さくらまじっく。
エラーでアップ出来てなかった・・・うそぉ。
【有色魔法 桜を開放しますか?】
【消費ポイント100pt】
はい。っと……。
残り474ポイント。反転とか魔力吸収が今のところ条件不足で取得できないからわからないけど、これから取得していくスキルはレベル上げるのに必要なポイントが増えたりとかしないよね? だいじょ……あ。な、何も考えてないからね? く、口に出してないからセーフだよね……?
桜魔法
Lv1・
Lv4・
Lv7・
Lv10・
Lv-
ん? Lv10の次によくわからないLv-っていう表示がある。
今まで発展するスキルでもこんな表記なかったのに。
……うっ。
さっき変なこと考えたから、10の次ができたとか言わないよね?
グリエンタールさん……。
桜魔法ってことは、これってつまりスキルじゃなくて、どちらかと言えば固有魔法みたいなものって事になるのかな? 固有魔法としてそれぞれ取得できた”クリア”とか”インターセプト”の時とは違って、固有魔法そのものがスキルのレベルを上げることで開放されるわけじゃなくて、開放された固有魔法の能力を追加していく仕様になっているらしい。
つまりLv10までに4つの欄があるってことだから、レベルを上げることにより固有魔法に内在している4つの技能を開放するっていうことになるのかな? う~ん。魔法なのに技能の開放って、なんか言葉的におかしい気がしなくもないんだけど。
ま、いっか。
桜魔法
Lv1・桜吹雪
ひらっ。
……んん?
「あ? なんだそりゃ? お前」
「え?」
視界の端っこにピンク色の花びらが舞い落ちるのを感じ視線を動かすと、見事に桜の花びらが1枚だけ舞っている。……なんて言うか……ここ、室内だよ?
秒速5センチメートルって映画がさ、前世であって。
好きで見てたんだけど、この秒速5センチメートルっていうのは桜の花びらが舞い落ちる速度の事なんだって。まさしくそんな速度でひらひらと舞い落ちていく。
……あ。風も吹いてないのに舞い上がってきた。
そういえばこっちの世界では桜の木そのものを見かけたことって、一度も無いんだよね。確か桜って、前世でもあまり世界中にあるようなイメージのない花だったし、今生じゃボクの活動範囲だってまだまだ狭すぎるってだけで、どっかにはあるのかな。
こっちの世界も前世の世界と同じような環境で、四季がちゃんとあるし気候もそこまで変わりがないんだから、ここまで環境が近ければもしかしたら名前が違うのかもしれないけど、ボクの言う桜って種類の木が、この世界の、それもグルーネの国内にあったところでおかしい話ではないんだけど。
ひらひら。
何を命令するわけでも、気にする必要もなく勝手にボクの周りを1枚の花びらがずっと舞い落ちては舞い上がってくる。
……普通に気になるんだけど。
こっちの世界ってさ。魔道学って言う、前世にはありえない学問があったりはするけど、科学の発展の差でボク達みたいな平民階級の暮らしの快適さは、段違いに水準は低い。でも、マナがあって科学による汚染が無いおかげで、環境汚染に関しては全くと言って良いほど無い。この世界の環境は、前世とは比べ物にならない程良いのだ。桜って樹木は、種族としてそこまで弱い木じゃないんだから、もしあるのだとすれば絶滅してるって可能性は低いんじゃないかとは思うんだよね。
視界の端っこで、舞い落ちていった桜の花びらがひらひらとまた舞い上がってくる。
風一つないこの部屋で、自由に桜の花びらが踊るように舞う。
ボクの周りをひらひらとただ舞い落ちているわけじゃなくて、ボクの周りをひらひらと風に流されるように舞っている感じみたいだ。上下左右に動きながらくるくると回る。
ひょい。
ひら。
……ひょい。
ひら。
……触ろうとすると避けられる。
こ、こいつ。ボクの魔法のクセに避けやがるんですけど。
このっ。
イラッ!
「っ!! なんか桜の有色魔法っていうのをLv1だけ取った瞬間に出てきたんだけど……っ!?」
全然つかめないんですけど!
なんなのよこれ!
「ああ? コントロールできてねぇのか?」
「……っ! ……っふん!! ……はぁ……はぁ……。う、う~ん。なんか掴もうとしても避けられるし周りずっとひらひらしてて気になるし……なんなんだろ、これ!」
「魔力の消費はどうだ? 魔法なのか?」
「あ、う~んと……あれ?」
魔力値も魔力回復量にも変動がない。
本当にただ桜の花びらが舞っているだけのようだ。
それってどんな魔法なのよ。単なるエフェクト効果? ……どこぞの課金ゲームかよ。人の好感度100以上使っておいて、そんなのないよね……? いや、ゲームの世界だからありえる……の? え? ま、まさかそんな魔法じゃないよね??
「なんも変化ない……かな?」
「ん~……じゃあとりあえず置いといて次のレベル取るしかねぇな」
「はぁ! もうそうしよ」
捕まんないし!
Lv4・千本桜
千本? そうかいてある割に、花びらは今の所1枚だけで変わりは無い。
まぁそもそもこれで言う千本の桜は木の事を指す訳で、花びらの数で数えたら千どころの話になんてならない訳なんですけど。
「千本桜? だって。花びら1枚しかないのにね」
まぁそれを言うなら花びら1枚で桜吹雪も何もないんだけど。
「その花びらが桜って種類の花? なんだろうな」
「あ、うん。それはそうだよ?」
「あ? お前知ってんのかよ」
「うん。それは間違いなんだけど……」
ハート型で薄いピンク色の花びら。
だってこの花びらは、ボクが28年もの間見つめてきた窓の外にあった唯一の世界を彩っていた花なんだから。見間違えるはずがないんだよ。
単純に先生に草花の知識がないのか、この世界に桜という木がないのかはわからない。いやぁ……先生に草花の知識とかあるとは思えないか。トップクランの冒険者なんだから薬草とか食べられるものとかには詳しそうだけど、桜みたいな観賞用に興味があるとは思えないし。
どちらにせよ、どうやら先生の知識の中にはこの桜という木は存在しないらしい。この世界にはないのかなぁ。そうだとしたらそれはそれで残念なんだけど。
「千本桜ってくらいなんだから、その花びらを千枚に増やせるってことなんじゃねぇか?」
「え? あ~……」
先生がそんな事を口走った瞬間だった。
「ぶっ!?」
「わっ!?」
部屋中が突然ピンク一色に包まれる。
それと同時に、突然とてつもない虚脱感が襲ってきた。
『主様! すぐに魔法をおきりください!』
少し焦ったルージュの声が頭の中に響く。
こんなルージュの声を聞いたのは始めてかもしれない。
魔法なのだとすれば、魔力の供給を経てばいい……。
あれ? 待って? ボク魔結晶に魔力なんか流して……ないよ?
『なるほど。有色の魔法とはどうやら原初の魔法の事のようですね』
ど、どういうこと……?
そういえばボクには、もう一人色々相談できる先生がこんな近くにいたじゃありませんか。




