表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
481/515

RE:Birth

「………………不気味だ。こんなダンジョン、見たことがないな」

「フェミリア様……ここはかなりやべぇ空気が漂ってまさぁ……。あっしのスキルも全然奥まで届きやしやせんし……嫌な予感もビンビンしやがって気が散ってしょうがないでさぁねぇ……」

「なぁに? カルロ。あんたが斥候として使えないんじゃ、何の役にも立たないじゃないの。せめて先を歩いて罠避けにでもなってきたらどうかしら?」




この世界に点在しているダンジョンと呼ばれる建造物の中に、未だ人工的に作られたものは……私の知っている限りでは存在していない、という事になっている。もしかしたら遠くのどこかの国や……かの異常発展を遂げている魔法大国辺りなんかが、ダンジョンの作成なんていうとんでもない事業を成功させている可能性も無くはないが、今のところ私の情報網下にはそういった情報が入ってきたことは無い。


よって私の知る限り、新しいダンジョンが作られる方法としては、普通なら魔力溜まりが発生して同種のモンスターがその魔力溜まりから湧き出てくる程度の自然災害だったものが、何かしらの地形を巻き込んだ突然変異を遂げてダンジョンへと形を変えるもの。戦争や大規模な戦闘などが行われた地域に濃度の高い魔素が溜まったことで、それを栄養にでもしたかのように戦争跡地なんかに突然、ダンジョンの入り口が開いていたりするもの。長年放置されていたり、未発見であった古代の魔力を帯びた建造物が、そのまま建造物の構造を用いたダンジョン化していたりするものと、極自然的に人為的な都合を介さずに作られるのがダンジョンと呼ばれる大規模迷宮だ。


そんなダンジョンの全てにはすべからず入り口と呼ばれる場所が存在する。


判り易い例として、建造物を媒介としたダンジョンであれば、今私達がいるこのダンジョンと同じく扉が存在し、その扉を開けた場所からが入口となるわけだが、わざわざ判り易く扉が用意されているようなダンジョンなんてものは珍しい部類で、ダンジョン総数の約7割近くの入り口には扉などと言った判り易い目印が設置されていることもなく、踏み込んだとある地点から突然、地形や生態系が変わっていることで初めてダンジョンに侵入したことを理解できることになる。


「うっせぇなぁルニス。おめぇだってこんな狭い中じゃまともな火力なんかだせねぇだろうがよぃ」

「だぁからどうしたってのよ。あんたより戦えるわ」

「………………」


表面上では言い合っているように見えるだけだが、これもいつものこと。

ここまで来るのに、どれだけのダンジョンに潜ったことか……。

意識は全員が不気味なダンジョンの奥へと向いている。




エリュトスの領土にも他の国と同じ様に、大小さまざまなダンジョンが存在している。攻略済みのダンジョンもあれば、未攻略のダンジョンも。

ただしエリュトスの国内にあるダンジョンに見られる傾向として多いのは、やはり国力の差が他国とは大きく開いている分、ダンジョンの管理が杜撰であり、そもそも発見はされているが全くの手付かずでなんの探索すらされずに放置されているダンジョンすら存在している程。


手付かずのダンジョンなど、当然として危険度は高くとも、それに見合うだけの宝が眠っていることが多いはずなのに、それでも冒険者が誰一人として攻略に乗り出さないのは、エリュトスが既に国として機能していないことの証の一つだろう。


本来ダンジョンと言う物はその性質上、国によって管理方法は異なる物の、少なくとも大手貴族家や国と言った規模の大きい団体単位で管理することを求められる。

管理如何によっては大災害にすらなり得るのだから当然と言えば当然の話だが、それもダンジョンがどこにあって、どれだけの規模で、危険度はどの程度なのか。そんな調査や記録が成されてこそ管理できるのであって、国を動かす上層部も、国を動かしている人間すら既にいないこの国で、そんな管理を誰がするというのか。

やがてダンジョンの情報が共有されなくなれば冒険者の流出は留まることを知らず、いつしかこの国のダンジョンはそこに存在していたことすらも忘れ去られるようになってしまっていた。


そうともなれば当然の様にモンスタースタンピードは定期的に発生し、ダンジョンから異常なモンスターが湧き出てくる。

そうなってからやっと、隣国から戦力が送り込まれ殲滅しモンスターの屍をごっそりと持って帰っていく。


隣国とは当然フリージアの連中で、支援を受ければそこには金や物資が必要となる。そうやって必要最低限未満の国力だけを残して後は削り取られ……廃れていくこの国は、このまま滅びを待つしかないところまで来ているのだ。

隣国として接している国々とはまともな国交も無ければ、敵対国として移り住むこともできず、支援国であるフリージア側へのエリュトスからの移動は完全に封鎖されてしまって久しい。


どうせ死を待つだけなのであれば、軍隊を編成して無理な特攻を続ける……。エリュトス国内の空気がそういう結論に至ったのも、今思えば結局のところフリージア……延いてはカルセオラリアの策略だったのだろう。まさかロトには相手にすらなるとは思ってもいなかったものの……比較的近隣諸国の中では新興国であるグルーネにすら大した結果も出せないまま、ただ活気のある人物から死んでいく。


厳しい環境と詰んでいる事情。明日には隣の街が壊滅しているかもしれないこの国で、私がこれから起こす奇跡は……エリュトスの国民への救済と、なり得るのだろうか……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ