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ミトはアマツの東側にある国だよ

「ええ。まだフラさん達のベガパーティが引き返すにせよ、ハウトが合流したのなら行動を始めるまでに数日はかける程度の余裕はあるでしょうから、その間に直接ロト国軍部元帥であるハルト様に連絡を取って欲しいのよ。貴女であれば居場所もわかるし、潜入することも可能よね? もちろん、危険を感じるような事があれば途中でやめてもいいわ。向こうだって戦争中でかなりピリついているでしょうし、本当であればわざわざ危ない橋を渡って貰う必要はないのだけれど……今回の件については、正統な手続きなんてとっていられないし、いち早く伝わる手段があるのなら出来るだけ早く情報を伝えるに越したことはなさそうなのよね……もう既に手遅れである可能性すら考えられんだもの」

「う、うん……」


ねぇ聞いて?

ハウトさん……なんだかロトのエロじじ……ん゛んっ……ハルトさんと名前が似てるから、今回に限ってハウトさんはフルネームのフォーマルハウトさんって呼ぼうと思うんだけど、そんなことどうでもよくてね?

フォーマルハウトさんに言われてすぐにシルの元に報告しに来て。いつものごとく突然声かけても普通に返されるし、突然声かけてもな~んにも驚いてくれないし。いや、それはもういつもの事だからいいのよ。

でも、でもね!? 報告してから流れるように次の指示がきて、それが全部終わるまでシルってば、ボクの方に視線を移す素振りも無いんだよ!? 手元にある、なんの書類なのかわからない書類の束がどんどん進んでって止まらないし!? いや、良くてすごいことなんだけどさぁっ!

ほら、ちょっとくらい色々話すならさ! お互いの事見てくれてもいいと思わない? 思うよね!? それでいてなんか心配してくれるような話されたって、本当に心配されてるのかよくわかんなくなってくるんだよ!


「心配しているに、決まっているじゃない」


なんて今更眉をあげながら目線を合わせられても、ボクってば今思ってたこと、口になんか出してないんだよっ!! なんで完璧な話してたようなタイミングで会話が成立するのよっ!!


「仕方ないじゃない。貴女、顔に出るんだもの」


くぅっ! その顔を見てないのになんでなのっ!?


「はい、これ。手紙にしておいたわ。ハルト様と会って話す必要はないのだから、これを目の付くところにわざとらしく置いてきてくれる?」

「……はぁ。わかったよ! でも、何がまずいの? そんなに行方不明の人って出てるの?」


実際この時代って、魔法やスキルなんてものが発達しているぶん、科学や工学っていう分野はかなり発展が遅れている。

でも、この世界で発展の主軸となっている魔法だとかスキルは、残念なことに、ある程度裕福な家庭でしか研鑽することもできないし、スキルに比べると魔法に関してはさらにハードルが高くなってしまって、魔法先進国であるグルーネですらまともに魔法を扱えるのなんか貴族程度には裕福じゃないと、そもそも才能を開花させること自体がかなり難しい。ボクや弟、妹の様な例は相当珍しいんだよね。ともすればどっかの国の端っこにあるような村で、村人が全滅するような異常災害が起きていたとしても、誰も何の用事もなかったりすると、気付かずに1か月以上もの時間を経過してしまっていたりなんてことも、珍しい話じゃなかったりするんだよね。


その集落に平民しか集まっていなければ、魔法みたいな便利な手段で何かしらの助けを呼ぶような手段をとることなんてできないし、科学の発展している前世の様な世界みたいに、貧富の差を問わず世界の端っこから端っこまで、瞬時に連絡を取る手段なんてものはそもそも現状、魔法にすら存在しない。そして困ったことに、領主なんて人はいくつもの市町村を一手に治めている人がほとんどな時点で、魔法が使える人が村に一人もいないなんて村は珍しくないなんて話じゃなくて、むしろそういう村の方が多いんだよ。まぁさすがに町って規模になってくれば、一人くらいはいるだろうけど、ボクが生まれ育ったマーデン村だって、ボクが魔法を使えることを隠していたように、ボクたち家族以外に魔法が使える人なんていなかったしね。


だから、どこかボクやシルの知らないところで大量の行方不明なんて事件が起きていたとしても珍しい話じゃなくて、それが最近裏で工作しまくってたんであろうフリージア・カルセオラリアがどこかの国を襲ったりしたのだとすれば、気付かないうちに後手に回っている可能性は割と現実的な可能性としてあったりするのだ。


モンスター化をさせるにあたって、どんな準備や手法が必要で、どれくらいの経費や時間がかかるのかって部分は全く分かっていない。もちろん大掛かりな設備や準備が必要ならまだしも、一つの魔法を使う程度の気軽さでできちゃうのであれば、それって戦場なんていう人の集まる場所そのものがかなり危険だって話にもなりかねないわけではある。

まぁ、今のところロト国内で起きている主戦場で、ロト国の兵隊さん達が吸血鬼になっちゃったなんて話は聞こえてこないから、そこまで簡単な魔法ってわけじゃないとは思うんだけどね。




「あるのよ。一つだけ、大きな数の行方不明を出している心当たりが」

「そうなの!?」


例えその行方不明が最近起きていたんだとしても、戦場で吸血鬼が量産されていないことと、今回エーレーメンクランのタキさんが吸血鬼になってフラ先生たちの前に現れた時期を見てみるに、少なくともモンスター化にはある程度の準備や時間が必要なんじゃないか? ってことくらいは予想ができる。もちろんそれすらも相手の計算のうちって可能性は無くもないけど、そんな簡単に制約なくモンスター化ができるのであれば、ロトの戦力の大半が集まっている戦場で敵国であるロトの兵隊さんたちを全員モンスター化させてしまえば、今回の戦争で簡単に勝てるんだもん。それをしていないってことは、それなりの制約があるってみて間違いじゃないだろうし。

エーレーメンクランのタキさんが行方不明になったのはゴブリンスタンピードの時。つまり半年くらい前なんだよね。

ってことは、そんなことくらい分かっているであろうシルの中にある心当たりっていうのは数か月以上も前の話ってことになる。……う~ん。そんな大きな事件、起きていればさすがにもう発覚してて、話題くらいにはなってるはずだけど、あったっけ?


「貴女達がベガパーティーを援助に向かう前に、少しこれから起きる戦闘の作戦内容を詰めたじゃない?」

「うん」


「その時、ロトの隣国グルーネを含めたすべての国で、大型の魔力渦による工作がフリージア・カルセオラリア側からあった話はしたわよね?」

「うん。してたね。ボクがその工作とつくづくご対面させられてたってやつ」


「ミト国の話、覚えてる?」

「うん。首都内で大きな魔力渦が起きて、なんかすごい人の数が被害にあったって……え?」


「ええ。被害にあった人数は、死体と行方不明者の数……なのよね……」

「へ!? 千人近くいるような話してなかった?」


「こうなってくると……千人じゃ、済んでいないと見ておいた方が、いいのかもしれないわね」

「えぇ〜……」




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