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魔導具がお金になりませんでした!?

「な、なんですか……?これ……。」


エストさんが書類を何枚かめくっていると、表情に皺が寄り始めた。

困惑している顔であっている……んだよね?


何か困った事でも起きたのかな?

ボクは手形を持ってきただけで、シルにはそれ以外に何かをするようには言われなかったんだよ?でも、何かすることが当たり前すぎて説明されなかったのだとしたら?ボクが無駄に知識なんて持っていたせいで説明しなくてもいいんだと思われたのかもしれない……。なんだか自分せいじゃないかって心配になってくる。


「エスト。どれがいい。選べ。」


ボクとエストさんが向かい合っていた席はソファーのように大きな物で、人が2,3人は横に座れるくらいには長い作りになっている。


一人で葛藤してると、そんなボクの心配に気付きもしないお師匠さんは、エストさんと話す為だろうか…… ボクの隣に座り始めた。

あからさまに避けるなんて失礼な事もできず、少し外へ寄って一人で固まっております……。


「し、師匠……これってどういう……?」


エストさんが顔を上げてお師匠さんの顔を覗きこむけど、堅気の職人をその体でこれでもかと言うくらい表して止まないお師匠さんは、深い説明をする気はないらしい。

それでもエストさんは慣れているのか、書類にまた視線を戻し、理解しようとしている。


「嬢ちゃん。」


横から低い声が明らかにボクに向かって話しかけてくる。

ちょっとぴくっと体が反応しながら、心の中でこれならボクの先生の方がまだましだよ!なんて毒づいていたせいで、心臓が跳ね上がって飛び出すかと思ったよ……。


おずおずと動かしたくないとボクに訴えてくる首を曲げて右側にいるお師匠さんに向けると、大きな威圧感のあるお顔が視界を覆った。そっと気付かれないように距離を開けたはずなのに、何故かものすごく近い。

いつもはおじさん1人くらいであればおじさん恐怖症みたいなのがここまで出てくる事はないんだけど……。っていうかおじさんが怖いボクでなくても、普通の女の子であればこの顔とこの威圧感は怖いんじゃないの?……うん。そうに違いない。


「嬢ちゃん?」

「あ、は、はいっ!」


「……?」


お師匠さんは自分の怖さを自覚していないのだ。

周りも男っ気しかないから気付かないのかもしれないけど、ちょっとくらいは周りの人達が教えてあげてもいいと思うんだよ?


「嬢ちゃんはどこの家の子だね?家系は?家督は?今後のそういう話は親とはしてるのか?」


疑問符を打たれるたびに攻めるようなアクセントがつく。

低い声でこんなしゃべり方をされたら怒られているとしか思えないんだよ……。

話の内容は単純に質問なんだけどさ。


「どうした?言えないのか。」

「ゲルジア様。少しよろしいでしょうか?」


そんなお師匠さんに震えて声も出せずにいると、お師匠さんと一緒に出てきた商業ギルドの職員さんが割って入ってきてくれた。

後ろから話しかけられたお師匠さんが後ろを向いてくれた事で心に余裕が戻る。


……ちなみにエストさんはよくわからない書類と格闘中だ。

いくら魔法が使える貴族家のお子さんだとは言え、全員が全員頭がそれなりにいいとは限らない。特に公式の書類って言うのはあえて分かり難いように書いてるんじゃないかって疑うレベルじゃない?そんな書類をどこかから取り出した辞書のような物を使って一生懸命に読んでいた。


あれも魔導具だろうか?

ボク達のステータス魔法とは違い、本の体裁を為しているけど、魔力を感じられる。物理的な本の辞書とは違い、書類と照らし合わせて本をめくると、自動的にページが調べたい項目へ書き換わるらしい。

マナを扱えなきゃ使えない時点で平民に普及はしないのかもしれないけど、魔導灯のように魔力を供給すれば一定時間稼動してくれるなら、あれもありなんじゃないだろうか?

……後で聞いてみよう。とても便利そうだけど、今はそれよりも助けて欲しかったです。


ちょっと難しい顔をしてエストさんを睨んでも、こちらになど気付きもせず書類とにらめっこ。


「お嬢様、ちょっとよろしいですか?」


そんな事をしていたら、お師匠さんと話をしていた職員さんが話しかけてきた。

こっちの職員さんは壮年のできるおじさんって感じの人。

おじさんと言うよりは、もしかしたらもうおじいさんに近いくらいの歳かもしれない。髪の毛も殆ど白髪になっていて、一部をデザインのように黒く染めていてちょいワルおじさん風で格好いい。

物腰もやらわかくて、商業ギルドの壮年のおじさんといえば定番アイテムであるモノクルを着けている。更にこれまた定番どおり、金色のモノクルの端っこからは金の装飾がちらっと垂れ下がっていた。


「は、はい……。」

「お嬢様、文字の方はお読みになれますか?」


「……え?……あっ。」


そんな事聞かれたのが珍しかったのは、今までボクは魔法学園の制服を着て歩いていたからだ。流石に誰だってこの国で一番難しいとされている学園の生徒に、文字が読めるか?なんて聞かないだろう。

でも、よく考えたらボク、今日私服を着てきていたんだった。


今日のコーディネートはね?

ちょっと肩幅短めで、真っ白地に花柄のTシャツに、ゆるめのサロペットなんだよ?サロペットの丈もちょっと短めで、膝丈くらいしかない。

ちなみにまだ露出しすぎだろ!とか思うかもしれないけど、これ買ってくれたのはシルなんだからね?いっつもボクばっかり露出狂だの露出癖だの言われるけど、本当に露出狂なのはシルなんだよ?そんなシルが買ってくれた服が、更に夏服ともなればこれくらいには肌が見えてしまう。

……まぁそれを涼しくて気持ちいい程度にしか感じないのは、きっとボクの前世の記憶のせいなんだよ。決してボクが好んで着ているわけでは……ないわけではないけど。


え?ボクが着ている服とかどうでもいいって?

あ、違うんだよ。そうじゃなくて、今日は珍しく私服なんて着ていたものだから、シルの小間使い程度にしか認識されていなかったってことを理解したってわけ。

このくらいの私服であれば、商人の子供くらいなら着ていても不思議じゃないしね。


「一応魔法学園に通っているので……。」


こういう言わなくていい学歴を言ってしまうあたり、自分の卑しさみたいな物を感じてしまう。


「左様でしたか。それは失礼致しました。」


職員さんの表情は全く変わらなかった。

なんだか自慢しちゃったみたいで急に恥ずかしくなってくる。

……まぁ実際の所?自慢してたようなもんなのはわかってるんだよ?

いいじゃん。嘘はついてないんだもん!


「それではこちらに目を通していただけますでしょうか?」


そういって職員さんに渡されたのは、エストさんが読んでいるものと同じくらいの束になっている書類だった。なんとなくちらっと見えているエストさんの書類と同じような書類が散見できるから、同じかそれに近しいものだろう。


ボクとお師匠さんの間に、商業ギルドの職員さんが割って入ってきている形になっているため、職員さんの向こう側にはお師匠さんの特徴的なお顔がずっと見える。

こちらをずっと睨んで微動だにしない。

ささっと職員さんを盾にするような位置に動いてみると、お師匠さんの体も逆方向に動いて視界の中に戻ってきた……。


もう、なんなのよっ!!

別にボクにはやましい事なんてないんだよ!?

例えもし手形の手続きに不備があったのだとしても、それならそうと言ってくれればいいだけでこんなに威圧されるような事じゃないじゃない!?



なんだか理不尽さが募ってイラついてきたよっ!

一発ガツンといってやろうかしら!!





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