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ボクのせいでシルの株が落ちたりしないか心配だよ。

『昨日一時、ご主人様の元を離れたときに、先にシルヴィア様へご報告をしておいたのですよ』

『だから、一応もうカルセオラリアの現状は伝えてあるの』


……えぇ?!


あぁっ……! 雨に当たってた時か……。そっか。そうじゃん……。ルージュ達に先に戻って報告しておいてもらえばよかっただけじゃんね。っていうか、まぁ。それを自立的にやっておいてくれたわけなんだけど。


なんていうかね……。ボクより優秀な子達がボクに付いてきてくれるのは嬉しいんだけど、結局の所ボクが優秀じゃない部分は上限が押さえつけられちゃってそうで、なんか勿体無く感じることがよくあるんだよね……。


そういう面ではシルに仕えた方が、この子達も存分に能力を発揮できるんだろうね。


……もう家族みたいなもんだから、流石に『主人を変えます!』なんて言われたら、悲しくて泣いちゃいそうだし。嫌なんだけど……。




シルが突然ルージュを呼び出すと、ボクの時みたいに突然部屋に現れるものだから、また少し部屋の中がざわついてしまった。少し前に一度体験しているせいか、ボクの時よりはざわつきも少ないけど、そういう問題でもないのだ。


会議をしている側からすれば、見えない人が突然部屋に現れるって言うこと自体がありえちゃいけないことだし、何より危機管理する護衛側の人達からしてみれば本来あっちゃいけないレベルの事件だからね……。

護衛の人をわざわざ連れて会議に出ているのに、その護衛の人達が何の警戒も無く、認知していないような人が既に部屋の中にまで侵入してきちゃってるってことで、ここには国一番の重要人物である王様までいるわけなのよ。こんなことがありえていいわけがない。


っていうか、そもそもこの会議ってグルーネ国内の人達が集まってる会議だよね??

な、なんでそれぞれが護衛の人なんて引き連れて会議なんかしてるんだろうね。

グルーネって、意外と貴族間の仲……悪いのかなぁ。




事実、ボクがシルの横に降りたってしまった時点で、ボクはこの国の王様であるリンクのお父さんを暗殺できたってことになる。

更に言えば、誰一人として気づく事すらできなかったのだ。王様だけじゃなく、この部屋に集まっている国の重鎮と呼ばれる人達だって、一網打尽にされていたっておかしくない事態なんだよね。

もちろんボクはグルーネの人間なんだからそんな事しないけど。

それはボクがグルーネの人間だからってだけであって。


もしも万が一、ボクと同じスキルや魔法を使える人がいたとしたら?

もしもボクが洗脳されてたりなんかしたら……?


やりたい放題やられてたっておかしくないって事なんだから。


そういう意味もあってか、直立不動で立っている人達からものすごい殺気がボク達に寄せられています……。こ、こんな事なら、最初から正々堂々と姿を見せたまま部屋に入室するべきでした……。




「では、この資料を皆様へ」


ルージュが一言そう言うと、今度はシエルとシトラスが、コの字型になっている机の内側に突然現れ、座っている皆様方に資料を配りだす。

……もうこれだけ続けば流石に諦めているのか、固まったままため息をつきながら資料を受け取っていく貴族の人達……。やりたい放題やっているルージュ達もといシルに、どんどんメンツを潰されていく護衛の人達……。

自分の連れてきた護衛のメンツを潰されるって言うのは、その人達を連れてきた貴族の人達のメンツも潰しているようなものなんだよ?


ねぇ。きっとこれ、シルもルージュも……。

わざとやってるでしょ。

絶対確信犯だよ?

シルがそんな事、気付かないはずがないんだもん。


ほら……。

王様も顔は笑ってるけど、すっごい引きつってるからね!?

可哀想に……。

リンクの顔も引きつってるけど、あれって王様とは違って笑いを堪えてる奴だよね。


「配り終えました」

「それじゃなのっ」


一言ずつ残すと、シエルとシトラスがぱっと消えてしまう。


「ほぉ……精霊……ですかな?」


すると、机の末席に座っていたものすごい高齢そうなおじいちゃんが口を開いた。こう言ってしまうと失礼にあたるかもしれないんだけど、少し小汚い格好をしたおじいちゃんで、真っ白な白髪が肩よりも長いくらいに伸びていてぼさぼさ。眉毛が長くて、糸目が見えなくなっているようなお顔をしているおじいちゃん。周りの身なりがいいだけに、この場では少し浮いて見える。


「そうですわ。さすが、老師様ですわね」


シルが向かい側の人へ見せていた敵対的な態度ではなく、少し柔和な顔つきに戻り返事をした。シルは一応かなり位の高い貴族様だけれど、貴族らしくみんな一律に同じような対応をするようなことはなく、腹芸と顔芸を割とはっきり使い分けるんだよね。さっきみたいに嫌な人には嫌な顔するし、好きな人にはこういう優しい顔を向けたりするし。それでいて貴族ならではっていう腹芸も使い分けるものだから、貴族側のお偉いおじさん達がシルと口論したがらないのだ。


外見的に誰が見ても老師様って名づけそうなおじいちゃんが、糸目をこちらに向ける。


「ん~~……シルヴィア様では……ないよのぅ……」


そういいながらゆっくりと動く細い目がボクの方まで向くと……。


「お主かのぅ」


開いているようには見えない目が、ボクを見透かすように見つめてくるようで……なんだか居心地が悪い。別に隠す必要なんてないし、判る人には判るんだから否定する必要もない。


少しにこっとして返すと、


「ふむ……」


と言って黙ってしまった。


「それじゃレティ。報告して頂戴」

「あ、うん。……え?」


え? この場でボクが報告するの?!




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