取り扱い注意。本当は怖い魔法の使用。
そういえば白亜輪廻転生物語っていうゲームは、シリーズのナンバリング最後の最後で、それもクリア後のトゥルールートのさらに裏ルートまで行くと、実はそれぞれのシリーズの主人公が全員同じ人物の転生した人物だったっていう設定が明かされるんだっけ。
これが分かるまでに、結局続いたナンバリングタイトルのセーブデータを引き継いで、その最後である10を何週もプレイしてトゥルーエンドまでたどり着き、更に裏ルートまでやりこまないといけないとかいう鬼畜仕様だったわけだけど。……もしもそれをなぞっているのだとすれば、ボクはその一人であるって事になるらしい。
確かに魔法とかのある世界が舞台になっていたけど、どちらかと言えば純粋な恋愛シミュレーションゲームで、前世の世界観に似通っていた気がする。ここまで魔法が生活の基盤とかになっていたわけじゃなかったし、この世界はどちらかと言えばグリエンタールの世界そのままだ。
まぁ、結局のところゲームに落とし込むとしたら、そこまで世界観が違いすぎちゃえば恋愛シミュレーションの肝である感情移入っていう部分が出来なくなっちゃうわけだし、しょうがないのかもしれないけどね。
「原初の魔法……などと申しましても、現在皆様がご利用になられているマナを体内に取り込んで魔力へ変換し、魔水晶のエネルギーとして魔法を発動する、いわゆるこの世界で定義されている“魔法”という物とは異なります。ですが、魔力を消費するといった性質から、同じ魔法と定義した方がわかりやすいと言う事で、ハクア様は魔法だと定義付けられておりましたが。そしてこれを【原初の魔法】と呼んでおられました」
「原初の魔法……ねぇ。具体的には何が違ぇんだ?」
「魔力を体内で直接魔法に変換します」
「ん……? それって何か変わるの?」
「そう……ですね。全く違うものとなるのですが……申し訳ございません。我々共精霊種は、逆に現代の人間種が用いている魔法構築方法を把握しておりませんが故、なんと説明したらわかりやすいのか……」
「あーそうか。……いいわ、あたしが説明してやるか」
そう言ってルージュとアイコンタクトを取った先生が、説明をしてくれた。
先生の、まぁ要はこういうことだろ?っていう雰囲気の元に始まった確認と言う名の説明は、大まかに言えば合っていたようで。ルージュも大した修正をする事も無く先生の講義が続いていく。
白い部屋でぬくぬくのお布団の中。
とてもダルめな倦怠感を持ちながらのそんな講義は、どうやらまぶたに重力魔法を掛けてくるらしい。
要約すると、こういうことでしょってね。
魔素を体内で魔力に変換できるのに、その魔力を魔法に変換する際、ボク達現代魔法士は魔水晶に魔力を送り込まなくてはならない。
正直この事に何の疑問も感じていなかったし、そういうものなんだと思っていたのはボクだけじゃないどころか、この世界の常識だと思う。魔水晶は魔力を魔法に変換する変換器みたいな役割なんだとずっと思ってたからね。
でも、魔水晶が魔力の変換器だとすると、とある力の理屈が合わなくなる。
それがスキルだ。
ボクの持っている槍スキルなんていう武器種のスキルひとつ取ってみたってそうなんだけど、そのスキルを取った瞬間に肉体強度が劇的に強化されるのって、普通に考えてみればよくわからないどころかあり得ない事だし、もっとわかりやすくおかしいスキルという物がいくつか存在するんだよね。
まさしくボクの“転移”然り、ヴィンフリーデさんの“英雄武装”然り。
そして、先生がよく使ってる魔装技なるスキルだって、魔力を用いてスキルの性能を高められるんだから、魔力との融和性が高い事を証明しているスキルでもある。
これってまさに魔法に分類されるはずなんだけど、あくまでスキルなんだから魔水晶に魔力を流したりとかせずに発動してるんだよね。
魔法とスキルの違いはやっぱり、魔力を消費するのかしないのかっていう所なんだけど、これだけ魔法に近しい結果を残せるスキルと言うものに、何のエネルギー的代償も支払わずに扱えるっていうのは、よくよく考えてみればおかしなことなんだよね……。
まぁ厳密に言えばスキルと原初の魔法は全然違うから、スキルのお話は今度ね。
でね? じゃあ魔水晶って結局なんなの? って話なんだけど。
昔ボクがとある魔宝珠を手にした時に、ルージュ達に聞いた事があるんだよね。
「ルージュ達は魔水晶は使えないの?」って。
そしたらシエル達が……
「ぼく達には内包されている魔水晶があって、そちらに魔力が流れちゃうから使えない」
って答えた事があるんだよ。
いつだっけな。
そうだ。フルスト領に出来たダンジョンを攻略した時だったかもしれない。
つまりどういう事なのかと言うと……。
魔水晶は精霊や魔物の核なのだ。
元々魔水晶という物体は、精霊や魔物がマナを制御する体の器官であって、今の時代のように人が魔水晶を使って魔法を行使するっていう事は6000年前には無かったんだって。
あったとしても、それは精霊と契約していた人間が、精霊を介して魔法を作り出す。まさに今の先生が一番正しい姿って感じなのかもしれない。
じゃあ魔水晶を人間がこうやって扱うことに、精霊さん達はどう思っているのかと言われると、別になんとも思っていないらしい。
別に魔水晶自体は体の一部である器官の一つだし、精霊だけが持ち合わせているものでもなく魔物ですら持っているものであり、魔水晶が自然界やマナ溜まりを介して生成されたとしても、そこに必ず精霊が生まれるわけでもなければ、どちらかと言うと魔物や魔獣が生み出される事が多いわけで。それに、そもそも魔水晶で魔法を制御するように最初に人間に提案したのは精霊側らしいのだ。それまで人類には、今ほど魔法は普及していなかったんだそうな。
ただ、こうやって人間が当たり前のように魔法を使える時代を向かえて行くにつれ、人類は制御装置である魔水晶を介してでしか魔法を使えなくなって行ったらしい。
別にいいじゃん。って思うよね?
そう、別にいいんだよ。
魔法がこうやって世界のために役立つように、皆が皆使えるわけじゃないにせよ、ある程度の環境さえ整えば多少は誰でも使えるようになるって事は全く悪い事じゃないし、そもそもこの原初の魔法ってやつは扱いが難しすぎるんだよ。
だってさっき発動したボクの意図しない魔法なんか、ボクの魔力量とルージュ達がいなければ確実に魔力を消費しすぎて死んじゃってたもん。
こんな危険な魔法なんかより、今みたいに魔水晶を使って制御した方がはるかに安全だし理にかなっていると思うんだよ。
じゃあ、原初の魔法と今の魔水晶を介在して使用するいわゆる通常の魔法。
この2つの違いっていうのはなんなのかって言うとね?
唯一性と出力の違い
……らしい。
出力って言うのは結構イメージしやすいよね。
例えば魔法を覚えたての子が、水を出す魔法を誤って発動したとする。
こういうシーンって、どこかのファンタジー小説とかにもあるじゃない? 最初に魔法に触れるような場面で、間違って魔法を使っちゃうなんてこと。
でも、その時に起こる事故って大概大したこと無いんだよね。
精々ちょろちょろと水が出るか、ボクみたいな転生モノであってすらも精々家が壊れる程度の魔法が発動するだけ。
それって何故かと言うと、“魔力を自力で捻出しながら、魔法物質に変換し続けなければいけないから”なんだよ。
もちろん違う世界には違う世界の理っていうのがあるんだろうけど、基本こういう制限はどこも変わらないらしい。
うん? 何言ってるかわからないって?
う~ん……。あくまでイメージの話なんだけどね?
魔力を魔法に変換する際、魔水晶っていう蛇口を通さなきゃいけないとなると、出てくる水の量って限られるでしょ?
つまり、閉まった蛇口を開けるには、ハンドルを回さなきゃいけないし、いくらハンドルを回し続けても、蛇口の大きさが変わらない限りは最大で出る水の量っていうのは、どこかで止まるわけ。この水の流れがそのまま魔力の流れで、自分で魔力を流していくっていうイメージになるんだけど。
この原初の魔法っていうのは、ガスみたいなものなんだそうだ。一度火を近づければ、たちまち全てを燃やし尽くすかのごとく引火するように。
魔力を流して変換しながら使うっていうイメージが無い分、自分の描いたイメージがそのまま魔力を急激に変換して、どんな馬鹿でかい魔法でも一瞬の内に使う事ができちゃうってわけ。
もちろんガスの引火は体内の魔力だけには留まらず、空気中のマナすらをも巻き込んで魔法が精製されていってしまう。そのせいで自分の魔力以上の魔法が発動し、結果人間の体は限界を向かえ……。
ぼかん。
ってなるらしい。
最近仕事の関係でアップが予約できておりませんので、少し遅れ気味になっております。
その日の内にアップはしますので、よろしくお願いします。




