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言われてみればおかしなとこ、放置したままでした。

「あ~……じゃあ今日の特殊魔法課の授業時間使って王城に登録にでも行っておくか? 爵位か騎士位を賜ったら自分で一度登録に足を運んでおかないと、正式に認可されねぇからな」

「え~……」


え~……ぶっちゃけ、めんどくさい……。

だって、ねぇ? それで義務とかできちゃったら嫌じゃない? 戦争の事後処理で皆忙しそうにしてるの見てて、すごい大変そうだったし。ボクにああいう書類仕事しろなんて仕事回されても、できるわけないもん。何も知らないのに。むしろ今までちゃんとやってた人達に迷惑だってかけちゃわないわけだしさ! ……ね? ど、どっちにしろ身分証明は上級冒険者証で間に合うんだよ? 行く必要……無くない?


「どうせめんどくせぇとか思ってんだろ?」

「……だってぇ。折角の特殊魔法課の講義時間なら、増えたスキルポイントの使い道とか考えた方が有意義なんだもん……。わざわざそんな、ねぇ……?」


「義務が発生すんのが嫌なんだろ?」

「……」


うっわぁ。全部ばれてら……。

なんか最近誰に対しても何にも隠し事ができなくなってきてる気がするんですけど! 先生だって賢王の血は引いてても、シル程見透かしてくる感じではなかったはずなのにっ。


「安心しろ。自分から国の軍部にでも足突っ込んでかない限り、こないだのモンスターパレード一連級位に相当な事でも起きない限りはお前に義務なんかどうせ発生しねぇから。むしろ何もせずとも貴族特権は保証されるんだぞ。あるだけマシ程度に思っておけ」

「そうなの?」


どっちにしたってこないだのモンスターパレード級の出来事になれば、国が滅ぶか滅ばないかの一大事なわけだし。そうなってくれば義務とか責任なんて話以前に、ボクはこの国の事は大好きなんだから、力になりたいとは当然思うわけだろうし。


「ああ。その代わり、国から支給される階級手当も雀の涙程度だぞ?」

「え? そんなの自分で稼げばいいよ。」


「……まぁ、お前ならそうだろうな。」


むしろ雀の涙程度は貰えるの?

貰えるんだったらありがたいくらいなんだけど?


「ち、ちなみに貴族特権ってどんなのがあるの?」

「お前にとって有益なのは、そうだな……冒険者クランの設立は貴族じゃないとできねぇし、どうしたって身分の証明ってのは信用の差でもあるしな。取引なんかじゃ冒険者証なんかよりも確実に有益だろうな。上級冒険者証も身分証明にはなるが、あくまで冒険者としての身分証だ。信用の証明にはならん。その点、貴族ってのは国から身分が証明されてるからな、相当の信用は得られる。いつか商業ギルドなんかにでも寄ることがあれば、その違いは歴然だろうよ」


あら……?

それならボク、夏休みに雑貨店の経営をする事になったんだけど、もしかしてその取引とかにも有利に働くってことじゃない?

むむむ。あって損がないなら、そりゃあったほうがいいよねぇ。


「じゃ、じゃあ行ってみようかなぁ……」

「じゃあ行っておくか。能力の開発もそこまで急ぐ事じゃねぇしな」


一人で王城になんて行ったところで、何処に行って何していいのかなんて全然わからないんだし、実際先生から提案してくれるのであれば終わらせておくに越した事はないんだよね。

まぁ最悪シルやリンクにでも聞いていけば一人でだって出来るのかもしれないけど、先生だって公爵令嬢様らしいし。わざわざ付いてきてくれるっていうなら、お願いした方が確実なのは確か。……あと、こういうときにボクが一人で行動する時は絶対いいことがない。さすがにボクだって今まで一人で行動した瞬間に、フラグという名のパッシブスキルが発動して酷い目にあってきたんだから。経験は生かさないとね。


「う、うん……。あれ? そういえば王城って、その日に行って入城とかってできるものなの? なんかこう……事前手続きみたいなのをしなくてもいいのかな?」

「王城っつったって謁見しに居城の方に行くわけじゃねぇぞ?こういう手続きってのは居城じゃない別塔にある事務関連の受付所でやるんだよ。基本平日の日中なら誰でも出入り可能だ。それこそ、身分を証明できてこそ、だがな」

「ふぅん……」


なら、冒険者証ができたことも無意味じゃなかったってことかな? あ。先生が一緒にいくなら別に要らなかったのか。


「それにしたって黒十字型の魔結晶なんていつの間に手に入れたんだ? 色付きってことは魔結晶だろうが魔宝石だろうが特殊スキル持ちだろ?」

「あ、色が付いてるってそういう事なんだ? 夏休みにダンジョン行ってね? う~んと……でーもんくろいつおーく?? だっけかな。っていう種類のオーク倒したらでてきたんだけど……」

「あ? デーモン種のオーク……だと?」


今まで普通に会話していた先生の眉に急に皺が寄った。

な、なんかまずい事言ったかな?


「う、うん。シトラスがそんな名前だって言ってたような……」

「ちっ、あの悪魔かよ。なら間違いなさそうだな……。ちなみにどこのダンジョンだ?」


あれ。やっぱり先生、ボクの契約悪魔ちゃん達の名前も把握してるみたい。

シトラスとシエルなんてルージュとの契約後で、戦場で先生と一緒にいる時には顔合わせしていないはずなんだけど……。どっかで会ったのかなぁ?


「フルスト領に出来てた新しいダンジョンだよ?」

「あん? ……フルスト領にデーモン種のオークがいる新しいダンジョンだと……? ギルドにそんな報告はあがってなかったはずだがな。……それ、本当なんだろうな?」


「そりゃ、ボクが実際行って来たわけだし……」


んんん?

なんか先生の雰囲気がさっきまでと全然違くなってしまった。

そんなに真剣に考える事なのかな??


あれ? そう言えばあのダンジョンって、結局どうしたんだっけ。確かボクは領主様に直接依頼されただけだからフルスト領の冒険者ギルドとか通してないし、報告だって直接領主様にしただけ。しかも詳細は領主様お抱えの冒険者だって言ってたロックさん達にお任せしちゃったから……もしかして、冒険者ギルドに情報流れてないのかな。


だとしたらどうしてだろう?

お抱えの冒険者っていうのは、冒険者ギルドを通さなかったりするんだろうか?


「う~ん。大変だったんだよ? 死者だって少なくない人数で30人くらい出ちゃったし、新しいダンジョンだって言う割には出てくるモンスターの質も高くて。そのでーもんなんとかオークだって1層目にいたんだから。しかも結構先が長いみたいだったし」

「……そりゃおかしすぎるな。ちなみにこないだ連れて行ったロカスエロと比較すると、モンスターの難度はどれくらいだ?」


「う~~~ん。正直ごえもんなんとかオークとか言うの以外はそこまで大した事無かったけど……そうだなぁ。ロカスエロで言えばダンジョンに沸いてくる通常モンスターは大体10層くらいの強さだったかなぁ。入口にいたのは本当に弱いのだったんだけど、そのすぐ後に待ち構えてたのは、多分30層くらいの敵で……。その一番奥にいたごえもんなんちゃら? だけは100層でボクがタイマンした、あのデカブツよりは強そうだったかなぁ。一瞬で殺しちゃったからわからないけど」


あれ。言ってて気付いたけど、それって確かにおかしいね。だって新ダンジョンの1層でロカスエロの30層程度って危険度高すぎでしょ。大体ごえもんなんちゃら1匹を取ってみても、1層にあんな強いモンスターがいるってこと自体、考えてみれば確かにおかしいかも。


「それ、どこら辺だ?」


先生が研究室の棚から地図を広げて取り出した。

フルスト領のはずれ、山脈の中腹辺りを指差す。


「大体ここら辺かな?」


移動した方向へと、地図へ指を滑らせて移動していく。その位置は、エリュトスの国境になっている大渓谷から海を挟んで対岸にあたる位置になっていた。


あ~またかぁ……。うわぁ。なんだかなぁ。

なんか嫌な予感しかしなくなってきたよ……。




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