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ボクだって怒るときは怒ります。

「……」

「……一応、おめでとうと言っておきますわ」


「う~……あんましおめでたくないのでいいです」

「そう……なんでしょうね。レティはこのポジションに収まりたいなんてこれっぽっちも思ってなかったでしょうから。それでも、(わたくし)達が長年夢見てきた場所だもの。そういわざるを得ないのよ……。だってそうでないと浮かばれないでしょう? 今までどれだけの方がそこを目指していたのかを知っているもの」


リンクとの話を終え食堂にたどり着くと、わざわざ席を確保して待っていてくれたイリー達がいた。皆微妙そうな顔をしているのが、なんとなく怖くて辛い。


「半年前までは平民の子でしかなかった貴女が? 僅か半年で騎士の位を授かり、更には第一王子の隣を射止める? ……ほんと、人生楽しそうでいいわね」

「……」


え、えっとね……。

ち、ちなみにこれはね? 本心からの嫌味で言われてるんじゃないんだよ?

……その、はずだよ……ね?


イリーはね? この友達グループの代表として、これくらいの事を言わなきゃいけないんだよね? わかってるよ? ……ね? そうだよね?


人生が思い通りにいかないことなんて、嫌と言うほど知ってるよ。

何一つ思い通りになんていかなかった時を28年間も過ごしてきたんだから。


だからってわけじゃないけど……

今のボクの人生がすごい楽しいことだってすごくわかってる。


ボクが今通ってる道が、誰かのたどり着きたかった道なのかもしれないし、ボクがこれから進む先が、誰かの夢見てる場所なのかもしれない。


それでも、その場所へたどり着けるのはボク一人だけじゃないはずだし、何よりたどり着いた先が楽しいことばかりなわけでもない。それに、その過程だって楽しかったはずなんだから。


「……うん。ボク今、人生楽しいよ」

「……よかったわね」


「それにね? 皆といることだって、ボクにとってはすごい楽しい人生の一つなんだよ? ……皆にとっても、ボクが楽しい一つになってくれたら嬉しいんだけどな」

「……はーぁ。貴女がもっと嫌な人間なら、嫌いにもなれたのだけれど」


あーあ。

こういう風に言わされちゃうと、さっきのボクのリンクへの態度とか。

無しになっちゃうんだよなぁ……。


皆のやりたい事ができて、皆がいたかった場所にいる。

そこに感謝しないなんて皆を裏切るような行為、できないもんね。


「なら、わかってるわよね?」

「え~……。でも最後まで行くかどうかは別の問題だからね?」


「貴女、ある意味すごいわよね。爵位や騎士位なんて、本当に関係なさそうですし。王子と婚約して解消できるだなんて思っていることもね」


「だって、人生楽しくないとね?」

「……そうでしたわね」


ふんってわざとらしく言われながら、先に食べ終わったイリー達が席を後にしていく。同じ席にいたキーファや他の皆も、どうしたらいいのかわからない顔でボクとイリーを見比べながらイリーの後について行った。

イリーとは違い、皆のように祝福の言葉みたいなのが出てこないのは、きっと少なからず()()()()気持ちが皆の中にあったからだろうね。友達を含めた皆が皆、認めてくれたわけじゃないだろうけど、どうやらボクの身近な人は少なからず断固反対だって声を張る人はいないようだ。


「このまま結婚ってことになれば、イリーアさんとレティちゃん、親戚になるんだね」

「……え?」


えぇ~……。

なんか生涯にかけてお小言とか言われちゃいそうで怖いんですけど!?

イリーはお友達として好きだけど、ほら。真面目すぎるのがね? ボクと正反対と言いますか。一緒に生活とかしたら彼女が禿げちゃうかもしれないじゃない。それは可哀想だから止めて欲しい。止めて欲しいといってもイリーとアレクは結婚しそうだしな。う~ん。ボクとリンクはそこまで行くのだろうか? ……わからないや。




次の日


「やぁ先生。ごきげんよう」

「お、きたか。随分幸せそうで何よりだな。書類はちゃんと提出したのか?」

「……まだだよ」


土曜日の午前。

一応自由履修日にはしているけど、特殊魔法課の講義を受ければまだ3単位も貰えるんだから、今の所土曜日に特殊魔法課の講義以外を履修したことはないんだよね。

先生もそれをわかっててくれるので、土曜日は冒険者やクランの仕事が無ければ基本的にあけてくれている。土曜の午後は講義もないし、次の日が休みなこともあって遠征にも出かけやすいしね。


「ねぇ先生?」

「なんだ?」


「一昨日の話、なんかその日中に学園中に知れ渡ってたんだよね。何でだと思う……?」

「知らんなぁ。誰か口の軽い奴でもいたんじゃねーか?」


「ふぅん……。口が軽いならさ……。ちょっと手荒な事でもすれば簡単に口を割ってくれるのかなぁ……? ……きっと……割ってくれるよね……?」

「……っま、まて。ドス黒い魔力垂れ流しながら近寄ってくるな。ま、待て。わかった。あたしが悪かったって……」


「認めるんだ……?」

「いや、実際にやったのはあたしじゃねぇんだけど……」


そういいながら先生がちらっと隣の研究室に続くドアに視線を向ける。

どうやらイオネちゃん情報通り、実際広めたのは奴等か……。


そりゃね!? 昨日のうちに問い詰めたかったんだよ!?

でも金曜は先生学園に出勤してないんだもん。


「ちょっと先生、待っててね……」


そういいながらドアへ影を落としながら歩いていくボクの姿は、もし鏡なんかで見ちゃったらどうだろう。亡霊にでも見えるんじゃないだろうか……。


「おいおい、程ほどにしておけよ……?」

「先生は後でなんだからね……」


「ちっ」




がちゃり……。



………………



…………



……





その後、先輩達を見た者は誰も……

いなくなったりはしてないけどね。


……うふふ。()()()()()()しながら問い詰めたら、どんな事でもするからって約束をしてもらえたからね。その場にいた先輩全員に。なんでだろうね? 皆さんとても協力的でした。……ふふ。どんな事でもしてくれるんだよね? 一回きりだなんて……ボク言ってないからね? せーんぱい。


ちなみにその場にいなかった先輩には、わざわざ一人の所を気配を消して後ろに転移して脅かしながら約束してもらったり、夢枕に立ちながらいい夢を見させてあげたりなんかしたりして。結局先輩16人全員にいいお話をいただけることとなりました。



「あーあ……。あいつらが可哀想だろ? どうせすぐにバレんだからよぉ。先にバレちまった方が楽だぞ?」

「バレるのとバラされるのは違うんだよ?」


「一応国の一大ニュースなんだ。暗いニュースが続いちまったこのご時世。そんなニュースくらいくれてやれよ。……まぁ逆に落ち込む奴等もいるだろうがな。あいつあれでモテてたしな」

「……むぅ!!! 正論すぎて反論しづらいんだよっ!!」


「ま、お前もお前なんだがな」

「……?」


「そうだ。これ見てみろよ。一応やることはやったし、今のうちにグリエンタールの能力開発でもしといた方がいいだろ?そのプラン考えといてやったぞ」


そういいながら何枚かの紙に、綺麗に纏められた計画表を渡された。

先生、普段は結構ガサツなくせに、こういうのはすごい几帳面で綺麗なんだよね。


……う~ん。こういうの出されちゃうと、ボクの復讐の矛先をどこにもって行けばいいのか、わからなくなっちゃうんだよ……。





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