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他コミュニティってなんだろ?

投稿めっちゃ遅れました・・・。

無防備に突っ込んでくる黒くてボクよりも大きな狼。

交差するボクと大きな狼の視界の端で、ローレッジさんの「しまった!」と聞こえてきそうな顔が映る。


確かに防御力が高すぎるという点は厄介ではあるけれど、それはつまりあの狼側からしてみれば怪我をした経験すらもほとんど無いということ。しかも、今回の狼の群れはロト国内でも割と内側での討伐依頼だから、未開拓地からは遠く離れていて、もしモンスターの群れが未開拓地からここまで来ていたとしたら、何の報告もあがらず被害も出ないなんてことがあるはずもないんだよね。

ってことは、移動してきてたんじゃなければマナ溜まりから異常発生した魔獣群っていう可能性が一番高い訳だし、それなら未開拓地にいるような獰猛なモンスターや魔獣達との戦闘経験だってないんだから、そりゃ怪我なんてしようもないわけだったよね。


警戒とは戦闘において絶対的に必要な技能である。


あ~……まぁ……ね。

シュヴァルツ・クラウンウルフが、人並みの知性を以って、群れを率いてここまでこっそりときたっていうなら別だけど……。

そんな話は聞いたこともないし、そんなことをする意味は……


……無くはないんだけど。




「っはい!!」


シュヴァルツ・クラウンウルフは、視覚じゃない魔感が発達しているのは前に対面した時に実際自分の身体で体感したんだから知ってるわけで、ボクを見つけて飛び掛ってくる可能性が高い事はわかりきっていたことだ。

遠距離からの攻撃方法も持っているのに、何よりも強い自分の肉体を信頼して、欠片の疑いも持たず一番の強みを活かしてくるであろうことも。




あの頃に比べればボクも成長したんだよ?

いくらすごい素早いとは言え、来るとわかっている物にくらい対処のしようなんていくらでもあるんだよね。


《なにっ?!》


大きな黒い塊が突進してくるのを少し身をかわして避けると、すれ違い様に今まで持っていなかったはずの槍がクラウンウルフの横腹を掻っ捌いた。


「……へっ?!」


《うくっ…………な、なんだ? あの槍は……》


「おっ、狼がしゃべったぁ!?」


《っ!? まさか、我々の意思が読めるのか!!》


「うそっ、え? ボクの言ってることもわか……」


あっ……あれ? 悪魔の言語を聞き取る為に多種族コミュニティの言語を理解できるっていうスキルをとったせい?


……いやぁ、それにしたってスキル取ってから今まで、色んな場所でモンスターや魔獣と遭遇してきたはずだけど、会話が聞こえた事なんてなかったのに。……なかったよね? なんで今回だけ? 

……それとも、ウルフ種はシュヴァルツ・クラウンウルフまで進化すると言語的な意思を持つのかな? そう考えれば、最初に遭遇した時、ボクはまだ他種族コミュニティとの対話スキル持ってなかったからあり得る話ではあるけど……。


《ちっ》


シュヴァルツ・クラウンウルフが舌打ちのような声を発すると、今度はそれ以降会話のような物が聞きとれなくなってしまった。

ブラックウルフ達もワオワオ吠えたり、仲間を呼び寄せる為に遠吠えをしたりしているけど、それが意味のある会話のように聞こえてくる事は無い。


ぽたぽたと黒い毛皮から流れ落ちる血が、黒い狼がボクと一定の距離を保ちなら円状に歩いているのを教えてくれている。


「なぁに? これ、そんなに怖い?」


そう言ってわざと挑発するように槍を掲げて見せると、挑発だと気付いている狼が鼻に皺を寄せて牙を見せながら呻いていみせた。

やっぱりこの狼、人の言語を理解してるじゃん。





ブラックウルフ達の住処になっていたのであろう、この森の開けた場所はボクの次元牢獄で隔離されている。

中にいるローレッジさんや、外のヒュージさん達も隔離の意図には気づいてくれてたようで、さほど混乱は起きなかったようだ。起きた出来事と言えば、クラウンウルフがボクに標的を定めてきたこと。


ボクがクラウンウルフと対峙したことで、ローレッジさんがボクの張った防御魔法が破られたとき対処できるよう、一本しかない入口を警戒に入口へと移動している。実際ブラックウルフ程度なら、どれだけの質量に物を言われても壊れないだろうけど、そんなことをローレッジさんが知ってるわけないしね。

ボクとクラウンウルフがこうなってしまえば、そこからクラウンウルフを引きはがすのは難しいっていう判断なんだろうけど、この槍を使わないといけない状況でもし初見の人と共闘なんてことになったら、ボクにはちょっと高等過ぎて出来そうにないし、単純にその判断はありがたかったりもする。


チノンさんとパーティメンバーの2人の男の人は、お互いにリングウルフと拮抗して見せてくれている。……普通に考えれば、人間とリングウルフが近接戦闘で拮抗してるってすごい事だと思うんだけど、ボクも“腕くらい噛み千切られるかもしれないけど、リングウルフならいっか”みたいな顔で放置されながらクラウンウルフとタイマンやらされた記憶があるから、なんか腑に落ちないものがあったりもするんだよね。


とは言え、いち早く決着をつけられるのであれば、つけるべきなのは確か。


「じゃ、これあげるねっ!」


槍を逆手に持ち替え、シュヴァルツ・クラウンウルフ目がけって一直線に投げつける。槍スキルの強化のおかげか、相手の正中線上に真っ直ぐ。自分で思ってたよりも遥かにブレ無くまっすぐ飛んでいった。


そしてそれを見て目を広げ、驚いているクラウンウルフ。


驚いた仕草を見せた割に、ここぞとばかりに反撃速度を最大に速めるため、最小限の距離だけ身を屈ませると、黒い狼が今度は反対側の横腹の毛皮を傷つけながら避け、真っ直ぐこちらへ突進してきた。


《馬鹿がっ!!》

「は~い。残念でしたぁ」


黒い大きな狼の頭を頭上から突き刺した槍が、そのまま土に突き刺さる。慣性に流される黒い巨躯が、地面に突き刺さる頭に逆らい、仰け反るように折れ曲がりしな垂れ。

そのままピクリとも動くこともなくなった。


シュヴァルツ・クラウンウルフから静かに血が流れ落ちて地面を染め上げていく。


前に先生に教えてもらった戦法が、まさか獣相手に有効だなんて。


ギャンッ!!


まさかこんなにあっさり自分たちの群れの主が負けるだなんて思ってもいなかったんだろうリングウルフが、あまりのことに動きが止まってしまう。

チノンさん達が、そんな隙を逃すわけがない。


リングウルフ2匹と戦っていた形勢は一気に逆転し、ローレッジさんも道の封鎖をする必要がなくなり、加勢に動く。

ボクが参加するまでもなく、あっさりと2匹のリングウルフは討伐されてしまった。クラウンウルフとは違って、ダメージが通るならいくらでもやりようがあるみたい。


「よしっ! 気を抜くなよ!? 勝ったと思った瞬間が一番死に易いんだからな!!」


ローレッジさんが叫びながら、ちらっとこちらに視線を送ってきた。

どうやら張っている防御魔法を切って欲しいという意味のようだ。


外にいるブラックウルフに魔力の感知能力があるなら、何が起こったのか察したかもしれないけど、どうやらその様子はないようで、いまだに戦闘音が聞こえてくるあたり、外での戦闘は続いてるみたいだからね。こっちが終わったのであれば、こっちが援護に向かうってものだろう。


「チノン達とシロ子はここに待機しててくれ! クラウンとリングの死亡が確認できたら解体して欲しい」


そういうと、ローレッジさんが元来た道を引き返していく。

数秒もした後、戦闘音がひと際大きく聞こえてきた。


「ちょ、ちょっと。すごいわね、あれ……」

「いや、あれはすごいっつーか、やばい武器なんじゃねぇか……?」

「それを2本も? グルーネの貴族ってのは金持ってんのかねぇ」


チノンさん達が、頭から折れ曲がっているクラウンウルフと、目の前で傷だらけで死んでいるリングウルフを見比べている。

それぞれの死亡確認も終わったようで、一回り以上に大きなクラウンウルフを動かすよりは、リングウルフを集めて解体したほうが効率的だと踏んだのか、チノンさん達がボクの周りに集まってきていた。


「ね、後ろの人たち、助けにいかなくていいの?!」


ボク達の後ろでは、数百というブラックウルフの群れに、13人で戦っているクランの人達がいるはずなのだ。


「大丈夫よ。ブラックウルフに囲まれている程度で私たちが助けに入っていったら、折角の経験値の稼ぎ場を奪ってしまうってから。むしろ怒られてしまうわ」

「……経験値?」


まさか、スキル取得までの道のりを数値化できるのって、グリエンタール以外でもできるのかな? ……もし、ロトがそんな技術の開発に成功しているのなら、ロトが軍事国家として屈強な兵士を揃えられているの理由にもなりそうだけど。


「あ、ああ……。経験ね、経験」


なんだろ。ちょっと濁されてしまった気はするけど、それ以上聞いた所でどうしようもなさそうだね。ロトが、というよりは、ここのクランが、って感じなのかもしれないけど、ここの人達がボクに手札を見せたがらない様に、それぞれのクランにだって秘密はあるもんね。




ボクが槍スキルを、他の人達に比べて比較的簡単に取れたのは、紛れも無くグリエンタールさんのおかげ。


魔法に関してはステータス魔法っていう便利なものがあるのに対して、スキル関係って実は自分に何の才能があるかどうかがまず誰にもわからない。そこから一つのスキルのために人生賭けて鍛え上げるって時点で、ものすごい覚悟と努力が必要なんだよね。それが、最初から目標が数字になって現れてくれるだなんて、心理的にものすごい楽だからね。

なんていったって、数字で現れるってことはまず最初の関門でもある、自分がそのスキルを取れるだけの才能を持っているってことを証明してくれているようなものなんだよね。

それが判っているかどうかってだけでもすごく重要なのに、どれだけ頑張れば自分が次のステージにいけるかっていうのもわかるんだから。


例え自分に望む才能がなかったとしても、持っている才能を育てればいい。


それに、才能のあるなしに関しても単純に1と0と言うだけではないわけだし。

どれだけ努力しようが取れないスキルを才能値0とすると、かなり頑張れば取れるスキルが才能値1。そうともなれば、何の努力もせずに簡単に手に出来る才能値は10となり、自分に見合った成長が望める。これほど効率よく戦闘要員を育てられる指標っていうのはないだろうからね。


フラ先生が槍スキルの指標に関して驚いたり、データを取ろうとしたりしたのは、こういう理由のため。




ちなみに、ロトが軍事国家として成長し、名高い名声を獲得できているのは、スキル至上国家として個々人の戦闘力が確立されているからだ。

魔法とは違って、年齢によって体の中でマナを魔素に変換しづらくなっちゃうだなんてことが無い分、スキルという力は、誰にでも無限の可能性が広がっている。


もしも、そんな方法が確立しているのなら?

ロトが国としてそういう方法を使っているのであれば、シルあたりなんて把握してそうなんだけどなぁ……。



……帰ったら聞いてみよ。



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