学園祭の準備は、全部一旦片付けさせられちゃいました・・・。
第3幕へと移りますので、短編集で行ったりきたりしていた時系列は学園祭直後へ戻ってまいりました!
-第3幕 開幕
「ねねっ! 君君!! レティーシアちゃんでしょ? 魔道球技部って興味ない?!」
「はぁ!? ちょっとあんたっ! この子はうちの霊能研究会が勧誘するんだから! 黙ってどっかいってなさいよ!!」
「はぁ? 研究会如きがでしゃばってくんなよ」
「あ゙あ? 兵科の運動部活総会如きに魔法才能の無駄使いはもったないっつってんの」
「なぁなぁ。魔法陣開発部なんだけどさ……」
「「お前は黙っとけ!!」」
学園祭が戦時警戒のせいで一時中断されてしまったとは言え、戦争が起こるのはこの前みたいに国内って訳でもなく、今度は国外なんだよね。
ともすれば学園の講義はある程度普通に行われていて、生徒も一部の人達を除いて皆ちゃんと出席しているみたい。かく言うボクも、特段する事もないので学園に登校してきたら、まさかの朝からこの状況に……。あ、ちなみに一部の人って言っても、シルですらちゃんと学園に来てる位だからね? 実際ちょっと学園を休んでいる人達は、どちらかというと商い系の領や爵位を持ってたりだとか、そういう商売関係を主な事業にしている爵位持ちのご家庭の人達が多いみたい。ラインハート領だってそうなんだけど、ラインハート領の商売関係は現ご当主が仕切ってるんだから、わざわざシルが学園休んでまで領地へ戻るなんてことにはならなかったわけだ。
さすがに一番忙しいこの時期に子供を遊ばせている余裕が無いってご家庭に限られるから、実際学園に戦争準備でこれないだなんて人達は、本当に数えられる程度しかいないみたいなんだけど。戦争準備の為に色んな鍛冶屋さん回って、武器防具の調達から材料の発注やら採掘量やらを調整したりだとか、どういった種類の武器防具に魔道具までをどれだけ用意するのに、そもそもどれくらいの材料が必要なのかで情報収集に外国各地を回ったりだとか。そもそもグルーネだけで消費するわけでもなく、友好国であるロトで求められれば卸す分だって確保してなんぼな世界。そういう人達が今大忙しって感じなんだよ。
だからボク達の生活はあんまり変わらなかったかと言えば、そうでもなくて……ボク達の周囲の環境は、ものすごくがらっと変わった。
1年生で全兵種解禁トーナメントの単騎・団体2冠。魔法種禁止部門も2回戦以上に進出。特に今年は競技会が中止になった分、武道トーナメントの結果が際立って目立ってしまったものだから、今までシルが一緒にいてくれたことで抑えられていたボクへの興味が、一気に爆発する形となってしまいまったわけで……。部活だの研究会だの個人的なお誘いだのなんだの……勧誘が引っ切り無しにやってきております……。しかもボクだけじゃなくって、全兵種解禁トーナメント後半で割と使用されたイオネちゃんの新アイテムなんかも一躍有名になったりして、ボクとイオネちゃんが一日中囲まれるハメになってしまったり。いやね? 正直皆必死なのはわかるんだけど、怖すぎるんだよ……? 周りのお友達にも迷惑なので正直やめて欲しいんだけど、勧誘に来るのがほとんど先輩なのもあって強くお断りしにくいのです。はい。
「あ、あの、えっと……ボ、ボク別に~部活動とかに興味は~無いっていうかぁ……その、そんな事してる余裕もないっていうかぁ……あはは……」
「おとといきやがれ!」
「あんだとこのアマァ!」
「……。」
勧誘対象のはずのボクはそっちのけで喧嘩が始まったりなんて日常茶飯事。
その間にボクは、その場をこそこそと抜け出してきたり。
「貴女も人気者で大変ね」
こそこそ抜け出して次の講義がある部屋に入ると、待ち合わせしていた人物から声がかけられた。この世界では珍しい、艶のある黒い長髪に黒い瞳。無駄に主張しすぎる大きなお胸に女の私ですら目が行っちゃうくらいだから、男の人だったら話す時大変よね。女って意外と、相手の視線がどこ向いてるか見えるんだからね? ボクですらわかるんだから。
「えぇ~……。そう思うなら助けてよぉ……」
「部活動の勧誘は節度を越えない限りは基本自由なのよ。それこそ生徒会である私が貴女を助けてしまったら、自由であるはずの決まり事がおかしなことになってしまうでしょう?」
つまりは自業自得でしょ? ってシルの顔にありありと書いてあるんですけど!!
そりゃ、後先考えずに色々やらかしたのは認めるけどさ……。
「因みにですけどレティ。部活動に参加すれば貴女がやりたいって言っていた、今年は見送りになってしまっている競技会の方にも参加しやすくなるのよ? 今の貴女なら引く手数多でしょうし、もし戦時警戒が解かれるような事があれば学園祭も再開するかもしれないわ。まぁ……今年の参加登録は終わってしまっているけれど、来年には参加しやすいのではなくて?」
「うっ、た、確かに……」
競技会。
武道会よりも団体競技寄りで、武力だけがすべてではなくなる分、求められるスキルや魔法が幅広くなる。ゲーム性があってすっごく楽しそうなんだよね。でも今年は人脈がないせいで参加を諦めるしかなんかったんだけど、確かに部活動みたいなのに入れば人脈っていう事で考えればできるかもしれない。
そういわれちゃうとちょっと考えちゃうけど、ボクとしては今の冒険者活動だって楽しい。部活動みたいなのやっちゃったら自由にそういうのもできなくなっちゃうよね?
「あっ! そうだ! 冒険者部みたいなのないの?」
「ぼうけんしゃぶ?」
「冒険者活動する部活動みたいな!」
「無いわよ」
「えぇ!? なんで?!」
「部活で冒険者パーティなんて組むような冒険者志望の子がいないからよ。冒険者志望でこの学園に来ている子達は、自分の能力にあった講義を受けて自分の魅力である才能をアピールしながら、自分に足りない人材を集めているんだもの。部活動やクラブ活動で臨時的にパーティを組んだとすると、本来やりたかったパーティ活動に支障をきたしてしまうことも多いでしょうし、何より冒険者活動は講義で受ける分には郊外活動であっても、遊びじゃないのよ。依頼主はなけなしのお金を預けているわけだし、相手がモンスターともなれば本気で殺しにかかってくるのよ? 生徒だけの判断で命を掛けるような危険な部活動に学園の許可が下りるわけないでしょう」
「うっ。確かにそういわれちゃうとそうかもしれないけど……」
冒険者ギルドに張り出されているクエストってのは遊びじゃない。
依頼を出している方はお金を出しているんだから、お仕事としてプロ意識が求められるわけだし、確かに簡単な依頼だってあるにはあるんだけど、簡単なものを受けている意識でクエストをこなそうとすれば足元を掬われて命を落としてもおかしくないお仕事。……まぁボクとして身を以ってそれも体験しているわけだしね……。
そりゃ部活動をしている本人達は真剣で、遊び半分じゃないって思っている人だって沢山いるとは思うけど、どこまでいっても覚悟は部活動の延長線上にはなってしまうし、もしもその中に一人でも遊び半分な意識を持った人を抱えて危険なクエストなんかに出てしまったら? 目も当てられない結果になったっておかしくないなんて結果を招きかねない。
更にそういう結果っていうのは、もちろん依頼者にフィードバックされるわけで。自分の出した依頼で子供が死んでしまいました。なんていう報告を受けたら依頼を出した方はどう思うだろうか。迷惑だと思う人だっているだろう。責任を感じてしまう人だって出てきてしまうかもしれない。しかも、簡単な依頼で起きた事故であればあるほど、この学園に通っている生徒の『質』に問題が出てきてしまう。
『貴族の子供達が、平民の出した依頼の内容に差異が見られたせいで事故で亡くなってしまいました』
……こんなの揉める未来しか見えないしね。学園側だって評判が落ちるのが目に見えてるんだから、そりゃそんなもの許可なんか出してくれないわけで。だからこそ郊外活動には、きちんと専門の講師が付き添ってくれるわけだ。それも上級クランで活躍しているような冒険者であったりとかね。
「でもどうして? 貴女もうお金にはそこまで困っていないはずよね?」
「あ、うん。お金を稼ぐためにっていうよりは、皆に追いつきたいっていうのが今は強いかな。武道会トーナメントだって、正直設置盾とか次元牢獄に頼りっきりで……。それが無ければボク、本当は何にも出来ないんだなってわかっちゃったし。モンスターパレードの時だって勲章たくさん貰えたのも、ヴィンフリーデさんとかティオナさんの事見て一緒にいられだけで、運がよかっただけだったのかもって」
「……あのねぇレティ、それは設定している成果が学園に入学したての子に見合っていないわよ? ヴィンフリーデやティオナは一応この国最強の一角と言っても過言じゃないのだけれど。まぁ正直、貴女の才能が2人を凌駕しているかもしれないって言うのは……認めるところですし、勲章で言えば二人は高級軍人、あなたは募集一般兵。同じ成果なら国は後者を称えないといけないのよ」
次元魔法を封じられれば黙ってみているしかないボク。かといって個人戦闘になれば次元魔法に頼るしかない。次元魔法に守られてばかりで、状況に応じた判断力とか、それに見合った行動や魔法を扱えないっていう自分の課題が見えただけでも、武道会トーナメントに参加した事はすっごいよかったと思えるんだよ。
……まぁフラ先生に武道会が終わった後でそう言われて、初めて自分でも気付けただけなんだけどね。先生曰く、自信っていうのは簡単に積み上げて行けば行くほど、崩れちゃった時に全部無くなってしまうんだって。だから屋台骨がしっかりしていないと意味が無いって。
『武道会トーナメントに優勝した事は事実として実力を認めてやるが、それは揺らぐ事のない自信の一つとして持ち、そこにどれだけ自信だけを積み上げることを良しとせず、成果と自信を組み上げていけるかが今後、成長していく糧になるんだぞ』
って言われて、なんとなくだけどしっくりきちゃったの。
だって本当のことだもんね。
ボク自身だって自分でびっくりしてるくらいだもん。
半年前の自分に比べて、今のボクなんて絶対想像できなかったのにね。
それでも驕ることなく、結果を見つめて邁進できるように頑張るって、一人じゃ本当に難しいと思う。ボクが転生っていう物語で貰った一番の”ギフト”っていうは……。
きっと、この環境を用意してもらった事なんじゃないかな。
いるかどうかわかんないけど。
神様。
ありがとね。
お願い!
いつも応援ありがとうございます。
3幕へ戻ってきて、またいつも通りの進行に戻りますが、是非ともこのタイミングで【ブックマーク】と【評価】を押していただけたら幸いです!
なろう小説はポイント制をとっておりまして、ポイントがつくのがその2つなのです。
ポイントがつく→ランキングに繁栄される→まだ見ぬ人達の目に付く
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→作者のモチベーションがあがるっ!
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と言う循環が生まれますw
実際本当だと思いますので!是非ともよろしくお願いします。




