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だってそこにもふもふがあるんだもの!

「可愛くない。……嫌い。」


疲れ果てたセレネさんが寄りかかっている設置盾(アンカーシールド)だけ残し、他を全て消して近づいて行くと、ふくれ顔で開口一番。拗ねた顔でそういわれてしまった。


ぷいっ


という効果音付で顔を逸らしながら。

何この人。超可愛いんですけど……。


「……。」


さわさわ。


「!!!ななっ!!何するの!」


大きなお耳を触ったら、折れ曲がっていたお耳がピンと立ち上がった。


「気持ちよさそうだったのでつい……。」


フシャァ!

とお耳を逆立てて威嚇されてしまった。


……かっ……可愛い。


「レディの耳に触るなんて!」

「あ、やっぱりお耳もダメなんですか……。」


「耳もって何?他にどこを触ろうとしてたの?」

「尻尾……。」


「尻尾!?」


壁に少し肩からもたれながらリングへずれ落ちるように休んでいるセレネさんのお尻には、綺麗な白くて丸い尻尾が見えていたのに……。

慌ててお尻の下に隠されてしまった。


「ヘンタイッ!」

「変態って……。だって気持ちよさそうなのに……。」


「もうどっかいって!」


ぷりぷりと怒るセレネさんの顔は、怒っているようだけど怖くは無いようだ。

今は光る事のない赤い目がボクを見つめないからだろうか?

試合中の様に吸い込まれるような眼力は特に感じられない。


「ちぇー。」


どうやら獣人?魔人だっけ?セレネさんの種族はよくわからないけど、獣耳とか獣尻尾みたいなのがついている人達のソレを触るのはあまりよろしくないらしい。

ボクがセレネさんのお耳に触った瞬間から、観客席のブーイングがものすごく湧き上がっている。観客席との間に魔法の壁が無ければゴミが飛んできていてもおかしくないくらいだ……。


……セクハラみたいなものにあたるのかな?

でも同性だよ?

う~ん……。惜しい。


セレネさんは魔力を使いすぎた疲労もかなりあるのだろう。

その場から立つ事もできずにいるし、尻尾を触られるかもしれないと思ったのかボクに気を許してくれそうにない。ボクは踵を返して退場するだけしか選択肢がなくなってしまった。

セレネさんは、救護の先生達がこれから来て運んでくれるだろうしね。


「貴女には少し話しがあるの。時間作っておいて。」


名残惜しさを噛締めながら振り返ると、小さい声でセレネさんの声が聞こえた。

魔法モニターを映している光の魔法に拾われない程度の音量。


ちらっと振り返ってみるけど、それ以上何も言う気はなさそうだ。

なんの話かはわからないけど、ここで話をしている限り魔法モニターに拾われて観客席に垂れ流しになるからね……。




ああ、セレネさんのお耳。

もふもふで気持ちよかったなぁ……。


手の感触を惜しみながら退場して会場から控え室のある通路に戻っていくと、通路のど真ん中に人がいる。こちらを見ているのだから、ボクかセレネさんを待っていたのかな?


「貴女、よくセレネにあんな事できるわね……。呆れたわ。」


マリアンヌさんだ。

次でこのトーナメント最後のボクの対戦相手。


「もふもふでした!」

「普通に私でも殺されるわよ。」


「……だって気持ちよさそうじゃないですか!?って言うか気持ちよかったです!」

「それは、触ってよければ私だってやりたいけれど……。そうね。貴女はもしかしたら今まで田舎で暮らしてしたのですから、魔人や獣人の方達と接点がなかったのかもしれませんけど、今貴女がされた事を当てはめれば、試合に負けて疲れ果てて抵抗もできない状況で、相手に貴女のその大きなお胸を勝手に揉まれた様なものよ?……それも観客の目の前で。」


「……。」


あー。はい。なんとなくそんな気もしてたけど、やっぱそれくらい非常識ってことなのね。

でもそうなってくると、もちろんセレネさんを辱めちゃったのは申し訳ないんだけど、まぁ我慢できなかったからいいとして……公衆の面前でそんなことするボクの痴女性もまずいのでは……?


「そう。レティーシア。貴女はヘンタイ。でもそれをやりたいとか言ったマリアンヌもヘンタイ。この国の人間は皆ヘンタイ?」


救護の先生だろうか?

女性に肩を借りて後ろから退場してきたセレネさんの声が通用口のトンネルに木霊する。

ちなみにここの通路を抜けると控え室があるんだよ。


「……聞いてたの?」

「こっち見ないで。ヘンタイ。」


「……。」

「……。」


もしかしたらマリアンヌさんにも、それはとても悪い事をしたのかもしれない。


「……はぁ。それにしたって、まさか優勝候補筆頭の貴女が1年生に負けるなんてね。」

「そう。……しかもまだ力を隠してる。生意気。」


突然そんな事を言われながらセレネさんに睨まれた。

マリアンヌさんの視線も自然とボクを向く。


「ええ……?」


力を隠してるって、そこまで隠してるつもりはないんだけどな。

そもそもいつだってボクは全力なんだよ?


そもそもボクの覚えてる魔法って、ほとんど自分が死ぬか死なないかの瀬戸際で扱ってきたものだから、一撃必殺みたいなものしかないのは仕方ないと思うんだよね?だって最初っからそういう所でしか実地講義が無かったんだもん。

だから、試合という形式で優位に進められるような魔法を開発していないのだ。と言うか、この世界情勢から言えばそんなのはみんな同じ事だとは思うんだどね。こんな大衆の面前で使っちゃいけないような魔法は控……えるようにはしているつもりだし、フラ先生にもそう言われているし。


「……そう。楽しくなりそうね……。」


……なんの用だったのかな?

マリアンヌさんはそれだけ言うと、どこかへ行ってしまった。




「貴女のそれ、次元魔法でしょ?しかも単一魔法構造。リング上にあんな数張り巡らせるとか馬鹿げてる。」

「……セレネさん、やっぱり見えるんですか?」


「貴女ならわかるでしょ?」

「……まぁ……なんとなく。」


ボクのはセレネさんとは違って生粋な単一次元魔法じゃないと思うんだけど、次元魔法の流れを感じられるのはやっぱり次元魔法系の固有魔法を持っている人に共通するんだろうか?

そんな事よりセレネさんが肩を借りてる先生がものすごい驚いた目でボクの事を見てるんだけど、言っちゃって大丈夫だったんだろうか。まぁこの学園の先生だしいいのか。

一応ボクの固有魔法は学園で管理されてるって昔先生が言っていたから、知っている人は知っているんだけどね。……まぁどうせいつかは皆にバレるわけし、次元系単一構造魔法を扱えるボクとセレネさんにはあの魔法が見えているのだとすれば、数は少ないとはいえ他にもいるであろう次元系単一魔法構造を固有魔法でもなんでもが扱える人には全員見えているってことだ。ある程度はしょうがないことなんだろう。


ま、なんか不都合があればどこぞの先生がなんとかしてくれるでしょ。

うん。任せよ。


「話ってのはこれじゃない。また日を改めて連絡する。」

「あ、はい……?あ。もしかしてしっぽも……!?」


「なわけない!!」

「えぇ……。残念です……。」


本当に。

試合の時はなぜか服から出ているしっぽも、今はローブの下に隠してしまっている。ボクとセレネさんは本当に今日数時間前に初めて会ったばかりで、固有魔法の話でもなければ別に共通の話題性があまり見つからないんだけどな……?


まぁ今は救護の先生もいるわけだし、人に聞かれたくない話なら今ここで聞いても答えは得られないだろう。

ボクもセレネさんに続いて通路を後にした。




「それでは皆さん!連戦になりますので、ここで30分の休憩をとりま~す!」


リアさんの拡張された音声が通路の向こう側から聞こえてくる。


「でも、たった30分で大丈夫かなぁ?今の試合、相当魔力使ってたよねぇ?レティーシアちゃん。」

「魔力量の管理も実力のうち。」


「それ、1年生の子に言っちゃう?」

「たんなる1年生の子にセレネは倒せない。」


「まぁ……それはそうなんだけど。」




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