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やっぱりボクにこういうのは・・・あってないかなっ!!

「っとっと」


シルの後を追って部屋に転移しようとすると、部屋の中は意外にも結構な人数で溢れていた。とは言え部屋の外に転移しちゃうと扉を開けないといけないわけで、それじゃ何のために姿を消してるのかわかったもんじゃないからね。部屋の空いているスペースへと転移する。

何が怖いって、静まりかえってる部屋に転移するならまだしも、慌ただしく人が動いている部屋だと、遠慮なくボクのいる場所を通りすぎようとされるから、人の波を縫うように避けなきゃいけないんだよ。普通に結構難しくて危なかったりする。


そうこうしていると、それぞれが色々な話とか準備も終わったみたいであらかじめ決まっているのであろう位置についていった。思っていたよりも狭い部屋に、思っていたよりも沢山の人。モンスターパレードの時に砦で顔を出した会議室みたいな広い円卓じゃなくて、コの字型に配置された座席に座っている人と、その後ろに立っている人が数人ずつ。

座っている人の後ろに立っている人達はその人たちの護衛なのだろう。綺麗な姿勢で、武器こそ持っていないものの煌びやかな服装というよりは装備を纏っている。直立不動で微動だにせず、男女共にに少し体つきがいい人が多い。


部屋の一番奥側には、前に温泉宿で見たおじさんが座っていた。ボクに勲章をくれた時とは、またちょっと違う格好をしている。


この国の王様。

その後ろには……リンクの姿があった。


そういえば、なんか付き合うって事になってしまってから、まともに話もしてもいないんだよね。うぅぅ……なんか考えるとちょっと恥ずかしいし、何も答えられていない事に申し訳なさも感じてしまう。そういえば親に紹介されるんだっけ……?

できればそんな時は一生来なくてもいいって、切に願ってみる。


王様のとなりにシルが座る。

シルの後ろにだけは、誰も立っていなかった。


「おや? シルヴィア嬢。今日はお連れはいらっしゃらないので?」


コの字型になっている座席の一番真ん中には王様が座っていて、そこから左右に座席が伸びている中でシルは一番王様に近い位置に座っている。王様から見て左側の席で、その向かい側である王様のすぐ右側に座っている身なりのいい男の人がシルに話しかけた。


シルの向かい側ってことは、この部屋の中で王様の次に上座ってことになる。シルと同じくらい偉い人ってことだよね。


「いますわ」

「ん?? いや、いらっしゃらないようだが……? あ、ああ遅れていらっしゃるのかな? 相変わらずラインハート家はお忙しいようで」


「……レティ。隠れてないで出てきなさい」


ふぇ?!

ボクが今日呼ばれたのって、シルの護衛だったの?!


「隠れる……とは?」


会場内が少しざわついた。

この部屋に隠れられるところなんてないからね。


リンクだけがキョロキョロと、見えないボクを探し始めているけど……。

目をあわせないように、シルの後ろに転移しクリアの魔法を解除します。シルの後ろってことは、つまりリンクの横ってことなんだけどね。


「こ、こんにちわ……」

「「なっ!?」」


リンクの向こう側に立っていた護衛っぽい人に即座に身構えられてしまうけど、さすがに攻撃まではされないらしい。まぁシルがそれっぽいことを言ってから出てきてるんだから、突然どっかから現れたとしても、少なくともラインハート家の護衛なんだってことくらい予測はつくってものだし、何よりボクと護衛さんの間には第一王子であるリンクがいるのだ。武器を持たずとも身構えること自体が問題行為だったことを一瞬で悟り、手を下げた。

まぁ警戒されて間違って攻撃されないように準備はしてあるからボクは問題ないんだけど、まかり間違って設置盾(アンカーシールド)で怪我をさせようものなら、ボクからしたら知らない人とは言え、王様と同じ列に座ってる人の護衛に怪我をさせちゃう事になってしまう。


突然呼ばれたからって、流石に空気位読めなきゃシルに迷惑かけちゃうもんね。


「ま…………また、駒を、揃えられたようで。もうこの国は貴女の手中にあるようなものですな……はは…………」

「駒? そう言ういい方は好きじゃないわ。仲間よ? メイスオーン伯爵、貴方にとっても、ね」


シルの眉間にわざとらしい皴が寄った。


「ぬ、ぬぅ……」

「おお、君はあの時の。元気にしていたかい?」

「あ、はい……」


うっ、リンクはこっち見ないで欲しい。


「今度うちに挨拶にくるそうじゃないか」


えぇ……。もう話、通ってるんだぁ……。えぇ……。


色々やってて有耶無耶になって、あわよくば無くなってればなー……なんて考えていたけど、そんな単純なわけないよねぇ……。王族がどうのって話だもんねぇ。


「はい……」


王様に言われたら否定できるわけないよ!!

リンクに連れて行かれそうになる分にはいくらでも拒否できると思ってたのに!


「叔父様」

「あ、ああ……すまない。それでは始めようか」


シルにちくっと窘められ、会議が始まった。


ボクが聞いてて良いのかわからないような国の予算報告とか、各地方の状況から決算報告まで。何がなんやらわからないボクとしては、緊張しかしないような地獄の時間が過ぎていく。


ボクがわからないせいなのかもしれないけど、よくこんな事延々と話していられるよね? ボクだったら、こんな体の凝る事よりも……外でクエストに出てた方がよっぽど楽しいけどな。


座っている貴族の人達が色々と議事に応答をしあっている中で、その一回り外側にずらっと並んでいる護衛の人達は首の一つも動かず、まるで石像かなんかじゃないかってくらいピクリとも動かずに立ったまま。リンクも同じように前を向いたまま動かないのが横目に見えると、視界がそこで止まってしまった。


真っすぐに前だけを見つめる美青年。

……あれ、なんか格好良く見えるんだけど。

これってやっぱ、ボクも意識してるってことなのかなぁ。


「それでは、次の議題へ移らせていただきますわ。……ルージュ。昨日の資料を」

「ここに」


……え?? ルージュ??

あ、あれ? そ、そんなところで何してるの……かな?


ねぇ……シルのサポートとか、いつの間にしてたの!?

き、昨日の資料って何!?

も、もしかして、シルに主人を変えたとか……?

うわぁ、ありえる……。


ええ……えぇぇ……。





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― 新着の感想 ―
[一言] メイスオーン伯爵、そりゃー国を手中に収めたとシルに言いたくなりますよね。 だって王様の護衛が気が付かないほどの隠蔽術を目の前で披露されたのだから・・・ つまりは本気を出せばいつでも首を取れる…
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