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ともだち?

初めて主人公のフルネームがでてきます(笑

収穫期を終え、徴税が終わる頃。

ボクの住む山村には雪が降る。


そんなに家が潰れるほど積もるわけではないが、家自体の通気性がよすぎるため冬の季節はとても辛い。

母親のお腹も大きくなっており、冬が明ける頃には、弟か妹ができるみたいだ。




朝。目を覚ますと、父親が畑から帰ってきたところだった。


冬とはいえ、農家に休みはない。

冬に育てる作物は徴税される部分が少ないため、自分たちの主な収入となるのだ。


「お、レティごめんな、起こしちゃったか?」


そう言いながらボクを抱き上げてくれる。


「外はレティのように真っ白だぞ!」




ああ……。やっぱり、あれはボクなんだ。


ボクの前世は生まれつき、眼皮膚白皮病という病を患っていた。一般的にはアルビノと言われたほうが耳慣れている病気。別にアルビノだったから病気に弱いというわけではないのだが、遺伝子に何かしらの異常があったのか、ボクは人生のほとんどを無菌室で過ごすしかないほどの体だったのだ。


図書館で自分の姿を見たときにぞっとした。

母親の皮膚も白いが、それは白人特有な白さであり病的なものではない。

ボクほどでは、ない。


だからこの先また前世のように病気になるかどうかなんてわからない。

今まで生きてきて、特にそういう兆候もなかったから大丈夫だと思いたい。


でも、怖い。

そう思ってしまったのは確かだった。


また、両親に迷惑をかけてしまうのではないだろうか?

お荷物になるくらいなら、死んでしまったほうがどれほど楽か。そんな悩みを28年もずっと抱いてきたのだ。




初めてまじまじと見たボクの姿は、母親に似ているからだろうか。日本人であった頃よりは違和感はないが、色素がやはり無かった。

髪の毛は白銀で白というよりは透明のよう。瞳は多分父親の遺伝で茶色いんだろうけど、色素が極限まで抜けて、もはや薄いピンクだった。


まるでお人形のようだ。




もし、近い将来寝込んでしまったら?

もし病気になってしまって、前世のように治らないのだとしたら?


もしかしたら、ボクにはそれほど時間は残されていないのかもしれない。


そう思ったとき、今までせっかく新しい生を受けたのに漠然と生きてしまったことを深く後悔した。


3年も無駄にしてしまった。


……その半分は動けもしなかったとはいえ。




それからは、父親と一緒に港町へ行くときだけでなく、村の人が街へ行くごとに付いていかせてもらうことにした。

村にはボクと同じ世代の子供がいないので、可愛がられているほうだと思う。

外見が真っ白なお人形さんのようで、精神的にはもう30年も生きているのだから、多分実際の年よりは社交的だったんだと思う。まぁ、自分で言ってしまうのもなんだけど美少女だしね。

ボクが頼み込んで落ちないおじさんはいない。


週に2、3日は図書館へ通えるようになっていた。








春が来て、弟と妹が生まれた。


なんと双子だった。どうりで母親がとても重そうにしていたわけだ。二人分だもんね。

母子共に産後も元気で、一気に二人の弟妹ができたボクは一層やる気をだして図書館へ通った。……のだが、魔法学を独学で学んでいるなか、いざ魔法を使ってみよう! というところまで来て、最初の一歩に手が出せない。


どうやら、平民が魔法を使えないのは子供の頃に勉強ができないのはもちろんだが、この魔水晶とやらが手に入らないことも大きいらしい。

いわば魔法を使うための媒体で、魔道士の先生なんかが杖を持ちながら魔法を使うのは、杖の先に魔水晶をはめ込むことで、思うように魔水晶を振り回すためらしい。

別に触っている必要もないし、魔力が高い人であれば、遠くの水晶も起動できるみたいなんだけど。


まぁそんなことはどうでもいい。それよりも大問題だったのが、その魔水晶とやらは基本的に契約式で、魔水晶と自分の血を反応させることで練習の第一歩が始まるようなのだ。


魔水晶自体が手に入らない。まず魔水晶自体が高額すぎて、自分でどころか、うちが買えるような代物ではない。それでも子供のうちは魔力が少なく安定しないらしく、魔水晶の欠片で練習を始めればいいらしいんだけど……。欠片なんだから魔水晶の現物よりは安価だろうとはいえ、農家の3歳児に手がでるはずがない。ましてや子供が2人も一度に増えてしまって、目に見えて痩せてきた両親にねだれるはずもない。


図書館の中。よくよく周りを見回してみると、皆ビー玉程度の大きさから、掌よりも大きな水晶玉のような透明な鉱石を持っているのがわかる。どうしたことか……。と悩んでいると、1階と繋がっている階段から同じくらいの年の子が上がってきた。

執事とメイドが付いているので、どこかの貴族のお坊ちゃまだろう。


そもそも、この区画で勉強をしているような若者は、ほとんどが貴族位を持っていることなど自明の理。だって魔法の勉強をしてるんだもの。


もちろん学生くらいの年齢の子供なら今更珍しくもないが、ここで勉強している子供のうち、若くても精々10代半ば。それに比べればボクはまだ3歳児。貴族が魔法学の勉強を幼い頃からさせているとはいえ、図書館にまで来て学問書を読もうとするような、ボクと同じくらいの子供はなかなか珍しい。


正直、ここのお兄さんやお姉さん達に奇異の目で見られてることなんて自覚してるよ?

そりゃ、3歳の子が1人で学問書の並ぶ区画で難しい本なんて読んでたら自分の目を疑うよね。ボクだって疑う。


まぁ、それでも何も言われないのは、静かに大人しくしてる分には害にもならないからかな。




「ほら、じい! 僕と同じくらいの年の子もいるじゃないか! やっぱり兄様が魔法に興味がなさすぎるんだよ!!」

「ほ、ほんとにいらっしゃいましたなぁ……」


などと、なにやらボクを指して執事っぽい人と話をしている。ぼーっと様子を窺っていると、目があってしまった。

まずい。とてもいい笑顔でこちらに向かってくる。


「やあ、君……え? 綺麗……」


「……はい?」


え? 何? いきなり口説かれたの? 思わず貴族様に向かって「はい?」とか言ってしまった。タメ口なんか利いたらボクだけじゃなくて両親も弟妹たちも不幸にしてしまう。


「も、もうしわけございません。へんなこえを出してしまいました」

とりあえず謝ろう。


「えっっ! あっ……えっとご、ごめん、僕のほうこそ、おかしかったみたいだよ! 突然変なことを言ってしまってごめんね。えっと……僕はアレ……アレク! 君の名前は?」


「は、はい、レティーシアとも、もうします」

子供になってから敬語なんてはじめて使うよ……


「へぇ……レティーシア様ですか。よい名ですね」

「ちょっ、や、やめてください。きぞくさまに様なんてつけて呼ばれたらパパとママにおこられちゃいます……」


「え……? 君、家名は……?」

「? ……ボクの家は農家なので家名はないとおもいますが……?」


「……」

「……」


「じい、農家の子って今、皆こんなに勉強ができるの……?」

「い、いえぼっちゃま、私の知る限りでは図書館の書籍を読めるような平民の子はおりませんな……ましてや坊ちゃまと同じくらいの年の子では……そ、それに教育を受けたような……」


なにやらぶつぶつと独り言を呟きながら執事さんが物珍しそうな目で見つめてくる。


せっかくこの図書館の司書さんとも仲良くなり始めてたのに、ここにきてどこかの貴族様に目をつけられるとは……何もないといいのだけど。






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