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戦争前の静けさ?

「将軍。例の少女が見つかりました」

「ん? 例の少女? はて。なんだったか……?」


「はぁ? 将軍が女将さんとこでナンパしてた少女ですよ。例の妖精族だか精霊族だかを自称してた、痛いあの……」

「ああ! あの子か。見つかった? それは国内でか?」


「もちろんですよ。今の情勢で国外になんて意味の無い人員なんか割けません」

「ふむ……。して、どこに?」


「笑っちゃいますよ? どこに居たと思います?」


………………


…………


……




「おーい! ローレッジ。こっちだ! こっちぃ!」

「ああ、お前等そんなとこに居たのか」

「ちょっとローレッジ遅いじゃない。待ちくたびれちゃったわ」


「わりぃわりぃ……ん? その子はどうしたんだ? 拾ってきたのか?」

「あ、どうも……こんにちわ」


と、言う事でボクは今、冒険者ギルドにおります。

それも、王都の冒険者ギルドじゃないんだよ?

更に言えばグルーネの冒険者ギルドですらないんだよ!?

すごくない? すごいよね。ボク一人でこんな所まで来てるんだもん。

今思えば、よく一人で外国まで旅行なんてできるようになったものだよ。

ほんと、ほんの半年前までは村から出ることすらほとんどなくて、マーデン領を出ることなんてありえないような生活をしてたんだから。


……今回は旅行じゃないんだけど。




え? もったいぶらずにどこにいるのか早く言えって?

い、いいじゃん少しくらいさ……その……いい気になってみせたって。そ、そんな焦らせないでよ……。


まぁなんてことのない。ロトの冒険者ギルドにいるんですけどねっ!


今年のモンスターパレードの時に、エリュトスの偵察の為にとグルーネとの国境をこっそり越えてロトへ密入国した際に寄った村から、更に東へ進むと結構大きな都市があるんだよ。

それこそ土地面積の規模だけで言えばグルーネの首都よりも大きいんじゃないかな? ってくらいで、それでもここはロトの首都じゃないって言うんだから、ロトって国の規模が伺えるってものだよね……。




……え? いきなりそんなところ行って、どうしたんだって?

うんうん。そりゃそうだよね。

ことの始まりはこんな感じだったんだよ。




……



……



……



「おはようシル……あれ?」


先生と有色魔法を検証していた土曜日が終わり、疲れ果てたボクが寮へ戻ると、これまた疲れ果てたシルが先に寮に戻っていた。

お互い理由は違えどげっそりした表情に笑いあって、シャワーだけ浴びてさっさと寝ようってことになったわりに、次の日ボクが起きると、既にもうシルの姿は2段ベッドの下にはいなかった。


起きたのは朝の4時。

まだ日の光もさしてきていないような時間だったのに。


昨日寝たのは夜の8時前くらいだったかな?

ちょっとしたことだったのに、お互い疲れている話なんかしなくても、ちょっと笑い合って寝て起きたら、あんなに不安だったことがこんなに楽になるなんて。


感謝の気持ちで寝顔を覗こうとしたらもういないとか。シルはもしかしたら、そこまで長い時間眠れない体にでもなっちゃってるんじゃないでしょうかね? あんまり長時間シルが寝てるところって、実際見たことないんだよね。




さて、今日は……

……何をしよう?


有色魔法の検証は必要だけど、先生は忙しくていないし。ルージュ達と検証してもよかったんだけど、増えすぎた魔力量が一晩では回復しきっておらず、しかもルージュ達に直接検証を手伝ってもらうとなると、どうしてもルージュ達に供給される魔力の消費と、よくわかってもいない有色魔法の危険性でどんな事故が起きてしまうとも限らない。できるなら検証は先生が見ていてくれるうちで、もしもの時にルージュ達がボクを咄嗟に止められるように、影の中にいてくれる状況で行われることが望ましいのだ。


『今日は一日休暇でよろしいのではないでしょうか?』


なんて提案されてしまう。

最近じゃ確かに色んなこともあって、ほとんど休みという休みを取っていない。そこに突然あんな精神的なストレスを急激に受けたりもしちゃったしね。ルージュ達悪魔ちゃん3人にも近隣諸国を渡り歩きながら色々な事をお願いしちゃってたし、今日はルージュ達にもお休みと言う事で好きに行動してもらって、ボクも自由にすることにした。


もちろんルージュ達がその提案に反対する意思がボクの中で感じ取れたりもしたんだけど、ルージュ達がその意見を口にすることは無かった。

ボクがルージュ達の気持ちを感じ取れる以上に、きっとルージュ達はボクの気持ちがわかってしまうのだろう。




ま、ほら。例え悪魔ちゃん達が外に出ていたとしても、ボクの魔力回復量は常人以上の速度で回復していくわけだし、最大魔力量の桁が1つとか2つとかいうレベルじゃないくらい違うわけで、余程の事が無い限りずっと近くに居てもらう必要はないからね。

それに、もし万が一実際にそんな余程の事が起きたとしても、一瞬で呼び寄せられるんだから困る事なんてないんだし。


ルージュ、シエル、シトラスに『自由にしていいよ』って言ったら、そんな感じで案外すんなりと受け入れてくれて、どこかへさっさと行ってしまった。

……いやね? わかってるよ? ボクが良かれと思って言った事だし、3人だってボクに気を利かせてくれて素直に聞いてくれたのは別にいいんだけど……ね?

シエルとかシトラスとかからは、ボクと一緒にいたいなーなんていう言葉とか、出てくるのをね? ……ちょ、ちょっと位期待してたっていいじゃない?


……そんな自分の中に渦巻く理不尽な感情に少し寂しい気持ちも感じつつ、朝は一人で体を動かして時間を潰してから、王都の冒険者ギルドなんかへ行ってみる。

正直な話、少しすっきりしたとはいえ、こんな気持ちのまま何もせずに過ごしていたら、昨日のことが頭をよぎってしまって、押しつぶされそうになってしまう。とはいえ、ボクが一人で用事を見つけられるところなんて、ここしかないわけで……。



冒険者ギルドっていうのは、戦争情勢なんかがクエスト内容に色濃く反映されたりなんかするから、かなり最新で色んな情報が手に入る場所でもあるし、その依頼内容によっても個別に色んな情報が落ちてたりとか、はたまた今の状況の判断材料にできたりと、今も昔も、異世界であろうと情報収集の要の場所。


例えばこの掲示板に出ているように、あまりグルーネでは使用されないような、かなり高級品のポーションの買取がものすごく出ていて、それに使うような素材の買取や、直接的な錬金依頼がここ数日の間にかなり高騰している。

これは、魔法による治癒よりもポーションみたいな物質的な治癒が主体であるロトが輸入量を増やしているからだろうって事は容易に想像がつくし、このレベルのポーションをかき集めているとなると、もうすぐ衝突するであろうロトvsフリージア・カルセオラリア同盟軍の被害予想が相当な規模の物になる予定なんだってことが予想できたりもする。更にはグルーネで募集されている登録冒険者用のクエストが、朝で冒険者ギルドが開いた瞬間来たのにも関わらず全く張りに出されなかったり。


……あ。張りに出されたと思ったら、直にいくつかのパーティが確認して出て行ったから……。この依頼が消えるのもすぐなんだろうね……。


っていうのも、基本ロトの……とくに東部で活動していた低位の冒険者が、グルーネへ仕事を求めて流れてきているのだ。まぁロトの東側は戦争準備が進んで立ち入れない区域が増えてきていたりと、もうかなり危険な感じになっているらしいし、しょうがないんだけど。


ロトの場合はね。グルーネとは違って兵役義務があったりで冒険者であろうが戦力となる人たちは既に戦時徴兵されていたりもするし、冒険者ではない国民にだって同じような義務があったりだとか、ロトの冒険者ギルドも普段と同じような活動とはならないわけなのよ。




そんなグルーネではあまり見かけないパーティが、机を囲んで話していた会話に耳を傾ける。どうやらロトの冒険者ギルドでは西に行けば行くほど登録冒険者用のクエストが枯れているらしい。

そこで日銭を稼ぎにってグルーネまで出向いてきているわけで、王都がグルーネのど真ん中にあるっていっても、ここから西にはそこまで大きな都市が無いことを考えれば、王都までロトの冒険者がクエストを求めて流れてきているこの状況は最終地点となる。“登録冒険者”っていう特殊な冒険者さん達とは言え、ここまでクエストを求める人が溢れているっていうのは異様なものだと思う。


グルーネで活動している登録冒険者が、ロトから流れてきた登録冒険者に仕事の結果を先回りされ、掴みかかる喧嘩にすら発展していることもしばしば。


実際、貼りに出される冒険者ギルドのクエスト分布っていうのは、やっぱり登録冒険者向けの物が一番多かったりするんだよね。

そりゃさ、上級の力が必要となればなるほどクランやパーティ単位での指名でクエストを依頼することが多くなるし、クエストを依頼して待っていたとしても一向に達成されないことだってあるのだから、結果を持ってきてくれるんなら誰であろうと構わないって依頼者だっているわけだし。依頼難度によってはもちろん登録冒険者を含めることはできなくなるものはあるけど、わざわざ低い難易度のクエストを、信用性だけで一般冒険者以上に限るような依頼はほとんどありえないのだ。


もちろん冒険者ギルドの職員さんだって仕事してるんだから、貼ってあるクエストを優先的にこなせる能力のある冒険者さんに斡旋したりはしてるんだよ。冒険者ギルドからしたら、大量の依頼が積み重なっていったら自分たちの首を絞めるだけでいいことはないんだから、できる人がさっさとやってくれるに越したことはないわけだし。


でも、そういうことを任せられるような一般冒険者や上級冒険者って、総数がそもそも少ないし、任せられる仕事の種類だってそれぞれ得手不得手があったりする場合が多かったりするわけで。クライアントの要望全てに答えられるってわけじゃ、ないんだよね。




そして、そんなタイミングでボクがこんな所に顔を出したのが格好の的だったんだろう……。冒険者ギルドの職員さんに拉致されるのに、そんなに時間を要さないのでした……。





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