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お兄さんの押し付け愛

「あ~あ~……フラちゃん。部屋を壊すのはよくないよ? めっだ」

「めっ じゃねぇ! フレディ! お前何歳だと思ってんだよ! てめぇがそんなだからメルが行き遅れてんだろうが! 早く結婚してやれや!」


「め、メルは今、関係ないだろう!?」

「関係なくねぇんだよっ! このシスコン野郎が! メルが可哀想だってんだよ!」


「こらこら、フラ。フレディになんてことを言うんだ」

「てめぇもなんだよハウト! いい加減にしろ!」


おぅ……


自分が尊敬してる先生が家族にガチギレしてるところって、見たいものじゃないよね……。ハウトさんに何か話があったであろうリンクも、近づこうとしたところでフラ先生がキレたもんだから、そのままフリーズして……無いな。あれ?


「フラ姉。フラ姉がどんなリアクションしたってまた2人を喜ばせるだけなんだから、とりあえず落ち着けよ」


ウルさんはボク達を案内してから、フラ先生がキレそうになると見たところで『すたこらさっさ』という効果音付きで元々居た大広間へと戻って行ってしまった。リンクもこの光景を見て全く動じない辺り、この光景がヴィシュトンテイル家の日常茶飯事ってやつなのかもしれない。


先生が派手にキレ散らかして部屋が炎上しているのにもかかわらず、お兄さん2人は演技がかった大袈裟なリアクションで未だに先生を煽り続けているように見える。……煽っているって言うか、あれがシスコン兄貴ズの妹愛なんだろうけど、まぁ先生の性格的にあれは受け付けないよねぇ……。


ちなみにフレディさんもハウトさんも、フラ先生と同じ燃えるような赤髪をしている。

フレディさんの方が少しさらさらした髪質で、ハウトさんと先生はちょっと固そうな髪質なのは、両親のどちらかに由来しているのかな?

お兄さん2人は見た感じそこまで筋肉質な身体はしていないように見える。むしろ外見的に一番筋肉質な身体をしているのは一番下の妹であるフラ先生に見えてしまう程。とは言え、鍛えているのが分かるほどではあるんだけどね。


フレディさんは一言で言えば優しい感じで、センターで分かれている前髪が綺麗に整えられて輝いている。髪の毛もちゃんと手入れされていて、3人の中で唯一ちゃんと髪が重力で下を向いていて、服装も他の二人のように、如何にも冒険者っていう格好よりは、貴族っぽい綺麗な服装を好んでいるあたり、女である先生よりも身嗜みに気を使っているのがわかる。

一方ハウトさんはどちらかと言うと髪質も含めて先生に似ていて、野性的って言うのかな。目尻も吊り上がっていて、フレディさんとは真逆で少し怖い印象を受ける。先生と並んでたら一目瞭然に兄妹だってわかるほど、仕草も格好も似てるんだよね。まぁハウトさんの印象は今朝会って少し会話した分が含まれてるのかも。ティオナさんや先生の扱いを見ていたせいで、ちょっといたずら好きでやんちゃなイメージが付いちゃったのかもしれないんだけどね。


「くぅっ!!」


先生がリンクに窘められ、半ば強制的に精霊武装を解く。燃料切れみたいな炎の途切れかたをしているあたり、まだ精神的に落ち着いたわけじゃなさそうだけど。


「ね。先生がボクを弄ってくるのって、お兄さん譲りだったんだね」


ハウトさんを見ていると、本当に先生と似てるって思うんだよね。

さすが兄妹だよ。


「なっ…………んだと…………」


がたん


先生が絶望顔で膝から崩れ落ちた。

自覚は全く無かったらしい。


「へぇ。学園でのフラはどんな感じなんだい? 是非詳しく教えてくれてもいいんだよ?」

「じゃ、ハウトさんの指導? とやらの対価は、フラ先生の日常をお話するっていうのは?」

「な、なんだって?! ハウトだけずるいじゃないかっ!」


「よし。時間が無い。すぐに始めよう」


「て・め・え・ら・なぁ!!!」


なんか先生が弄られてるのって面白いけど、すっごいシスコン兄貴ズだよね。流石に兄と妹っていったって、ここまでくると尊敬するよ。

まぁ、ボクが意図して乗っかってるのには、2人とも気づいているんだろうけど。


先生で遊ぶのは割と楽しい。

楽しいけど、こんなことしてる場合でもないのよね。


「先生。ロトの戦争に動きがあったのは聞いた?」


突然真面目になったボクの顔に、怒り心頭でお兄さん達を殺さんばかりで武器を振り回していた先生が止まって振り返る。


「今聞いてた。んで、なんでお前達がここにいんだ? 今日は特殊魔法課の講義の日でもねぇだろ?」

「うん。今日はハウトさんに会いに来たの。先生を探せばハウトさんに会えるってシルが言ってたから」


「……」


心底嫌な顔をしてるけど、実際見つかったんだよ。

それが分かってる辺り、何も言えないんだろうけど。


「それに、なんでお前がハウトを知ってんだ? あたしがこいつらの話するなんて、ぜってぇありえないんだが。リンクにでも聞いたのか?」


いつの間にかハウトさん達と何やら思い出話をしゃべっているのであろうリンクの方に、先生の瞳が一瞬動く。眉間にしわが寄ってて、輩がガン飛ばしてるようにしか見えないけど。


「ん~ん。ラインハートの会議っぽいのが今朝あって。そこにいた」

「ああ。なら公爵会議か? まぁハウトはこれでもヴィシュトンテイル家の跡取りだからな。ラインハートが公爵会議を開いたら参加はしないといけねぇわな」


「うん……? そうなんだ?」


そう言えば先生も公爵家の出身なんだっけ。


「じゃあシルヴィアからの伝言か何かか? さっきもハウトから話は聞いてたが、これからあたしらのクランも忙しくなりそうだからな。事が事だけに、モンパレん時と同じか……それ以上に……な」

「そうだ、その事なんだがフラ姉。シルヴィアが……」


会話が聞こえていたのか、リンクが一歩引いて、ハウトさんとフレディさんも会話の中に入るように立ち回った。

そういえばリンクはシルの名前を叫んでここに向かったんだよね。


「多分、今回の戦争……シルヴィアが出るぞ」




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