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モンスター同士って、どうやって意思を疎通してるんだろうね?

「タキ……か。そんなことが……」

「ああ」


フラ先生と合流ができてベガの人達もボク達も一息付けたとはいえ、流石に数か月もの間、戦争相手国である敵地の領土ど真ん中に潜入していたベガパーティーの皆には相当な疲労が見えている。こんなに憔悴した先生を見るのは初めて。

ボク達とクエストに行ったりだとか、ダンジョンに潜っていた時なんかには見えもしなかった疲労が、この数か月間がどれだけ大変なものだったのかを物語っているかのようだった。


パーティリーダーとして、フラ先生がハウトさんに引き継ぎをしながら現状を伝えていくのを、ボク達アルタイルのメンバーとしてここに来た3人も一緒に聞いている。ベガからの引継ぎもアルタイルの今後に関する重要な作戦の一部だからね。


「今その5人はどこにいるんだ? ここには見当たらないようだが」

「それぞれ思う所はあったらしくてな。コミュニケーションは取れなくなっちまったから何を想って、今どこで何をしてるのかまではわからねぇんだけど……あいつらには吸血鬼のまま、敵国に潜入して貰うことに同意してもらったよ。それによってどんな成果が得られるのかなんてわからねぇし……むしろ何も得らねぇまま……」


「ま、吸血鬼になっちまった手前、国に戻ってもらうわけにもいかなかったよな。他人に死ねと伝えるのは辛かっただろう。ここからは俺に任せて、お前はちゃんと休むんだぞ」


先生の目線が下がって言い淀んだところを、すかさずハウトさんが遮った。いつもならあの距離はフラ先生嫌がってるけど、本当はすごく信頼してるんだってのが垣間見れてなんか微笑ましいけど、そんなこと口に出したら怒られそうだから黙ってよ。


「ああ。わかってるよ」


端から見てるとほんと、仲のいい兄妹だよ。

まぁボクの兄弟愛だって負けてないけどね?


「そういやお前のスキルでタキの居場所とかわからないのか?」

「ううん。ボク、そのタキさんって人と会った事ないから……」


「ああ、そうか。スタンピードの時にあいつらとはすれ違ってるからな……」

「うん……ごめんね?」


「いや、いいんだ。あいつらだって腐っても上級冒険者だからな。どんな難しいことだって……やりとげてみせるだろ」


ゴブリンスタンピードの時、行方が分からずじまいとなっていたエーレーメンクランの人達と、この場所でフラ先生たちが交戦していたって話を聞かされて、ハウトさんが考え込んでいる。


今までモンスター化を確認できたのはフリージア・カルセオラリア両国に所属している、もしくはその両国に住んでいた人間だけであって、人間以外の生物が吸血鬼化したってことも今のところ確認されていなければ、国外の人間が吸血鬼の中に含まれていたなんて言う報告もなかったんだけど。

当然、一番敵国から情報を持ち帰ってきているルージュ達からしてみたら、吸血鬼化している元の人間がどこの国の所属であったかなんてわかるわけも無いんだから仕方のない話で、例えそれがボクだったとしても、ボクって実際知り合いに数えられる人って少ないんだよね。知り合いとして登録されている人がマップスキルに出てきたところで、敵対して出てくれば表記は敵として真っ赤になるのは変わらないし、例えばボクがエーレーメンクランの人達とここで会敵していて戦っちゃったりしたところで、まさか元グルーネ所属の上級冒険者だなんてことになんか気づくはずもないだろうから、結局気付くことはなかっただろうし。まぁボク以外のアルタイルパーティの誰かが知ってれば、それはそれで気付いたかもしれないけど。


それが、まさか国外からの……しかも自分たちの国であるグルーネ出身の、それも上級冒険者が吸血鬼にさせられていたなんて話が出てくれば、色々と想定が変わってきてしまう。


「わり。すぐに報告に戻ってくれないか? ちょっと急を要する」

「うん。わかりました」



「ねぇシル」

「何?」


イレギュラーが発生したら、そのイレギュラーによって戦況が変わってしまう可能性は十分にある。と言うか、ボク達の側から見たイレギュラーってことは、相手から見た切り札的存在でもおかしくないわけで。可能性があるっていうより、それに気づいた段階ですでに時遅しなんてことになりかねないんだよね。


それが発覚した段階で、出来るだけ迅速な手段で、出来る限り話の通じる上司に報告するとなれば、ボクが転移のスキルを使ってシルに報告してしまうこと程、分かり易くて便利で簡単で確実な方法はない。まさに現場で今得た情報や起きた出来事をどんな方法より確実に、素早く、そして現場で直接見た人間が齟齬無く直接伝えることができる。

うん。これほど有用な作戦情報伝達能力ってないよね。まぁもっと上を求めるのであれば、転移がスキルじゃなくて魔法であったとすれば、ボク以外の人も連れて歩けるようになるわけだし、そっちの方が最高と言えば最高だったのかもしれないけど。転移魔法自体は伝説の魔法として伝わっているにせよ、実際この時代で転移魔法を使える人は確認されていないわけだから、それができなかったとしてもボクの転移スキルがこういう場面で超絶輝くのは言うまでもないし、例え誰かが転移魔法を使えたとしても、だからボクの転移スキルが劣っていて使い物にもならないって話にもならないわけだしね。


「エーレーメンクランのタキさんって知ってる?」

「ええ……。………………え? まさか吸血鬼として見つかったの?」


「……あ、うん……。話が早くて助かるよ……」


助かるって言うか、呆れるんだけど。


「それって、行方不明者のすべてがモンスター化させられる可能性を秘めてるって事になるわよね………………。あら、まずいわね。それ」


あ、うん。齟齬無く情報が伝えられるのが良さなのは、変わらないんだよ?

ただちょっとなんて言うか……。

言って無い事まで理解されたらボクが混乱するんですけど?


「え? 何か思い当たることがあるの?」


「……ええ。ところで、フラさん達……ベガの皆とは合流できたのよね? 状況と損害は?」

「ううん。人的損害は無かったみたい。フラ先生が吸血鬼化したタキさん達、エーレーメンクランの人達と交戦して、メルさんがなんか魔法で理性を取り戻したんだって。吸血鬼化が戻ったわけでもなければ、理性は戻ってもコミュニケーションは難しかったみたい」


「……そう。理性を。交戦したのはどのあたりだったの?」

「フリージア首都のノミノア市内だよ」


「やっぱりそこ辺りまでは潜入していたのね。という事は、戻ってくるのも少し大変よね……。う~ん……困ったわね。人手が足りないわ。レティ、戻ってきたついでにもう一つ仕事を任せてもいいかしら。報酬は弾むわよ」

「うん……いいけど。何をすればいいの?」


「ロトにまた、潜入してきてくれない?」



「うん……え? ……潜入……なの?」





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