まで魔法に構築しないまま飛ばして魔法をわざわざ書き換えるなんて行為ができるのであれば、そんな馬鹿げたことをする前に魔法を構築して相手にダメージを与えたほうがいいんだもん。
そりゃ存在しないよね。
因みに魔法の結果そのものを阻害するってことなら当然、いくらでも魔法で対応はできるよ?
ボクのクリア魔法だって相手の魔法を消したりすることもできるわけだけど、これはもちろん魔法として出力された結果後のものを阻害しているわけで、神聖力みたいに魔法そのものを阻害できているわけではないんだよ。
そこで神聖力は魔法そのものを阻害するってことができる……となれば、神聖力は魔法を中心にしていきたいこれからの世代には邪魔になっちゃうと考えられてもおかしくないわけで、実際その後数百年の間に衰退し、魔法適正の一種として僅か残った遺伝子の中でのみ、現代に受け継がれたのだ。
でさ。
ボクって魔法そのものを阻害されたって経験がさ。
つい最近あったわけなんだよね。
モンスターパレードの時に経験した“次元魔法の阻害”による次元単一魔法の発動不能。
あの時に魔人が使っていた力こそ、神聖力による魔法阻害そのものだったってわけ。




