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尊敬しかしたことないんだけど、まだし足りないんだよ。

 そりゃ、フリージア・カルセオラリアの裏工作が入ってた今年のモンスターパレードは、モンスター数が毎年恒例程度であった数万とか、そんな生易しいどころの話じゃなくなってしまって、山脈側から王都へ直線的に20万ものモンスターが押し寄せてきたと思ったら、結局最終的にはグルーネ国全体に攻めてきたモンスター数は300万近くに及んでいた。

 この数は最初にシルが予想していた数とほとんど変わらなかったとみられていて、少し予定より少なかったみたいなんだけど、それは単純にいつもシルが立てる予測が自分で立てうる予測値の最悪値を基本として提示するからだったりする。まぁつまりはシルが考えうる最悪の予想に近かったってことに他ならないんだけど。

 因みにちゃんとした数が最終的にわからなかったのは当然で、作戦上、数が数えられるような殲滅の仕方をしている余裕なんかなかったから、川に流して海に捨てたり、土の中に埋めたりマグマの中に落としたりなんて、ありとあらゆる方法を使って撃退までこぎつけたわけだし、何しろ死体として残っていたモンスターですら、とある悪魔ちゃんたち3人がモンスターの肉体を沢山食べて消化しちゃったからね。もう戦争の後に確認する術なんて無かったって話なんだけど、そこはボクに何も言われてないから、知らぬ存ぜぬを貫き通させてもらってるってわけ。

 最終的にグルーネに押し寄せた数が300万であれば、それよりも多かったって言われているロトへ押し寄せたモンスターと合わせれば最低でも600万以上にも上るモンスターの大群が一気に押し寄せてきたわけで。


 え。ていうか人類よく勝てたなって思うよね。

 でも、結局『人道的で道徳的な知性ありき文明による遠慮』なんてものを全部取っ払って、何をしてでも勝たなきゃいけないんだ! なんてなっちゃった時には、知性のない欲求に素直な下級モンスターをどんな数集めようとも、どうにかなってしまう戦力っていうのは魔法やスキルというこの世界ならではの殲滅力ともいえる。

 まぁとは言っても、どんなに文明の利器があろうと魔法なんて殲滅力があとうとも、物資に限度がある以上、攻めてくる数が無限であればいつかは単純な数が勝ってしまうのは、覆しようのない事実でもあるんだけど。


 そこに単なる吸血鬼が千体、今回の戦争で新しく戦場をかき乱したところで戦況が変わりうるのか? と言えば、それはもう簡単に戦況が変わってしまうわけ。

 なんでかって、ロト国からしてみればフリージア・カルセオラリアが突如戦争をけしかけてきたとは言え、ある程度は両国の動きを掴んでいて、戦争の準備をしているであろう予測は立て、準備をしていたわけなのよ。その結果、攻めてきたのが人間じゃなくてモンスターだったのは予定外だったとしても、その情報すら両国がぶつかり合う前に入手できたわけで、そこにすら準備はある程度間に合っていた。

 つまり、ロトからしたらフリージア・カルセオラリアの軍勢は、エリュトスの国境を含めて、全て閉鎖して最前線で抑えられているっていうのが今の現状なわけで……。


 そこにミト国側であるアマツとの国境や、それこそ北の未開拓地から突然、千体以上ものモンスターがどこからともなくロトの国の中を蹂躙し始めたら……?

 もう最悪でしかない。だって今、戦争に加担しないロトの冒険者達はグルーネや他の国々に流れて仕事をしていて、遊軍的な戦力はロトの国内になんてほとんど残っておらず、ロト国の国軍勢の主力は最前線に吊り上げられているのだから。

 もちろん首都や各都市の守りと北の防衛線に必要数程度の軍は残っているとは言え、どこぞから侵入されて国土を内部から蹂躙されてしまえば国として傾きかねないし、何より今回最大の懸念として『人を攫われた場合、相手の戦力として復帰させられる可能性』なんて馬鹿げたくらい最悪な情報がでてきてしまったせいで、当然国土を蹂躙されること自体が許せることじゃないとは言え、許す許せないどころか、どこか一つを見逃せばどんどん自分の首を絞めていってしまうなんていう、最悪な状況になりうるってことも考えられちゃうのだ。


 ミト国で死亡・行方不明者が千人を超えているであろうって言う情報も、この国にはまだ国が管理しているような完璧な戸籍なんてものは存在していないんだよね。

 グルーネは国民として幸福なことに、領主によって出生を届けて子供の年齢に対してお祝いや魔力検査なんていう支援を行ってくれてたりするけど、それも領主によってはやってなかったりするみたいだし、何より他の国にそんな制度は存在しないわけ。ともすれば死亡者数や行方不明数なんて完璧に把握するなんて無理なんだから、被害数もかなり曖昧になってしまう。


 しかも、ミトの東側や南東側にも小国が点々と続いているわけで、そのすべてじゃなくともボク達の把握していない国にフリージア・カルセオラリアの手が及んでいたとしたら……。最低限理性を持ち合わせるモンスターが数千体なんて言う、馬鹿げた増援が予測できてしまうってわけだ。


 こういう戦況をみて作戦をまた一から考えたりして、更にはそれすらもまた変わって一からまた考えていくとか……。そんな途方もなくて嫌なことずっと考えてて、よく発狂しないものだよね……。



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