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科学と魔法の利便の差。

「でもハウトさん。竜王国の復興を目指すってことは……その……ここから行くとなると……」


ボクが心配していることに、最初から心当たりはあったんであろうハウトさんが頷いて返す。


「ああ。少し皆には……特にフラにはかなり、過酷な道のりを強制することにはなるな」

「うん……」


パーティのリーダーとして、現場で起きている状況を踏まえて最適解となる方針を導き出し、それを完璧に遂行する。プトレマイオスなんて世界中で有名なレベルの冒険者クランの長ともなれば、当然リーダーシップなんていうのも超一流で、状況やメンバーの状態を見て方針を決めているのはわかってはいるんだけどね……。場所が場所なだけに、心配しないわけにはいかないんだよね。

だってフォーマルハウトさんが決定し、これからボク達が向かう場所はエリュトスとなった場所。しかも竜王国の復興を目的とする場合、その行先となるのは……


「フラ。行けるよな?」

「ああ。大丈夫だっつの。で? エリュトス国内で過酷な場所ってこたぁ向かう先は……あの異常砂漠地帯のど真ん中ってことでいいんだよな?」


そう。砂漠地帯のど真ん中なのだから。


しかも単なる砂漠地帯なんかじゃなくて、それこそ何の対策もしなければ日中はカンカン照りの照り焼き状態になるのに加えて、夜はキンキンに冷えて強制瞬間冷凍食材状態を強いられる。これ、比喩なんかじゃなくて本当に皮膚が爛れて血が焼かれ照り焼きの様に出来上がり、冷える速度のせいで凍傷の症状が出る前に身体ごと凍ってしまうのだ。更に追い打ちかの如く猛烈な砂塵が吹き荒れちゃってるっていうね。冗談でも笑えないような場所のど真ん中を目指す事になるんだよ。


しかも今回の場合、最初からそこに向かう方針じゃなかったわけで、対策をとるような準備がされているわけでもない。どんなに健康な人が向かっても体調を崩すどころじゃない可能性の方が高いような場所に、既に体力の限界を迎えている人が行くともなれば……それはもう厳しいとかそういう次元の問題じゃぁ……ね? ないんだよね。

心配しないとか。無理な話じゃない?


まぁ物資や薬だとか、いろんな対策用グッズの準備に関しては、ボクが転移でグルーネ国内と行き来すれば何の問題も無いからいいんだけど、薬があろうが対策用品がいくらあろうが、身体が弱ってれば体調の急変なんかも起こりやすくなってしまう。魔法による回復術もあるにはあるけど、そもそも神聖魔法による回復術式っていうのは、元々その人の中で潜在的に存在している基礎体力や免疫力を強制的に表に出してきて治癒する方法であって、それすらも限界まで酷使した人たちにとって、それ以上の回復力は期待できないし、薬だって同じ事。そうなってしまえば、もうどうしようにも対処ができなくなっちゃうことも起こりえてしまう。ボクはお医者さんそのものを連れてくることはできないし、そんな状態にまでなってしまったら、どんなに神聖魔法が得意なお医者さんや治癒術師さんであろうが手の施しようもないってものなんだよ。


幸い、一番体調的に心配な先生もウルさんの献身的な看病が功を奏しているのか、少しずつ回復はしてきてるみたい。どうにか歩く姿も割と普段に近づきつつあるような状況にはなってきている。

逆に看病しながら神経すり減らしてたウルさんの方が、ちょっと体力的に心配なところもあるんだけど、まぁそこは一流のプロ冒険者だからね。疲れを見せるようなことはないみたいだった。


ここからは一つを間違えてしまば命に関わってくる。


“竜王国の復興”なんて意味の分からない単語を、ただ単純な単語として指示書から記憶していたセレネさんにも感服はするけど、命に関わる状況でなぜそれを優先しなきゃいけないのかを理解しているのとしていないのとでは、作戦遂行率に影響してくるのは当然の話だろう。

それも踏まえ、フォーマルハウトさんがベガの人達を含めて、今回のロトとフリージア・カルセオラリア間で突然勃発した戦争の状況についてや、その竜王国とやらを復興させることで起きえる現象についてを、説明していく。


因みに、なぜ竜王国を復興させることが戦争の抑制になるのか? ってのを理解してるのって、実は現状9人程度だけなんだよね。悪魔ちゃん達はもちろん調べてきた張本人だから知ってるけど、ボクの契約精霊だから除くとして、そうなると当然シルとボク、そしてハウトさん。後はシルの側近である各隊長の2人。隣国戦争対応総指揮を取っているシルのご両親。あと王様と王妃様のお二人。

そんなもので、国の運営に関わるような大臣の人とか、すっごいお偉い役職の人達にすら、この計画自体は伏せられているんだよ。

もちろんシルやハウトさんが作戦遂行上必要な人員に情報を渡してる可能性はゼロじゃないけど、最低限エリュトスを含めた他国に情報が流れている事はなさそうだし、何より戦争真っただ中であるロトやフリージアとカルセオラリアにすら、こんな方法で戦争終結が見えるだなんて思われていないはずなんだよね。

だからこそ、一縷の情報からその可能性を模索されない様にって、最低限の人間にしか明かされておらず、その作戦に関わっている真っただ中のセレネさんやフィリシアさんにすら情報の共有を行わなかったってわけなんだけど。


ただそれも、これからそっち方向の目的を目指すのであればパーティメンバーと情報を共有しないわけにはいかないわけで、ハウトさんが戦争の状況と今回の戦争とは全く別の件だったはずの竜王国の復興について、そしてその復興が今回戦争終結に帰依できるであろう可能性についてを、事細かに説明していく。


今回のメンバーがプトレマイオスのメンバーで構成されていて、全員がボクと面識がある人物であったことが功を奏したのが、本来であればこんな話、熱に浮かされてるんじゃないかって心配されるような絵空事みたいな話なんだけど、それをちゃんとした情報源から立証を得ている情報であり、しかも今回ここにいるメンバーは、その情報を入手できる方法に心当たりのある人しかいないわけだ。あまりに突拍子もない話だったはずなのに、簡単に受け入れられたことだった。


一通りハウトさんがメンバーに説明を行い……

現状起きている問題点をメンバーと共有していく。


もちろん成功したところで結果が不確定な作戦なのは元より承知の上なのはシルも含めて承知なんだけど、現状何より一番怖いのは、環境に対する懸念。それについてハウトさんが意見を投げかけると……


「でもレティーシアちゃん、気温の遮断はできるわよね?」

「気温の遮断……?」


皆の視線がボクの方へ一斉に向く。

これって割と怖いんだよ?


「だって私、武闘会の時にそれで負けているもの」

「あ、確かに」


ぽん。

と手を打つと……。



皆が一斉に


「またか」


って考えたのが、ボクにもわかった。

なるほど。


……ボクにも賢王の血が流れているかもしれないんだね?


ね?





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