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♠妹弟達の本質。

「ねぇ、おじさん!私提案があるの!」


ユフィの顔つきが少し変わった。

露店で料理を出すっておじさんの言葉にすぐに乗っかってきたって事は、既にその方向性を考えていたって事だろう。

更にここでユフィが提案を出すってことは、俺たちも一緒に乗っかろうって魂胆だよな……?大丈夫なのか?普通露店で店番してる奴なんて1人か、多くても2人くらいだろ?3人も人手なんていらないし。それとも折角生活スタイル合わせるために一緒にバイト探してたのに、1人だけ雇って貰うか、交代で雇ってもらうのか。どちらにせよ生活スタイルは一緒にならないだろうに。


「大丈夫なのか?」


俺がそう聞くと、ユフィが真剣な表情で


「任せてみてくれる?」


と聞いてきた。

まぁ……ユフィがこういう顔してる時は正直いって母さんや姉ちゃんよりもしっかりしてんだよなぁ。まぁ任せてみても大丈夫だろう。最悪失敗したとしても、材料代を渡して、それでも足りなければ俺が力仕事でもすれば当面は問題ないしな。


「……ああ、わかったよ。しゃぁねぇなぁ。」


短くそう答えると、ユフィはまたなにやら深く考え込んでいる様子だった。




ユフィはここ数日、俺よりも頑張って友達の輪って奴を広げようと頑張っていた。

同年代の友達ってのが今までいなかったから、そりゃすげぇ楽しみで期待してたのは俺も一緒だけど、俺なんかよりもずっと周りに声を掛け続けていたんだ。……ただ、その回数が多い分、周りが俺たちに興味が無いんだって事に対する失望は大きかっただろう。


それが分かっていただけに、ユフィが生活費を使ってでも周りに溶け込もうとする事を、俺が責める事なんてできなかった。……無視されてるわけじゃないのに、自分達が同じ学校に通う同年代の興味の対象にすらならない。この辛さがわかるのって、俺とユフィだけだろうからな……。


そのせいもあってか、最近ユフィは過剰に明るく振舞おうとしていた気がする。

……気がするってか、していたよな。絶対。

ユフィがこんな顔をするのはこっちにきてから初めてじゃないか?


まぁ別に、ここで人手が募集されないのなら他を探せばいい。

生活費は2人合わせればすぐになくなるってわけでもないんだから。


……学校生活でユフィが感じすぎてるストレスが、いい方向に向くならいい。

そう思い、俺はあまり口を出さない事にした。

ま、出せる口もねーんだけど。




奥の厨房からは油が火にかかる音が聞こえ、次第に良い匂いがこの部屋まで届いてくる。そこまで大量に作るわけじゃないからか、ゆっくりと慣れた動きで動くおじさんを眺めながら俺はぼーっと座っているだけ。


「なぁユフィ。チャーハンって料理は美味しかったけどさ。王都では割とポピュラー?な料理だっておじさんも言ってただろ?ポピュラーってのが何かわからんけど、話の流れ的に一般的な、みたいなもんだと思うんだが。そんな料理で露天出して勝負賭けたって売れるのか?」

「売れるよ。」


「……ふぅん。」


考える間も無く即答とはすげぇ自信だなおい……。


「ジークはお米っていう穀物、見た事ある?」

「……ん?ないけど……。」


「うち、農家だよ?私達が聞いたこともない穀物の扱い方なんて、王都で暮らしててすぐに出来ると思う?」

「……ん~……おもわねぇな。穀物ってのは扱い方一つで美味くも不味くもなる。まぁ食材なんか皆そうだと言われりゃそうかもしんねぇけど、野菜みたいにそのまま食って美味いって物は殆ど無ぇからな。」


ああ、そういわれてみりゃそうか。

じゃあユフィはあのチャーハン食った時点で、きっとこう感じたわけだ。

チャーハンという料理を広めたのはここのおじさんで、このお店が廃れたのはどこかでチャーハンを含めたこのお店の料理法が漏れたせいだと。

ポピュラーになったのではない。

ポピュラーな物になってしまったのだ。


「はい、どうぞ。できましたよ。」


ユフィがなにやら考え込んでいる中、出来た料理がお皿にそれぞれ種類別に盛られ運ばれて来た。どうやら結構な種類があるみたいだ。俺も運ぶの手伝うかな。

ユフィは料理を見たまま動かないまま。


「お嬢さんはどうしたのですか?」

「あ、いえ。ほっといてやってください。」


おじさんと軽く話しながら作ってくれた料理をテーブルへ運んでいく。

料理を運び終え3人で席についても、俺とおじさんは手を動かす事はなかった。


ユフィがナイフとフォークを使って一つ一つの料理を解体したり、口に運んで丁寧に咀嚼して味を確かめている。


しばらくの間、沈黙が続いた。


「あ、ねぇおじさん。このお料理は?」

「はい?春巻きですか?」


「春巻き?」

「ええ。小麦粉と片栗粉を混ぜて薄く延ばした生地に餡を入れ揚げたものですね。」


「へぇ……。」

「うっま。」


正直俺は料理の事は一切わからん。

小麦粉と片栗粉って同じ粉じゃねぇのか?

なんで混ぜる必要があるんだ?全然わからん。

ただ言えることは、どれも美味い。それだけ。


「これって、中に入れる具材は決まってるの?」

「え?……ええ。そうですね。いつも同じですが……。」


「変えても大丈夫なの?」

「もちろん。美味しいかどうかは保証できませんがね。油で揚げるので合わせる物は少し難しいかもしれませんねぇ。」


「そっかぁ……。ねぇ、それじゃあ揚げる前の皮を作って欲しいんだけど!」


そう言ってユフィが席を立つと、2人して厨房へ入っていってしまった。

俺はついていってもわからないだろうし、邪魔にしかならんだろうからな。


ここにある料理でも食って待ってるか。


……どれもうめぇなこれ。

でも、普通なら例え料理がどこかで真似されたとしても、ここまで美味しければ客足が遠のくなんてありえるのか?

それとも王都の料理屋ってのはもっと美味い店が沢山あるってことなんだろうか。


海老がプリッとしていて赤いソースがピリ辛の料理とか、青い……なんだこれ?ニラか?と肉を炒めた野菜炒めに透き通った中に卵が解いてあるスープ。ん?なんだろこれ。卵以外の物もなんか入ってるな。白っぽいけど野菜では無さそうだ。色が透き通ってるのに味がしっかりしている。


……これで店閉めるまで追い込まれるって、どんだけ王都で料理店開くってのは大変なんだよ。まじで。ちょっとくらい値段が高くても王都なんだから金持ちだって結構いるだろうにな。

そ、それともちょっと位では無いのか?


おじさんは料理のお金はいいっぽいような雰囲気だったけど、払えと言われれば払わざるをえないんだよなぁ。この状況……。


手持ちがあるっつったって、ユフィと合わせても正直高級料理が食べれるほどの手持ちなんかないんだぞ?


だ、大丈夫なの……か……?


流石に俺が少しくらい働いた程度じゃ払えませんとかなったらどうしようもないんだぞ?


……し、心配になってきたなぁ……。





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