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ボクだってそこら辺の国のこと、気にはなってたんだよ?

「それで? ボクはどこにいって何をすればいいの?」


ボクの弱みを握られていいように使われるのは確かに気には食わないけど、とりあえず話を聞いてみない事には進まないよね。

一応ハルトさん自身は信の置ける人物だってヒュージさんも言ってたし、それが最悪ボクの身の周りの人に対して著しく不利益を齎してしまうのなら逃げちゃえばいいわけだし。それに、そんな話をこんな大層な軍の幹部さんが、わざわざボクに持ってくるとは思えないしね。


罰金だとかリンクの立場だとか、正直表に出してほしくないことではあるけど、実際そこまで大した弱みでもないわけなのよ。だって密入国を目撃されてるだけで、不利益を齎したなんていう確たる証拠があるわけでもないようだし、実際ボク、そんなことしてないもん。


「……カルセオラリアだ。カルセオラリアの首都を偵察してきて欲しい」

「首都?」


「そう。首都だ」

「……はい?」


思わず呆気に取られてしまった。


……うん。何を言ってるんだろうね? このおじさんは。

カルセオラリアって言えば、今まさにロトと戦争中の国。

しかも首都ってことは、相手の懐も懐。ど真ん中ってことですよ?

そんな所に今の時期潜り込むだなんて、見つかったらただじゃ済まないんだよ? 死にに行くようなものなんですけど……?


「え? いや……そんな危ない橋渡るくらいなら、違法入国者として適正に処罰された方が遥かにマシなんですけど?」


なんでそんな、わざわざまだ対岸の火事であるロトの戦争にボクが頭から首突っ込まなくちゃいけないのよ。

そりゃね? 確かにロトに万が一のことでもあれば、次はグルーネなわけだし、ロトの戦争状況によらず、グルーネの後ろには海と未開拓地しかなくて、もしもその後攻め入られてしまえば逃げ道もないんだから、グルーネはロトの支援を惜しむ事はできないんだよ?

でもそれって国家間がする話であって、ボクが個人的に協力するかしないかっていうのは話とは次元が違うわけじゃない。それこそ、シルに直接依頼してくれれば、シルがそれを必要なことかどうか判断してくれるわけだし、そうしてくれた方がありがたいどころか、そうすべき話じゃない?


「まぁ待て。何を言っているのか信じられないかもしれねぇが、今うちで掴んでいる情報では、カルセオラリアの首都“フローデン・ハーグ”には、ほとんど人がいないんだよ。既にうち(ロト)の密偵を何人も送り込んでいるから、そこまで危険も無ければそこで何かをする必要もない」

「はい?」


そもそもカルセオラリアに“人”がいない事をボクは知ってるわけだけど、それを隠して『人がいない』って言っているのか、それとも本当に“人気”自体がないのか……。


でも戦争真っ最中の、それも首都に人がいないだなんて……そんな事ありえるの? 首都が機能していないんじゃ国としての機能すらも保てないわけだし。それこそ戦争してる場合じゃないだろうし……。うぅん。ボクももっと詳しくルージュの報告を聞いておけばよかったかなぁ。


最悪なことに、ルージュの召喚は魔法なんだよねぇ。

手錠をはめられてる状況だと、ルージュを呼び戻すこともできない。

でも、こんな場面でこの人がボクに嘘をつくメリットもないんだよねぇ。


「“人”がいないって言うのは……?」

「……」


“それ”を知っていることに一瞬驚いたのか、ハルトさんが一瞬言葉を失う。

それに続いて、何かを納得したのか、うんうん、と首を縦に振った。


「さすがだな。だが言葉の通り。()()()()()()()()()()。もちろん、結果を問うこともしない。もしも戦況が変わりカルセオラリアへの入国が厳しそうなのであれば、そのままグルーネへ帰ってくれて構わんし、フローデン・ハーグへ行ってから、俺の言ったことが嘘で()が溢れていたのなら調査も何もせずに引き上げてきてくれて構わない」

「……そんな条件じゃ、ボクは何もせず帰っちゃうかもしれないし……そもそも、ボクはそこで何をすればいいの?」


これでボクが協力しなくていいとかなるんなら、ボクがこんな所まで仰々しく連れてこられた意味ってなんなのよ……。こんなにも犯罪者みたいに祀り上げられておいて、それはないんじゃないの……?


「それでいい。調査が少しでも進展してくれるなら構わんのさ。機密に触れすぎて話せない事も多いんだが、藁にも縋るって状況でな。お前が行ってさえくれりゃ状況も把握できるだろうし、そこでお前にしかできねぇことがあるんだけどな。……ま、なんにせよ、グルーネの天才姫がその程度も突破できんようなお粗末な諜報要員を使っているのなら、それはそれでこっちとしてはありがてぇんだが」

「むっ!! できないだなんて一言も言ってませんけど!?」


シルをだしに使われた挑発だっていうのはわかっているんだけど、ボクの事だけならまだしもこんな所でシルのことを悪くいわれるのは腹が立ってしまう。


本当にこの人って信用できる人なのかな?

ボクとしてはあまり信用していい人じゃない気がするんだよ……。




ロトとカルセオラリアは本の数kmに渡る一部だけ国境が面している。

ロトは北東にアマツ、真東にカルセオラリア、南東がフリージアと面している国で、北側は未開拓地。ロトは毎年大規模なモンスターパレードに晒されているくらいには、グルーネよりも北部の未開拓地接地面は広い。西側はグルーネ、南側はエリュトスと面しており、その3地方との接地面積が比較的大きいせいで他3国との国境はそれほど広くない。

何よりロトの南東側は山脈になっていて、カルセオラリアにせよフリージアにせよ、国境を越えるには山越えが必須なんだよね。

しかも岩山だから隠れられるような場所も少なくて、普通に関所以外の道は崖になっている。身を隠しながら敵国にもぐりこむのは、本来であればお互い結構難しい土地柄のはずなんだけど……。


それだけに、このおじさんが言っていることは気になったりもする。


「おじさんの言う事を真に受けるのであれば、ボクがそのなんとかハーグって所へ行ったとしても、何もしないのなら行く意味もないよね?……それとも、ボクが行く理由が何かあるの?」

「……ああ。もちろんだ。もし行ってもらえるのなら、お前の持っているそのマップスキルで、人が居る場所を探して欲しい。」


……マップスキルだっていうのもバレてるし。


「人?おじさんの送り込んだその密偵さんとやらでも捕まっちゃったのかな?」


さっき言われた言い方で言い返してやる。


「いや、うちのが捕まったのならそれを助ける必要はない。うちにそんな無能はいらんからな。」

「うわ、冷たー。」

「部下を信頼してる証と言ってほしいな。」

「なにそれ。で?人って?」

「そのまま人だよ、人。人がいるかどうかを確かめて欲しいんだ。」

「は?……首都でしょ?いないわけないじゃん……。」

「ああ……そうだといいんだけどな……。」

「……?」


一体ボクに何をしろっていうのよ……。



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