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世界を憎む者が望む物

「なるほどな……こりゃまぁ今までに無い程、綺麗にできた書類で気持ち悪いな」

「ええ。そうでしょうね。(わたくし)も自分で見ていてそう思うもの」


悪魔ちゃん達の世界を見通す目と、悪魔の様な未来を見通すシルの頭が作り出す会議資料が、今までにこの世界ではありえない精度の作戦を生み出す。

あまりに明確な指示内容になっていく作戦内容書は、それを実行する兵士たちにはものすごい気持ち悪く映るらしい。

その中でも一般的な兵士への命令内容はわざと抽象的に精度を悪く作られているのに対し、ラインハート家に連なる、シルにとって信頼できる部下へ渡る指示書には、まるで未来何が起こるのかを予測しているかのように『こうなるであろうからこうする』が具体的に記されているのだ。


……うんうん……きっしょ。

あ、いけね。


確かに読んでてすっごく気持ちが悪い。だって、そうならなかったらどうするの? って当然の疑問だと思うんだけど、ここに記載されている『こうなったら』は物理的に想定しうる最悪のパターンをなぞって作成されており、ならない場合はこちら側にとって良い方向にしか転ばないんだから気にする必要もなく次の作戦へどんどん進めればいいよねって感じらしい。よくわかんないけど。




今現在。

ロトとフリージアの国境は戦時中なんだから当然封鎖されていて、そのうちの一部は戦場となって昼夜問わず戦闘が続いている。とは言え3ヶ月間同じ場所でずっと争いが続いているわけではなく、じりじりとロトの国内を南東から南東中央部側へと戦場が動いており、現在はロト・フリージア・エリュトスの3国間の狭間へと戦場が流れ始めていた。


戦場が移動している思惑は主にフリージア・カルセオラリア側にあり、ロト国としては国内平原で戦場が展開されていた方が支援や物資を送りやすく、国内に関する不利益は少ない事もあって戦場が移りゆくことにメリットは無い。それを戦果と捉えるのであればフリージア・カルセオラリア側の戦果となるのかもしれないけど、ロト国としても別に不利益を被るわけでも、そこまで不便なわけでも無い。

既にフリージア・カルセオラリアの同盟……と言うか傀儡国であるエリュトスとロトとの国境は完全に封鎖されているし、グルーネから見込める援軍は当然のごとく西側から流れて来てくれているんだから、戦場が西に傾くことでグルーネからの援軍は到着が早くなり、そしてグルーネ側としても戦場が近づいてきていることに、僅かながらでも危機感を以って接してくれるという点ではメリットが無くもないわけだ。


「ほんで、わかったのか?」


ここにはシルとこの場でのシルの副官を担っているフィリシアさん、そして合流したボク達4人しかいないから、ハウトさんの口調も砕けている。まぁこの人が真面目な会議だからってめちゃくちゃ真面目な言葉使うのかと言われると……使わないかもしれないけど。


ほんと。この3ヶ月一緒にいて、何の違和感も感じなかったんだよ?

男の人だったり会った事がほとんど無かった人だったのにも関わらず、ボクとしては本当に……訓練がフラ先生の比じゃないくらいスパルタだった事を除けば……まるで男版フラ先生と一緒にいるかのようだった。

……うん。フラ先生がもう男っぽいから、男版だとか女版だとか、関係無いんだけど。それくらい兄と妹でそっくりな性格をしてるんだよね。この人。



「そこが明確ではないのだけれど、()()について動きがあるから貴方達に来てもらったのよ」

「それが、この……昔あった竜王国レントラーム? とその末裔……ってか?」


「ええ」

「なんだかまぁ、きなくせぇ話がでてきたもんだなぁ」


(わたくし)だってこんな荒唐無稽な話、レティが実際そのお姫様とやらと会っていて? ルージュ達……情報を調べて貰っている子達と色々裏を合わせて貰っていなければ、信用するしないの前に一笑に付していたんじゃないかってくらいの話なのよ。それでも事実、調べてもらっていくうちに、そのレントラームと呼ばれた国は歴史上存在はしていたわ。……してはいたそうなのだけれど……」

「いたけど?」


「それが、人魔大戦だなんて言う途方もない神話よりも昔の話なのよね。レントラームっていう名前の国があった時代。……そんな昔の国の末裔だなんて言われても、何を以って信用して、何を証拠とすればいいのかなんて、(わたくし)にもわからないもの」

「はぁ? 人魔大戦なんて何百年も前に、本当にあったのかどうかすらわからねぇようなおとぎ話だろうがよ……そんなの俺等どころか今ある国自体さえあったかどうかもわからん程前の話じゃねぇか……。ってか、本当にあったのか?」


「らしいわよ」

「わぉ。それが知れただけでも価値のある話だぞ……?」


「まぁその話はルージュ達に聞いてちょうだい」

「お、おう……それで、レティーシア(こいつ)が戦場に参加する必要があって、急ぎの本題がこっからってことか?」


「……ええ。今各地の戦況を追って順に説明していくわね。前提としてこれは(わたくし)の予想が織り込まれているわ。絶対じゃないから、そこだけは頭に入れておいてね」


そう言ってシルが説明し始めたのはロト国の戦況と、フリージア・カルセオラリアの戦況、そしてこの戦争の目的について……だった。

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