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契約悪魔は、主人の命に忠実に動きます。

途中まで3人称視点です。

途中から1人称視点での進行に戻ります。

「……はぁ?戦争の後始末をうちが?」

「あ……あぁ。すまない。人手がどうしても足りなくてな。」




王都 冒険者ギルド グルーネ本部


ロビーには溢れかえるように人の渦ができあがっている。

臨時で掲げられた掲示板には無数の色が違うクエストが張り出されており、今までも設置されていた5つの掲示板には、もう何枚重なっているのかわからないくらいのクエストがびっしりと貼られていた。


それでも冒険者達はそんな溢れかえったクエストには目もくれず、臨時掲示板から色違いのクエストをはがして確認していくのだ。クエストを受領し、出て行った矢先に違う冒険者がまたギルドへ訪れる。


基本的な掲示板へのクエスト添付の現状は、本来そのクエストが有効かどうかを確認する為の物だが、臨時掲示板に張り出されている色違いのクエストはその限りではない。それぞれの色でクエスト内容の方向性が示唆されており、自分達の能力に合わせたクエストの受領を求められる。その代わり、1つの依頼は1つの受注者が請け負うこととなり、競争が発生しない。

つまり、色つきクエストは多重進行されない代わり、実績や最低限のランク制限が掛けられるのだ。ちなみに単なる登録冒険者では色つきクエストを受領する事はまず出来ない。


王都の冒険者ギルドは4階建て構造になっていて、1階はロビーや受付があり、扉を1枚挟んで隣には直営の防具屋さんや武器屋さんと繋がっている。ロビーの中には少し前にトラブルのあったテーブルや椅子なんかがいくつか置いてある場所も相変わらず設置されていて、冒険者のパーティらしき人達がテーブルをぐるっと囲んでなにやら話し込んでいるのが見受けられた。それぞれの前に飲み物が置いてあるのは、受付の横にあるカウンターから簡単な飲み物や食べ物が注文できる場所があるからだ。そこで頼めば、本当に簡単なものだけれどお酒だって出てきたりもする。


2階には個室や談話室のような場所があり、ここも冒険者証さえ持っていれば自由に使える場所。個別の依頼案件なんかがあれば、この個室を借りて打ち合わせをすることで、他の冒険者へと情報が流れないように配慮するわけだ。他にもパーティ間でのクエスト報酬の分配や、クランと言う組織があることからあまり期待はできずとも、パーティ外からのパーティメンバー募集の待機所としても使われたりする多目的スペースになっていた。


3階からは一般的には冒険者であっても立ち入りが禁止されていて、ギルド職員専用のオフィスがあり、解体用素材の持ち込みに、鑑定依頼のあったアイテムや装備類なんかが持ち込まれ、専門の職員が待機している場所なんかがある。


4階は会議室やギルドマスターの部屋があり、そこに見た事のある赤い髪の女性と、壮年のおじいちゃん呼ばわりされていた男性が座りながら話をしていた。


「そりゃもちろん構わねぇけどよ……。わざわざうちに持ってくるってのは何か理由があんだろ? 当たり前だが分かってる事だけでもいいから情報は全部共有させて貰うぞ?」

「もちろんだ。……とは言うもののな。正直確証が持てる話でもないんだが……。」


「ああ?だから一体なんだってんだよ。」

「実は……」



フラ・ヴィシュトンテイル。


クラン『プトレマイオス』に所属するパーティ『ベガ』のリーダー。

ただし、プトレマイオスというクランは一般的なパーティの寄せ集めではない。実質プトレマイオスで活動しているパーティは3つのみで構成されており、それぞれのパーティに固定メンバーがいないという珍しい形態をとっている。

パーティに固定されているメンバーはリーダーのみで、そのリーダーは全員兄弟。つまりヴィシュトンテイル家がクランの全てを牛耳って管理しているわけだ。

クランに所属しているのは主にヴィシュトンテイル家の臣下であり、そこから派生して紹介でのみクランへの加入ができる。パーティに固定されているのがリーダーだけな事もあり、リーダーはパーティ名で固有名詞として呼ばれる事も珍しくなく、フラの場合は『ベガ』と称される事が多いわけだ。


トップクランの一つであることは間違いなく、魔法学園の講師も兼任しているフラの立ち位置は、トップクランの冒険者にしては比較的居場所が把握しやすい為、ギルドからの直接依頼が多いのは必然だった。




「謎の魔法士がグルーネとエリュトス間を頻繁に行き来しているのが確認されている。それも組織として認識されているものではなく、単体のパーティとして、だ。」

「はぁ? そんなの戦後処理をしてる今の時期当たり前じゃねぇのか?」


「いや、我々は最低限、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「……してない奴もいただろうが。」


「揚げ足を取ってくれるな。もう既に情報は共有済みだ。」

「はぁ。ってことはそういうことか。」


「ああ……。それも3人組だ。」


領主や冒険者ギルドが把握していない、それも戦略級の力を持っていそうな奴らが突然この時期にグルーネとエリュトスを行き来している? はぁ。そんなことをしそうなアホは一人しか心当たりねーんだが、さすがにあいつであれば、いきなり上級冒険者の試験に受かったりしてるところからギルドが把握してないもねぇし、あいつが動いてるならむしろ貴族連には話が通ってて当たり前。こいつにも前にあたしが紹介してやってんだから特徴を聞いたらわかるだろうし、謎の魔法士とはなり得ないか。


「わかった。あたし達が調査してくるか。」

「……悪いな。この忙しい時期に……。」


「いや、何かある前に気付けただけよかったと思えばマシだろ。」

「目撃位置は……ここからここだ。」


ギルドマスターのが地図を広げてグルーネとエリュトスの境を指差した。

なるほど、そりゃ調査依頼がウチにくるはずだ。

今その境界は一番警備が重い場所。エリュトスとグルーネの国境を越えられるのはラインハート家の許可が確実に必要で、ギルドもラインハートも知らないやつらがその国境を越えられているのだすれば、姫騎士隊をも欺ける実力の持ち主って事になる。

……もしそんな実力が本当にあるのなら、確かに一般的な兵が視察に行ったとしても何の成果も上げられないどころか、中途半端な奴等じゃ事故って返り討ちにあって被害が増すことになりかねない。ただでさえ忙しいこの時期に、そんな手間かけてたらまた大事になりかねないからな。


「ラインハート家はなんて?」

「ご当主は全く心当たりはないそうだ。戦後処理の忙しさでシルヴィアちゃんは中々捕まらなくてな。少なくとも駐留してる姫騎士隊の連中に心当たりはないらしい。むしろ信じてすら貰えなかったな。自分達が素通りされて国境をまたがれてるなんて侮辱に他ならん。」

「……。」


今からシルヴィアを探してみてもいいが、空振りになれば山脈侵攻の二の舞を踏みかねない。今の状況で後手を踏めばグルーネという国自体が傾きかねないし、姫騎士が把握してないならあたしの考えてる線は薄いのかもしれない。この時期に国益を損なうことだけはなんとしても防がなけりゃいけねぇしな。

そもそもあたしのクランにこの調査依頼を出してきたってのは、あたし達の能力を駆使すればシルヴィアを捕まえるまでもなく、その戦略級個人とやらを探し出す事ができると踏んでの依頼だからな。

……このおっさん食えねぇ事しやがる。


なんにせよ、この調査は現段階最優先事項となった。

メンツ集めて今日にでも出立したい所だな……。


ああ、あいつもいたら連れてくか……。ってか、それでなぁんか……全部解決しちまう気がしてならねぇのは……あたしだけなのかねぇ?




とりあえず、最初は寮……だな。





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