こんなに怖いのなら、いらないのに・・・
「ね、ねぇシル。ちょっと聞いていい? もちろん知ってたらでいいんだけど」
「ええ、どうぞ? さっきの講義中の不審な行動の原因かしら?」
「うん……」
「あの……?」
イオネちゃんが私もいていいのだろうか? とオロオロし始めた。
「もちろんイオネちゃんも聞いてて?」
「あ、はい……」
大人しくいつもの場所に座る。
「た、例えばよ? スキルってあるじゃない? そのスキルにマップが表示されるスキルってある?」
「ん? マッピングスキルのこと? あるわよ?」
「あ、これはあるんだね」
「辞書に載ってるんじゃない? 調べてみましょうか?」
「あ、確かに」
マッピングスキル:行ったことのある場所のマップを自動で保存してくれるスキ
ル。
修得レベルが高いと、移動の軌跡や、人物や場所なども表示
されることがあると言われている。
詳細は不明。所持者は少ない。
「載ってるわね。所持者が少なくてあまり詳細がわかっていないスキルだけれど、これを取得したの?」
「う~ん、ちょっと説明しづらい部分はあるんだけど、大体これに等しいスキルがあったの」
「いいことじゃない? なんで慌てているのよ」
「それがね、これだけじゃないんだ。」
シルとイオネに魔力増幅・魔力知識・純白の魔法・マップ機能解放(マッピングスキルとして)について説明する。
「……」
「……」
まぁそうなるのもわかるよ? ボクだってさっきまで同じ気持ちだったもの……
「す、すごいです……ね……」
珍しくイオネちゃんが最初に口を開いた。
「な、なるほど。ちなみに、もしかしてそれって親になる固有技能から派生してる技能類だったりする?」
「あれ? なんでわかったの?」
あ、これを認めたら、もしかして全部説明しないとまずいのかな?
「いえ、大体一元性のないスキル群がある場合っていうのは、そういう場合が多いのよ」
確かに、スキルはスキルを訓練して派生していくのだから、これだけ一元性がないとそういう発想になるのか。
「ねぇ……言いたくなければ別にいいんだけど……」
どうしよう。言いたくないわけではない。
「そのスキルって何か秘密があるわよね?」
まぁ隠してたわけじゃないけど、これだけさっきから特殊なステータス晒してたら、何かあると思って当たり前だよね。
「そう……なんですか……?」
イオネちゃんも心配そうにしている。
「う~ん、別に秘密ってわけじゃないんだけどね……っていうか、ボクもステータスを開いて初めて知ったから、まだ検証もこれから。もしかしたら間違ってるかもしれないんだけど……」
「うん」
「はい」
「多分、固有魔法なんかより異常なスキル持ってると思う」
「でしょうね?」
「はい」
「……」
一瞬だけど、前世の記憶があることから話そうかとも思った。
でも、あまりに時代背景が違いすぎて逆にスキルの内容が伝わらないんじゃないだろうか?
別に前世の記憶があることは、隠すことでもなんでもないのだけれど、どんなスキルなのか説明するのに混乱させることもないと思ったのだ。
ただ、人の好意をスキルで知っていること。これは正直友達からしたら気分のいいものじゃないはず。
最初にスキルの説明をした時、打ち明けなかったのはそういう後ろめたい気持ちがあったからだ。
……でも、隠していたほうがよくないよね。っていうか多分ボク嘘下手だからいつかばれるし。
う~ん、結構一緒にいる時間が長いから、付き合いが長く感じていたけど、
シルは寮に入った頃だから、大体1ヶ月前、イオネちゃんは2週間前。二人とも最近知り合ったばかりの友達だから、こんなスキルで嫌われてしまうのは……
正直、怖い。
「だってそもそもの固有魔法がそのスキルから派生していたんでしょう? それならそのスキルのほうが上位なんだから異常よね。で? 元はどんなスキルだったの?」
「……ふやせるスキル……」
「え? 聞こえないわ」
「友達増やしたら無条件でスキルが増やせるスキル……だと思う……」
「……」
「……」
「……だと思う」
「……は?」
「……へ?」
「まださっきの今で色々やってるところだから、詳細はどんなスキルが取れるのか、条件があるのかとかはわからないんだけど。そもそも今までは無意識で取得していたみたいだし……」
「ちょ、ちょっと……手放しには信じられないわ……。」
「ど、どんな感じなのでしょう? 友達1人につき1個スキルが増えるのですか?」
「ううん、単純に取るだけなら1人につき最大10個増やせると思う……」
「じゅっ……!?」
「最大……?」
やっぱりシルはそういうところ気づいてくれるよね。
「そう。最大。シルやイオネちゃんからの、ボクへの好感度が……その……スキルポイントになってて……」
「好感度……? つまり、私がレティを好きになればなるほどレティはスキルがとれるってこと?」
「そ、そう……」
「あ、あの……もしかして、私のレティちゃんへの、その……好感度?がわかっちゃうってことですか?」
「そ、そうなの……」
「なるほど。それが10段階あるってわけね」
「なんか、ちょっと恥ずかしい……ですね」
「ご、ごめん……なんか人の気持ち勝手に覗いてるみたいで言いづらくて……」
「まぁ、確かに。そうですわね……。で? 私はいくつでしたの?」
「……え?」
「だから、10段階で私はいくつですの?」
「え?……あ、うんシルは6……」
「6……。あ、思ったよりも恥ずかしいわ。それって私レティのこと大好きじゃない」
「え、え、私はいくつなんですか??」
「あ、えっと……イオネちゃんは5……だよ?」
「むぅ……! シル様に負けました……」
あれ、思ったよりもすんなり受け入れてもらえたかな? 嫌な人はそうとう嫌だと思うんだけど……。
「ちなみに、あの馬鹿王子とかもわかるんですの?」
「そ、そう……わかっちゃったから授業の時に慌ててたの」
「なるほどね。で、いくつなの?」
「リンク王子様は6……」
「……私と同じじゃない。……じゃあ相当ね。はぁ」
「うぅ、また負けた……」
それから、すべての内容を説明した。
スキルの詳細も。純白の魅了という、精神干渉のようなスキルがあることも。
「でも、私から聞いたとはいえ、よく話す気になりましたわね。あまり言いたくはなかったでしょうに」
「あはは、正直嫌われるかもとは思ったんだけど、今後もしボクがこのスキルを使って色々できるなら、二人にはなるべく早く知っておいてもらったほうがいいと思って」
「そうね、今教えてもらっておくのと、後で知るのとでは、私も貴女のためにできることの幅が違うわ。そう考えれば早いほうがよかったわね」
「あ、でも嫌われると思われちゃうのは心外ですね! シル様には負けちゃいましたけど、私だってレティちゃん大好きなの、わかってるんじゃないですか。だって見えるんですもの。なら嫌いになんてならないことだってわかっちゃうはずですよ?」
「そうよね? レティとはまだ出会って短いけど、なんかもう何年も付き合いがあるように感じるわ」
「はい! 私、入学式のパーティの時レティちゃんが手を伸ばしてくれたこと、本当に嬉しかったんです。むしろどれだけ私がレティちゃんに感謝してるか、知ってもらえて嬉しいくらいで……す……え?!」
「え? レティ、何泣いてるの……?」
「え?……あれ? なんでだろ……あれ?……なんで……?」
「あーあ、イオネに泣かされちゃったわね」
「ええ?! 私のせいですか!?」
ぼふん。と音を立てながらシルの胸を貸してもらった。
温かくて、いい匂いがした。
すごく柔らかい。
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