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審判ツカエナイ・・・。

「さぁっ!全兵種解禁トーナメント単騎戦もいよいよ決勝戦まで来ましたね!いやぁさっきまでのマリアちゃんの立ち回り、かっこよかったねぇ。」

「愚痴を吐く場ではない。あまり褒められるものではないけど、言いたいことを言ってくれた感はある。」


「そうだねぇ。さて!その対戦相手であるレティちゃん。今年は波乱も大波乱!まさかの1年生が決勝トーナメント出場となったわけですがっっ!!」

「今年は相当悲惨だったって言われてる戦争で、武功を上げた子を1年だからって舐めてるからこうなる。」


「え~?……舐めてた……かなぁ?」

「明らかにもっとやりようはあった。同じ学園の子なんだから、対策を立てようと思えばいくらでもできたはず。なのにノーマーク。その時点で負け。」


「き、厳しいのね、リゥイちゃん……。」

「あの子は来年の学園祭では今以上の化け物になる。同学年の子達は今からアレを見据えて、さらにそれを凌駕しなくちゃいけない。同じ世代に本当の天才がいることを呪うか、それとも歓喜するか。……羨ましい限りだな。」


「……そうね。じゃ、じゃあとにかく決勝戦、始めましょうか!」


一瞬、リアさんの素の声が混じった気がする。

マリアンヌさんの上げた声は、本当にみんなが思っていたことだったのだろう。


なぜ自分たちの世代じゃないのか。

なぜ同じ世代に色んな人がそろってしまうのか。

考えない日はないくらいに。




今この試合を見ている同級生の皆は、今度は結果を残してしまったボクへ向かってくる挑戦者になるわけだ。今年は皆年上だったから、ボクの事を年下だからって気楽に見てくれていた人が多かったのかもしれないけど、来年は確実にそうもいかなくなってくる。さらにその次の年になってくればもっと。


ボクが試されるのはこれからなのかも。


まぁ、まずは来年も学園祭ができるように。

戦争は終わっていて貰わないといけないけどね。




「レティーシアちゃん!」

「はいっ!!」


マリアンヌさんの大声が、審判の開始の合図と完全に被った。


「最初から本気でいくわよ!!」

バシュッ!


始めてもいいものかと少し戸惑っていると、マリアンヌさんの周りが白い霧で覆われてしまい姿が一瞬で見えなくなってしまった。

霧……だろうか。

とても深い霧が会場にどんどん立ち込めていき、覆っていく。


ガインッ……


自分の周りに張った次元牢獄が黒い剣筋のような物に一瞬襲われた。かと思ったら、次の瞬間には何も見えない白い世界が再度視界のすべてを覆ってしまう。


ガンッ!ガンッ!

という音だけが四方八方から響くけど、姿が全く捉えられない。


「うひゃぁ……。」




一瞬でここまで霧を濃く発生させるというのは、正直かなり難しい。

ボクの絶対零度があればできなくはないけど、その前提条件として湿度がそれなりになくてはならないのだ。

この会場は魔法が飛び交ってきたような場所。

どちらかと言えば熱の高い魔法が飛び交うせいで、湿度は周辺よりも下がっているはず。

観客席には数万人のお客さんもいるけど、物理的な壁が張ってあるんだからリングのあるこの場所まで湿度が上がる事はそこまでないはずなのに。


ガガン!!


この視界ではむやみに設置盾(アンカーシールド)を置くことすらできない。

まさかマリアンヌさんを巻き込んでしまったら大惨事だからね……。


とはいえ、さっきから次元牢獄を殴ってくる回数が明らかに増えている。

つまり、少なくともマリアンヌさんの英霊は2体以上召喚されたってことだ。


と、とにかく!

この状況を何とかしない限りは、先に進めない。

霧を晴らす方法は確か……。


二重構造(デュアルキャスト)風熱操作(ゲイル)魔法術式(オペレイト) 天候改変(ウェザーコントロール)


少しずつ霧が薄くなっていく。

晴れ始めた霧の中、動き回る黒い影が3つ。

……動きを止め、遠くにある影に合流した。


「っ!!……やっぱりすごいわ。こんなに早く対処されるなんてね。」


既に召喚された英霊は3体。

剣型2体と槍型1体。槍型は今しがた召喚されたばかりだろうか。


先に近距離攻撃できる英霊を召喚し、動きを止める戦法だったのだろう。


特殊解除神聖魔法術式(ディスペルプレイ) 魔力暴走(リミットブレイク)!」

「え?!」


聞いたこともないような名前の魔法。

なのに登録速度もボクと殆ど変わらないほどスムーズっていうんだからすごい。

流石、今学園で1番の舞台を争う人だよね。


まぁ!そのうちの1人はボクなんだけどね!!


「んげっ!?」


一瞬で黒い英霊が3()()増えた。

さっきまで3体しかいなかったのに。


まじか。神聖魔法が強化を及ぼすのって、身体能力に限らないのか。

っていうか魔法能力も身体能力の一部だと考えれば当たり前のことだと、言われればわかるかもしれないけど、言われなきゃわからない当たり前の事はわりといっぱいあったりもする。

魔力暴走(リミットブレイク)しているのだ。何をって、そりゃ魔力回路しかないでしょ。


かなり真剣な眼差しでボクを見つめてくるマリアンヌさんを見つめ返す。


すると、どこか焦っているようにも見えるマリアンヌさんの焦点が定まっていない。さっきの魔法は一度にマリアンヌさんの英霊が増えたことから魔力量を限界以上に引き出すような効果があるのは間違いないのだけれど、そんな魔法にリスクがないわけがない。


いくらマリアンヌさんが召喚する英霊一人一人が強かろうが、主人であるマリアンヌさん自身が無力化してしまうのはあまり望ましい結果とは言えないだろう。

霧が晴れるまでに、今まで召喚していた5体までは揃えたかったのかもしれない。




召喚された新しい英霊の内、2体はよく見る僧侶型と魔道士型の2体だった。

そして残りの1体。……今までの試合の中でも見た事の無い英霊。


観客席からどよめきも聞こえる。

ってことはボクがこの大会で単純に見た事がないだけではなく、マリアンヌさんがこの英霊を公式の場で召喚したのは初めてだと見るべきだろうか。


竜……?かな……?

蛇型の龍ではなく、蜥蜴型の竜。

大きさは言わずもがな。他の英霊を凌いで余りある。マリアンヌさんを含めた5人を背に乗せる事だって出来そうなほど。


「いっ……いきなさい!なんとしてもあの壁を突き破るのよ!!」


マリアンヌさんの命令が終わる前に、騎士達が散開し魔法が飛んできた。

水滴を張り、気温を変化させることで設置盾(アンカーシールド)の位置がわかってしまう事は前の試合で実証済み。わざわざ不可視化のままにしておいてくれるはずもなく、突然魔術師の英霊がフィールド全体に湿気と冷気を送り込む。


ボクの周囲以外に不自然な水滴が見受けられない事を確認すると、低空を飛び距離を詰めた竜の爪と、騎士の攻撃が見事に同時に次元牢獄に打撃を加えた。ほとんどずれの無い連携で次元牢獄を叩かれた音が一つに重なって聞こえた程。


何も出来ないままただ見ていると、ボクの真上に上昇していった竜の口から、光る白い炎が次元牢獄ごとボクを包み込んだ。

視界を完全に遮られてしまい見えないんだけど、さっきからガガガガって音が前方から鳴り響いているのは、魔術士型の英霊さんによる物理魔法攻撃だろうか?

見た事の無い白い炎と、それを突き破って打撃を与えてくる物理的な魔法。


これ、試合よね?

ボクが今次元牢獄解いたら普通に死んじゃうんですけど??


白い炎が途切れ途切れになる瞬間に見える審判は、止めようとする仕草すら見せなかった。


一体殺傷能力の高い魔法とは何なのか。

小一時間問い詰めてやりたい。




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