♠妹弟達の学校生活!
「……。」
「……。」
「お前、先入れよ……。」
「嫌よっ、あんたが先に入りなさいよ……。」
………………やっちまった………………っ!!!
そりゃ、ちゃんと確認しなかった俺たちも悪いけどさ……。まさか入学初日に式典とか言うのがあるだなんて思いもしなかったんだよ。
そりゃうちの村が所属してる寮にだって学校はあったけどさ、俺らが通うとしても子学校に行くか行かないかくらいなもんで、結局行けるときに少し行った程度で通ったわけでもないから、こんなの初めてだし。
学校に定期的に通うって事すら初めてだし、こんな学校の行事みたいなのだってそりゃ初めてなんだから、式典がある事すら知らなければ、その式典で大声を出すのもまずかったなんて知るはずもない。俺とユフィが外で大声を出してた事で式典中の全校生徒に丸聞こえだったらしい。
さっきまでこってり1時間も絞られてしまった。
入学して初めてが説教とか、まじ恥ずかしくて泣けてくる。
姉ちゃんにだけは本当に知られたくないな……。
最終的には、俺とユフィが何故遅れたのか納得してくれて、子学校にも通った事が無いって事を話したら先生の怒りはすぐに収まってくれたからよかったけど。
でも結局1時間も絞られてしまったせいで、ほーむるーむ?とやらの初日1限目にすら遅刻する始末。こっちに遅刻してくるって事は、どうやらさっきまで怒っていた先生が伝えてくれたらしいから、担任とやらの先生は俺とユフィが遅れてくることを知ってはいてくれるはずなんだけど……。
廊下には誰一人として人がいない。
教室の扉の先には、先生と思しき女性の声だけが響いて聞こえてきている。
めちゃくちゃ入りずれぇ……。
手がノブに掛からない。
それはユフィも同じらしくて、扉の前で立ち止まったままでいた。
「早く入りなさいよっ!」
「お前が先入れって!」
ガチャ。
「……。」
「……。」
「……。」
あ。さっき教室で会った眼鏡を掛けた女性の先生だ。
「貴方達、そんなところで何をしているの?」
「あ、えっと……。」
「その……。」
「早く入りなさい。」
「「はい……。」」
恥ずかしさで目線が上げられない。
最悪な事に、俺とユフィの席は扉から一番遠い場所だった。
同級生の視線が突き刺さる。
どこかから、くすくすという笑い声が聞こえてきた。
情けないやら悔しいやら恥ずかしいやら……。
穴があったら埋まりたい。
俺が男で兄なんだから、流石に妹は護ってやんないとな。先に立って歩いていくけど、扉を開けられなかった事については棚の上に上げておこうと思う。
「は~い!じゃあ全員集まった所で、自己紹介を始めましょう!いいですか?」
はーいっていう返事が、部屋の中からちらほらと聞こえた。
「言っておくけど貴方達、彼等の事笑っていられないからね?あの2人は魔法学園の特待入学が決まってる子達なんだから。それも子学校は全部すっ飛ばしてね?」
なぜか先生がそんなことを言い始めたものだから、部屋中が一気にどよめき始めた。視線がさらに集中してくる。どんな罰なんだよ。ほんと。
席は入口と真逆。入口は教室から見たら前側になる。
って事は俺とユフィの席は教室の後ろ側になるわけだ。
どうにかクラスメイトの視線を掻い潜って席に着くと、やっとの思いで視線を上げる事ができた。まだ感じる視線は、あまり好意的には感じられない。
全員の視線が俺に向いている。
……おいユフィ。お前何こっちみてんだよ。お前もだろ。視線誘導してんじゃねぇよ。
お前も見られる側なんだよっ!!
右隣の席からこっちに顔を向けてやがるユフィの顔を、強制的に向こうに向けてやった。
俺の右手に潰されたブサイク顔が皆の前に晒されたユフィは、登校初日一発目。とても大きな笑いを取る事に成功したらしい。……よかったな。後で殴られるんだろうけどな。俺。
顔どころか耳すら真っ赤にして、頭から湯気を出したまま机に突っ伏してしまったユフィの向こう側から、結局俺に視線が集まる。
好意的な視線も少しはあれば、そうでない視線も相当数あるみたいだ。
……こんなタイミングでこんな話されたらこうなるだろうよ……。
ほんとやめてくれ。いじめってのは怖いものだって姉ちゃんがすごく心配していたのを思い出してしまうだろ。
結局その後は何があるわけでもなく。
先生から始まった自己紹介が全員分終わり、先生から注意事項や教科書の配布、年間行事予定なんかが配られていく。
先生の名前はケイト先生……だったっけかな?
ちなみに家名っていうのも言っていたけど、長いから忘れた。
俺の生活圏には今まで家名を持ってる人なんて領主様しかいなかったんだ。覚えられるわけがないだろ。なんでそんなものがあるのか意味がわからない。
……あれ、もしかしてクラスメイトの連中も皆家名があるのか?
もしかして覚えないと失礼にあたるのか!?
どうしよう……覚えられる気がしないんだが。
まぁいいや。
そういうのはユフィに任せるとして、俺は今どんどん配られてくる書類に目を通していく事にしよう。……うん年間行事表とか、こういう物があるなら先に配ってくれればいいのにな……。
めまぐるしく変わる環境についていくので精一杯の俺たちは、成されるがまま流されていくと、どうやら昼食の時間になったらしい。
休み時間だと言われ、先生が退出していった。
バチンッ!
ユフィの平手打ちも来るとわかっていれば受け止めるのも簡単だ。
「あんた、さっきはよくもやってくれたわね!」
「知らねぇよ。お前が悪いんだろ。」
そんな些細な喧嘩をしていると、周りのクラスメイトが自分のカバンから弁当を取り出していた。
「あれ……?もしかして弁当持ってこなきゃいけないのか……?」
「え?……あれ、本当だ。ジークあんた作ってきてないの?」
「作ってきてるわけないだろ……。」
「えっ、どうすんのよ……!」
当たり前の様に皆が弁当を広げている。
どうやら知り合い同士のクラスメイトもそれなりの数いるらしくて、既にグループができあがっていた。……やばい。どう考えても乗り遅れている。
「あら?貴方達、お弁当を持ってこなかったの?」
2人で途方に暮れていると、ユフィの一つ前の席に座っていた巻き髪の女の子が話しかけてくれた。金髪で綺麗に巻いてある髪の毛がとても綺麗な女の子。どう見たって貴族家のお嬢様だよな……。
「は、はい。知らなくて……ですね……。」
「同級生なんだから敬語とかやめてくれる?」
「は、はい……。ごめん。」
だからっ!貴族様と話すのなんて初めてなんだって!
どう接したらいいのかわかんねぇよ……。
「お弁当を忘れたのなら、学校の入口から真っ直ぐ言った所に購買があるわよ?そこで買って来たらいいわ。」
「な、なるほど。ありがとうござ……ありがとう。」
「ええ。どう致しまして。」
そういうと巻き髪の貴族令嬢様は、自分の前の席の子と会話を始めてしまった。
ユフィと目を合わせ席を立つ。
「あ、あんた貴族の方とよく話せるわね……。」
「お前だってこれから話してかなきゃ、学校生活すらできないんだぞ……。」
「うっ……私、自信ないかも……。」
「「はぁ。」」
そういいながら廊下を歩いていくと、さっき巻き髪の子が教えてくれた場所に人だかりができていた。どうやらあそこが購買らしい。
「……。」
「……。」
「な、なぁ……。」
「何よ。」
「お前、いくら持ってる?」
「聞かないでよ……。」
「だよな……。」
「……はぁ。」
どうやらこの学校の購買は……俺等庶民には手がでないらしい……。
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