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ヴァンプレイス・ストーリー 真実

「…………なに? …………はあ!?」


真っ暗な部屋に影が入ってくると、目の前で計画が思うように進んでいないことに腹を立てていた弟であるジュードの傍に止まり、揺れて消えた。その報告を聞いているジュードの顔に、さっきまでとは比べ物にならない程の怒りが浮かぶ。短い髪の毛が逆立ち始め、赤みを帯びる。


「どうしたの?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ……今確認を…………あぁっくそっ!! 馬鹿共がっ!!!」


ダァン!


という爆音とともに、地面が抉れて埃が舞う。


ジュードが行き場のなくなった怒りを壁にぶつけ、衝撃で壁と一緒に天井と床をも吹き飛ばしたのだ。私達が吸血鬼なんて種類のモンスターだとは言え、もう既に太陽の光など克服しているのだから、真っ暗な部屋の中にいないと困る、だなんてことはもう無いのだけれど。壁に空いた()……とは到底呼べないような大きさの空間から覗く星の光を美しいと思うことも、もう無くなってしまった。


「やられた! エリュトスの封印を解いた馬鹿がいやがる!!」

「………………は?」


封印を解く……?

なぜ、わざわざ……?


あまりの出来事に、理解が追い付かず呆けた声で返事をしてしまう。

疑問しか浮かばない。だって……そんなことをして得をする生命体が、この星には存在しないはずなのだから。


「封印が……解かれたの? 何か調査をされているとかでもなくて……? だってあの地には私でも鍵が無ければ解けない様な封印が掛かっていたはずよ? しかもなぜ、こんなタイミングで……」

「場所が場所なだけに鮮明に見える訳じゃないんだが……こいつら、聖鍵を2つとも持っていやがるっ!! しかももう……ダンジョンの扉が開いて……っ!!」


「扉が開いている!? あそこの封印を解くだけじゃ、扉までは開かないのよ?!」


ジュードの見ているものをそのまま信じるのだとすると、私たちの中に裏切り者がいる……と言うことになる。その鍵は代々私達の眷属に管理させていたし、間違っても偶然揃うことのない様に全く別の場所に、何の関係性も無い物として保管させていたのだから。それもあの短剣が鍵であることすら、代々管理させてきた眷属には伝えていないはずなのに。




ジュードは自分の血を用いて、指定しておいた場所であれば、そこからどれだけ遠ざかったとしてもその場所を間接的に覗いたり、干渉できるという特殊な血力を持っている。

当然、重要な拠点はすべて抑えてくれているのだけれど、ポイントの指定とは別に大量の血を消費しないと能力を発動できない制限上、常に数多くある拠点を見張っていることはできない為、重要な拠点は自分の影に監視をさせているのだ。


さっきの暗闇に見えた影は、ジュードの影の一部。

ジュードの血力で現地を覗き見るのであれば今起きていることであっても、それが影の報告ともなれば事が起きた時間はかなり遡るだろう。

最低でも封印が解かれて、数時間は経っている計算になる。


「いったい誰が? まさか、また例の国の白と黒じゃないでしょうね?」


そう思わずにいられないのは、この2人の周りで悉く私達の計画を阻止されてきたからだろうか。とは言えど、あの2人だってあそこの封印を解くメリットなんて思い浮かばないのだけれど……。


「いや、違う。エリュトスの軍服を着ている……あ? こいつの顔は……見たことがあるな。エリュトス軍の司令部にいた女だ……ってことはこいつ、もしかして()()()()の血を引いてやがるのか……」

「ああ……あの子。名前はなんて言ったかしら。あんな廃れた国で、随分まともな人間がいたものだと思ってはいたけれど……まさか傀儡にした国に、私達が手を出す前からずっと代々暮らしていたと……? たまたまそんな人物が紛れ込んでいた……? たまたま……? やけに出来すぎている気がするわね」


眷属に渡していたはずの、眷属ですら用途も知らず、二鍵一対だってことも教えてないような物が、偶然集まり用途までをも把握している人物が揃っていて……それも眷属として宝物の管理を任されるような要職に就ける立場にまで登りつめているなんて。


しかもタイミングが完璧すぎて、どう考えても計画的。私達が戦争と人探しで意識を反らしている瞬間を、まるで狙ったかのように封印を解くだなんて……これら全てが偶然だなんて、一言で片づけていいような問題じゃないわね。


「そうは言ったって……ロトの急激に成長した戦力も、グルーネのイレギュラーも、リリーナの成長だって……それのどれか一つでも順調にいっていれば、俺たちの計画はもう最終段階まで進んでいたはずだったんだ。そのすべてが起きえて、ここでエリュトスの封印が解かれるなんて異常事態が起きえるってことは……」

「そのすべてが、奴らの掌の上だった……という事かしら」


「じゃあやっぱり……」

「……はぁ。信じたくは無かったのだけれど……生き残りがいるのね」


私の言葉に、一瞬の沈黙したジュードの顔に、また怒りが浮かんだ。


「あ゙あ!?」


私の目の前で、遠くを見ているであろうジュードが突然怒鳴り声をあげる。

不機嫌さを増していく言葉に、また悪い報告か、とため息が出てしまった。


「はぁ。どうしたの? ……今度は何?」

「赤い髪の悪魔だ。こいつは多分……」


「ああ……そういう事。なら……」

「こいつが当たりで間違いなさそうだな」






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