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みんな、あったかいね。

アルカンシエルから出ると、全く同じ店ではないにせよ、先週と同じルートを辿った。


下着を購入し、普段着を購入する。


既にドレス2枚で意識が飛んでいるイオネちゃんが下着を試着している姿は、もうマネキンのようだ。

そこにシルからの容赦ない追い討ちが入る。


「イオネは胸が無いからこれくらいの方がいいわ」


と言いながら下着としての機能を果たしているのか疑わしい面積の下着を試着させられたり、


「これなんか寄せてあげられるからドレスにいいわね」


と言われながらあまりないお肉を背中と脇から無理やり持ってこさせられたり。


もうイオネちゃんのハートはブレイクどころか粉々になって風に飛ばされたんじゃないだろうか。


それでも谷間ができた時のイオネちゃんの喜びようは、やっぱり女の子だ。

まぁ次の瞬間には支払う金額を見てまた魂が抜けかけていたんだけど。


抜けていく魂を捕まえて強引に戻してあげる。


うふふ。1人で逃がしはしないわ。




普段着はボクと大して変わらなかったけど、防具用の下着はボクが皮鎧用に見繕ったのに対して、イオネちゃんはローブ用に合わせた。後衛職ということでローブにしたんだけど、ローブという服装は結構体と服の間に空間があるように思えるが、下に服を着ない分モロに体のラインが出る。特になんていうか……その……お胸のあるなしがとても……


「寂しいわね」


もうやめてあげてよおおぉぉ


イオネちゃんから抜けた魂が、もう上に昇る気力もなく、下に転がっていった。





寮に戻り、イオネちゃんの魂がどうにか戻ってきた。

現実から逃避していても、支払った金額が変わるわけではない。


「レティちゃん、よく正気を保っていられたね……」


なんて言われてしまった。失礼な。そんな図太いわけじゃないんだからね?

ただ、単純に支払った金額がよくわかっていないだけなんだから!


そんなことを言っていたら、仕返しに支払い金額の詳細を教えられた。

酷い……


その支払い総額……なんと銀貨にして約860枚!


860?? 服に支払う金額じゃなくない? 家買えるんじゃない? シルは馬鹿なの?

ひと夏のバイトでそんな金額稼げるならボクの両親はもう仕事しなくても大丈夫なんですけど!?

そしてその殆どはドレスの金額なんだと言う。

ボクも多分同じくらいの支払いをしてもらっているので、二人分で単純に約1700枚。

金貨に換算しても約26枚……


「大丈夫よ。そのくらい稼げるから」


何させられるのよっ!



でも、この世界に返品などという制度はない。

買ってしまったものはもう諦めるしかないのだ。

そう、ボクみたいに着飾って楽しも? シルも大丈夫だって言ってるんだし。


もう盲目的にでも……信じるしかない。


もうそんな金額的なことは忘れて、イオネちゃんのファッションショーを楽しむことにした。




次の日。


この1週間色々なことがありすぎたせいか、ボクは珍しく熱を出して寝込んでしまった。

今まで寝込んだことなんて殆どなかったのに。

殆どなかったせいもあるのか寝込んでしまうと、とことん弱かった。

学園の授業が始まってまだ実質1週間しか経っていないのに、いきなり病欠だなんてもったいないにも程がある。

とはいえ無理しても周りに心配をかけてしまうため、シルを送り出した後は部屋で静かに寝ていることにした。




コンコン


授業時間の静寂の中、ドアのノック音で目が覚めた。

誰だろう? 喉が腫れているので、擦れた声で返事をする。


「はい?」


「レティ、僕だけど入ってもいいかい?」


男性? ここは女子寮なのでちょっと意外だ。


「どうぞ?」


かちゃ。と扉が開くと、アレク王子様が見えた。


「アレク……王子様? どうしたの?」


「い、いや……シ、シルヴィアに今日はレティが風邪で休んでるって聞いたから、ぼ、僕もちょうど今日授業の履修もしてなかったし看病にと思って。ごめんね、寝てた?」


先週の月曜にはアレク王子様がボクと一緒の授業を履修しているところを見ているから、受けてないわけではないとは思うけど、そこは知らなかったことにしてあげるのが優しさよね。


「ううん、大丈夫。でも、ほら声が枯れちゃってるからあまりしゃべれないし、王子様に風邪移しちゃったら大変だわ。」


「いいよ、そんなこと気にしないで。もうすぐお昼だから食べやすいものでも作るけど、食べられるかい?」


「うん……ありがとう」


今日は1人の予定だったからお昼を食べる予定はなかったのだけれど、素直にありがたい。


グリエンタールの効果のせいかな? そうじゃないといいな。


アレク王子様は、次元収納系の魔法を覚えているらしく、何も無いところから色んな食材や調理器具がでてきた。


ボクは2段ベッドの上にいるので、下に降りる。


小さな土鍋のような器に葱とささみを細かく刻んだおかゆが運ばれてきた。



とても熱い。


「おいしい」


「そう。よかった」


「ありがと、アレク……王子様」


「……」


「……」


「その……王子様っていらないから。昔みたいに呼んでよ」


「……」


そう言われても、周りがいらないとは言わないのだし。


「……その……周りが何か言うのなら僕がちゃんと言うから」


「……」


アレクが周りに言ってしまったら、その取り巻きさんたちはもっとボクのことを嫌いになると思うのだけれど……。




ま、本人がいいって言ってるんだから、いっか。




「……そっか。おいしかったわ。アレク」



「っ!……おそまつさまでした」


ささっと食器を片付けるアレクの顔が赤い。風邪なんか移してないよね?


「横になりなよ。手ぬぐい替えるから」


「ありがと」


そそくさと布団の中にもぐりこむ。

ちなみに、ボクの顔が赤いのは風邪のせいだから。

決して照れてるわけなんかじゃないし。


アレクが手ぬぐいを額においてくれると、とてもひんやりとしていた。

洗面器の中に氷が浮かんでいる。

魔法で作ってくれたのだろう。




その後は、アレクが少し思い出話をしていてくれた。


あまり声が出せなかったので短い返事と表情で会話していたのを覚えている。




いつの間にかボクは眠ってしまっていた。




パチン


部屋に光が灯ったのを感じ、目が覚めた。


「どう? 気分はよくなった?」


「シル? おかえり」


ぼんやりと光に慣れていない視界にシルの顔が見えた。

額に手があたる。


「あら。熱は下がってるみたいね」


「そういえば喉も痛くないや。大分楽になったかも」


「そう。よかったわね」


「明日からまたちゃんと授業受けないとね」


「そうね。……夕飯でも作ってあげるわ」


そう言いながらシルも小さな土鍋を取り出す。


「ふふっ」


「なーに? 突然笑い出して。気持ち悪いわね」


「シルとアレクって似てるよね」


「嫌よ。なんで突然あいつがでてくるのよ」


「シルが今日ボクが寝込んでるってアレクに言ったんでしょ? 今日お昼に看病にきてくれて」


「え?……ええ、そ、そうね。そんな話も……したわね……。したかしら……?」


あれ? シルが言ったんじゃないのかな?


「アレクも同じような土鍋でお粥を作ってくれたから」


「あんなのと一緒にしないでちょうだい。(わたくし)の方が100倍はおいしいわ」


そう言いながら出てきたのは、葱とささみを刻んだお粥だった。

ちょっとお漬物が添えてある。


確かに、お漬物分シルのほうが上手かな?




明日にはしっかり治さないとね。





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