表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
369/515

もうどうにでもなれって感じ。

「あっ。レティちゃんっ!! おめでと……ぅ?」


特殊魔法課の講義が1日受けられるのは木曜日。これは前期だろうが後期だろうが変わらないので、次の日と言えば金曜日になるんだよ。


金曜日の午前は大抵、特に何も予定が無ければ次元魔法課の講義を受けてるんだけど、毎朝イオネちゃんと待ち合わせてから一緒に通って次元魔法課の講義を受けているの。

特殊魔法課で出してもらった特別単位取得制度のおかげで、イオネちゃんとは講義進度が大分違うから同じ講義内容を受けるとまでは行かないんだけど、講義の開始位置は同じ部屋だからね。そこくらい一緒に行きたいでしょ?


ボクとイオネちゃんが住んでいる学生寮は、それはまぁかなり綺麗な建物で、どんなに頑張って贔屓目に見たとしてもボクの実家よりは確実に良い建物。というか村全体で見たって、ここまで綺麗で立派な建物はないってくらいにはね。まぁ平民の建物と、貴族しか通わない学園の建物を比べるのがどうなの? って話ではあるかもしれないんだけど。

とっても頑丈そうに作ってあるような建物で、入居希望順に部屋が割り振られていたのかボクの部屋は入口である玄関から結構すぐのところにある。


玄関から入ると広めのロビーになっていて、そこから廊下が突き出ているすぐ先に部屋がありまして……。101号室がボクとシルのお部屋なんだよ。

建物の構造としては、そのまま廊下の左右にお部屋が続いて、突き当たりまで行くとT字路になっており、そのT字路の向こう側にもお部屋が並んでいるって言う配置。

ボクの部屋がある廊下の左右に4部屋ずつの8部屋と、T字路側の部屋が6部屋で1階毎に14部屋の学生寮があるっていう計算だね。結構大きいでしょ?


ロビーから廊下へ抜ける手前には2階に上がる階段もあって、計3階建て。2階と3階もほぼ1階と同じつくりになっているんだけど、上階にはロビーに出入り口がない分各階のロビーの作りだけが多少異なっている。今年はシルが寮に入居したことがあってものすごい1年生の入寮者が多く、ほぼ満室になるくらい入居者はいるんだけど、そのほとんどが1年生で占めている。例年通りだとここまで寮の部屋が埋まる事はないんだって。そりゃ皆王都にはお屋敷を持ってるんだから、わざわざ寮に入る必要なんてないもんね。


で、イオネちゃんの住んでいるお部屋が、1階のT字路になった丁度突き当りにあるお部屋。だからロビーでイオネちゃんが出てくるのを待っていると、扉が開いた瞬間からすぐにわかるんだけど、ボクと目が合った瞬間。イオネちゃんが満面の笑みを浮かべて廊下を走ってきた。

廊下は走っちゃいけないんだよ? イオネちゃん。でもボクは自分も走ることがありそうなので注意はしません。


イオネちゃんの語尾が疑問系になっていたのは、ボクの顔が浮かない顔をしていたからだろうけど。


「や、やっぱり成り行きだったの?」

「……」


なんというか、シルもイオネちゃんもこの学園に入ってからの付き合いなんだよ? だけど、2人ともボクの性格とか行動把握しすぎで……。

嬉しいよ!? 嬉しいけども!! なんか自分がすっごく単純なのかもしれないって考えると、すっごく悲しくなるんですけど!?


「う、うん……。っていうかその話、昨日の夕方くらいの話なんだよ? なんでシルも夜、部屋に帰ってくる前に知ってて、イオネちゃんまで知ってるの……? 広まる速さが噂とかいうレベルじゃなくない……?」

「それだけ大ニュースだったってことだよ!」


「因みにイオネちゃんは、誰にこの話聞いたの?」

「うん? う~んと……あ、そうそう。ティグロ先輩に聞いたよ! なんか大ニュースだー! って騒いでたから、結構ノリノリで広めてたかも……」


「あ~……」

「あはは……」


なるほど……。そういえばあの場に、そういうのを嬉々として即効で広めそうな人いたなぁ……。ニヤニヤしながら見てたなぁ……。それなら納得できちゃうわぁ……。


……今度会ったら文句だけ言ってやろ。




学園に行けば、知らない人からもひそひそ話をされながら遠目に見られるわ、そればかりかわざわざ見学にまで来る人達すらいる始末。前回の騒動の比じゃないあたり、あの時はちゃんとリンクが火消しに回ってくれてたんだと実感するんだよ……。


まぁきっとすぐに収まるだろうし、気にしないことにはしたけども。

こちとら見世物じゃないんだっつの!

散れ散れ。しっしっ。


「あはは……た、大変だね。一晩で人気者になっちゃって……」


講義の終わり。そんなボクをずっとみていたイオネちゃんと合流する。


この学園の難しさ……って言っていいのかわからないけど、すごく重要な所は、殆どの講義をお友達と一緒に受ける事が出来ないって所だと思うんだよね。

もちろんボクとイオネちゃんは違う科目の特待生なんだから、その最たる例ではあるんだろうけど、そうでなかったとしても友達と同じ講義を同じ速度で進めるっていうのは物理的に難しいと思う。出来ても1コマとか2コマ程度なんじゃないかなぁ。


ともすれば講義で受けた内容は、自分一人で消化しきれなければ遅れていってしまうわけで。例え先生の数が多いとは言え、マンツーマンって程じゃないのだから、講義内容に置いていかれちゃうと、自主錬や自主勉強で頑張るか、その講義を選択するっていう選択肢を捨てるしか無くなっちゃうって訳だ。


そんな学園にきていない生徒なんて、課外授業で出払っているような一部の人達のみ。

噂が広まるのなんて1日もあれば十分なわけですね……。


言いふらしてる奴等もいるみたいだしなっ!!!


「あっ……」


イオネちゃんと一緒に、食堂向かいながら話をしていると、突然イオネちゃんが何かに気付いて立ち止まった。そろそろとその場から離れようとしていく。


「? ……どうしたの? ……あ」


その視線の先には、噂の中心人物が。


「よう」

「……こんにちわ」


「……なんだよ? 今度は謝らねぇぞ? いいんだよな?」

「……」


自分で答えてしまったことだし……。

こんなに噂にもなってれば今更後に引けもしない。


「ボ、ボクはこれからイオネちゃんとお昼に行くので! じゃあね?」

「あ? ちょっと待てって。ほら、これを渡しに来ただけだ」



「ん? ……ああ。昨日の」


そういえばこの書類、最後の所だけ記入してないまま逃げちゃったんだった。


「ありがとう、じゃ。また」

「いや、待てっての」


「な、なんでしょうか?」

「あからさまに避けんな。フラ姉に見られてた時点で、1日経てばもう王都中に広まってるくらい想定の範囲内だっての」


「はぁ? ボクは全然想定の範囲外なんですけど……?」

「まぁどうせ知られちまったんだからいいだろ。……んで、知られたのなら流石に報告しなきゃいけないんだよ。」


ほ、報告……?

うわぁ……。想像はつくけどわかりたくない……。


「だ、誰にでしょうか?」

「親にだよ」


……ですよねぇ。

リンクの親って言ったら……。


この国の王様なんだよなぁ……。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ