すかびおさまじっく。
【有色魔法 松虫草を開放しますか?】
【消費ポイント100pt】
「……ほんとにぃ? 本当にこれいくの……?」
大体嫌な予感した時って、いい方向に期待を裏切られた事がないんだよねぇ。
うぅぅ……。
「だぁ~から。取ってみて使いたくねぇなら使わなきゃいいって話だろ? もしかしたら使えるもんかもしれねぇだろうがよ」
「それはそうなんだけど、ポイントがさぁ……」
むしろそんなのより、よっぽど平和の象徴みたいな向日葵とか、綺麗なお花の杜若とかさ。そういうの取った方が絶対安泰なんだけどなぁ。
【有色魔法 松虫草を開放しました】
【種:エースオブスペード】を獲得しました。
残りポイントは318ポイント。
こっから桜と同じなのであれば、レベル10までの10ポイントとパレット保存の50ポイントで60ポイント使うから、残りは258ポイントってことだね。
あれだけいくらでも取れそうだったポイントが、この数時間でもう既に半分にまで減っちゃったよ……。
松虫草魔法
Lv1・
Lv3・
Lv5・
Lv7・
Lv9・
Lv10・
Lv-
今度は桜魔法の時とは取得レベルの数が違う。
Lv-はパレット関係だから一緒だとして、まぁ普通に取得するまでに必要なポイント数は変わらないんだから、Lv10まで取得しちゃえばいいだけなんだけど。
Lv1・味覚
……ん? 味覚? どういうことだろ。
Lv3・嗅覚
あ。これ人間の五感ってやつだ。
ってことは後は3つのはず……だよね?
Lv5・視覚
それに、これが取れていく順番って、意味あるのかな?
Lv7・聴覚
じゃ、Lv9は多分……
Lv9・触覚
ですよね?
じゃあ残りの1つは?
Lv10・魔覚
あ。なるほど。これは多分、ルージュ曰く“見放された世界”ではない、“見守られている世界”にのみ存在する感覚なのかもしれない。つまり、マナの溢れる世界でのみ覚醒される感覚。言われてみれば昔っからボク自身だってマナや魔力の流れを感じる事ができているわけだし、こういう感覚があるって言われてみれば確かにあるんだよね。
【Lv-・松虫草色の調合を完了します。】
【消費ポイント50pt】
はいっと。
【取得しました。パレットに保存されます】
うんうん。
ここまでは桜魔法となんら変わりはなかったかな。
ってことは、ボクが知らないだけで松虫草っていう草花が有名だったっていう説の方が正しいのかもしれない。マツムシなら知ってるんだよ? 有名なお歌に出てくるもんね。この世界にいるかどうかは……あ、多分いるわ。
さて……と。あとは効果なんだけど。
これは桜魔法なんかよりすごい分かりやすいかもしれない。
五感、じゃなくて六感か。
これって人間の機能の部分だもんね。強化魔法……みたいなものかなぁ?
ってことは、分かりやすいのはやっぱり視か……
『主さっ!!』
『『ダメッ!!』』
突然視界が真っ暗になった。
両腕が後ろに回され、羽交い絞めのような状態にされているのに気付いたのは、意識が飛んでからすぐに戻ってこれたからだろうか。
「……」
ゆっくりと視界が開けていくと、先生のびっくりした顔が視界に映りこんできた。
開けていく視界の先に掌が見える。
どうやらルージュの手が、ボクの視界を塞いだらしい。
羽交い絞めにされた両腕が解かれると、腰に抱き着いているシエルとシトラスが見える。……視界が何故か少しボーっとする。
「な、なんだ? どうしたんだ? 突然……。」
『も、申し訳ございません。主様。命に関わりそうでしたので、強硬手段を取ってしまいました。でしゃばった真似を致しました。お許しください』
そういいながら一歩下がるルージュが、会釈しながら消えていく。
「え……? え? もしかしてボク、またやらかした?」
わけもわからないまま、ただ鼓動だけが強く脈打つ。
自分のステータスを確認してみるけど、魔力は回復中のまま。また桜魔法の時のように魔力切れを起こしたのなら、0になっているかそれとも魔力を使いすぎる兆候があったのなら減っているはずだけど、その気配も今回は無いようだ。
「あ、あれ? 魔力は減ってないけど……。」
「お、お前、その目、どうしたんだ?」
「……え?」
先生に言われて目尻に残っていた違和感を手でふき取る。
絵の具のような朱の血が擦れて手の甲を彩った。
「え? 何これ」
口にはしてみたものの、この赤が何の赤かなんてすぐにわかってしまう。
「い、今ご主人様の目が、破裂したの」
「ルージュ様が復元してくれたんです」
腰に抱きついたままのシトラスとシエルが、上目遣いで説明してくれる。
よく見たらなんか目が潤んでて可愛いんだけど、心配させてしまったボクがそんな事この場で言えるわけもなく……。なんだか申し訳ない気持ちだけがこみ上げて来た。
そ、そういえば原初の魔法ってそういう魔法だったね。
簡単に試したりしちゃいけない魔法。
桜魔法でもやってしまった失敗を、又やる所だったってことか……。あ、いや。やる所だったっていうかやっちゃったんだけど。も、申し訳ございません。ご迷惑をおかけいたしました……。
「んで? 結局どうなったんだよ?」
先生に松虫草魔法の内容も伝えないまま、どういう効果かな? なんて思考を巡らせてしまったせいで、魔法が誤発動してしまい、今に至るわけで。先生が何がなんだかわからないって顔をしておりまして。ご説明させていただきます。
「アホか」
感想に一言、そういただきました。
ご尤もです……。
「で、でもシトラス達も、よくわかったね? 原初の魔法の効果って、ルージュですらほとんど知らなかったって事は2人も知らないんでしょ?」
「はい、知りませんです」
「もちろんなの! でも、わたし達、ご主人様の魔力変換の工程位なら感じ取れるからそれで……」
「明らかに意図しない規模の自滅魔法が確認されたので……」
「ルージュ様と慌てて止めにきたの」
「……そ、そっかぁ。ありがとね」
じ、自滅魔法……?
「いえ。扱いが難しいので、結果そうなってしまわれただけかと」
いつの間にかシエルとシトラスが消え、隣にルージュが立っていた。
なんか瞬き一瞬の内に周りに居る人がころころ変わると、映画のワンシーンみたいに見えるんだよね……。
「そ、そうなの?」
「ええ。魔力の変換工程から推察するに、おそらく松虫草魔法とは……」
自分の目が一瞬にして潰れる魔法とか……。
どう考えても懸念通りの魔法にしかなりそうにないんですけどねっ!!




