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領主様や、シルのお母さんの言うとおりでした・・・。

王都に入ったのって、人生で数えられるくらいしかないのよ。

それこそレティが生まれる前まではお父さんの付添で検問までは付いて来ていたけどね?税金を払わなくていいように街には入らなかったの。


今回は長い長い検問の列を待って。やっと入れた頃には、もう日も暮れていたわ。


王都に入れてからすぐに宿を探してみたんだけど、どうやら学園祭とやらがとても大きな行事らしくてね?どこの宿もいっぱいで入れなかったの。

こんな時夫なら知り合いの一人位いたんでしょうけど、私は王都に知り合いなんていないから途方に暮れちゃったわ。最悪……野宿よね。王都なんだから流石に地方よりも治安はいいでしょうし?今更レティやユフィたちのところに行ってお邪魔するなんてできないでしょうし。

沢山もってきたお野菜や果物も、流石に一日中背負っていたら疲れちゃったのよね……。


「どうかしましたか?」

「あっ、ごめんなさい。お邪魔でしたでしょうか?」


疲れてしまって道端で腰を下ろし、これからどうしようかなって困り果てて途方に暮れていたらね?突然声をかけられたのよ。若そうな身なりの良い男性だったわ。


確かにレティの言っていた通り、これだけの人が行き来しているにも関わらず、マーデン村のような服を着ている方を一人も見かけないわ。

知らずに村服を着てきていたら、恥ずかしくて居た堪れなくなってしまっていたかも。ちゃんとレティの言っていたことを守ってよかったわ。村では、こっちの服の方が目立つんですけれどね。


「いえ、お困りのようでしたので。もしよろしければお力になれないかと思いまして。」

「あっ……その……。お恥ずかしい話なんですが……。私、娘に言われまして、王都にある魔法学園の学園祭?と言うものを見に来てみたんですけれど……。恥ずかしながら、到着してみたもののどうやら宿も空いてないようで、途方に暮れていまして……。」


「そう……なんですか。」


若い男性にじっと見つめられるのは、そこまで悪い気はしないのよ?でも、こんなお洋服初めて着るじゃない?私に似合ってないのかもしれないし恥ずかしいわ。


も……もしかして怪しまれているのかしら?

困ったわ……。


「もしかしてお嬢さんのお名前……レティーシアさんじゃないでしょうか?」

「えっ!?ええ。そ、そうです。なんで分かったんでしょうか!?」


「あはは……。そりゃ、まぁ……。確かに似てますしね。」

「そ、そんなに似てますか?……やだわ。」


私とレティって初めて会った人がすぐわかるくらい似てるかしら?

家族の事って案外自分達ではわからないのかもしれないわね。


「それなら寮を知ってますので、ご案内しましょうか?」

「え?……その……こんな時間にお邪魔しちゃって大丈夫なんでしょうか?」


「ご家族の方でしたら大丈夫だと思いますよ?」

「そう……ですか。すみません。お願いしてもよろしいですか?」


「はい。では、こちらへ。」


優雅な立ち振る舞い。

とても綺麗なお顔。

着ているお洋服もとても高級そうだったわね。

きっと、とても良い貴族の方なのね。


華奢なのに私が背負っていたとっても重いお野菜や果物を軽々と持ってくれてね?

とても紳士な方だったのよ。




私みたいな平民のオバさんにとても気さくに話しかけてくれながら少し歩いて、王都の中心までやってくると、大きなお城が見えたの。

そのお城が魔法学園だと教えてもらった時は、びっくりしちゃった。

お城じゃなくて学園だったのね。

イケてる紳士さんに後ろを指差されると、確かにもっと大きなお城があったのよ。

王都ってすごいわよね。建物はどれも大きいし、広いし、人も多いし。




「ん~……困りましたね。」

「そう……ですね。……あの、私ここでレティが帰ってくるまで待ってたらダメでしょうか?」


でもね?

学園寮にわざわざ案内してもらったんだけど、レティいなくって。

どうやらその寮がある所って言うのは、一般開放されていない場所みたいでね?流石にここでずっと待ってるわけにはいかないってことで、結局振り出しに戻ってしまったの。


「ちょっと待っててくださいね。」


そしたらね?

やっぱりすごい権力のある貴族さんだったんでしょうね。


どこかに連絡してくれたと思ったらね?

……びっくりしちゃった。


「ちょっとこちらへ。着いてきてください。」


そう言われて着いていった先はね?ちょっと私みたいな平民が泊まれるような場所じゃないような宿屋さんだったの。そこの1室を借りてくれたのよ。それも学園祭の期間中ずっとよ?


「あ、あの……お金は払いますので……。おいくらでしょうか?」


ごめんなさいね。

この時レティに仕送りって贈って貰ったお金を持ってたから、少しくらい足りなくても大丈夫だと思ったの。レティのお金を使っちゃったら、後で返そうとは思ってたわよ?……本当よ?


「いえいえ、大丈夫ですよ。知り合い……特にレティーシアちゃんのお母さんからお金を取ったなんて知られたら、クランリーダー……の妹に怒られちゃいますから。」

「え?……で、でも……。」

「それに貰うとしたら、そのどこぞの可愛くない妹に貰いますので。お母さんは安心してここを使ってください。それじゃ、困った事があれば宿の主にでもいいつけてください。その時には絶対に、フラの知り合いだって言ってくださいね。」


そういいながら若い男性は荷物を置いて去っていってしまったの。

フラさんって言うのかしら?男性なのに女性みたいなお名前の方。




次の日から魔法学園の学園祭が始まったわ。


すごい人ごみ。

よくわからないまま波に押し流されていたら、すごい大きな映像が映し出されている部屋に流れ着いたの。どうやらそれが学園祭のイベントの一つらしくて、どこに行ったらいいのかわからないまま部屋で映像を見ていたのよ。


ずっと……。


そしたら、ね。

レティが……いたのよ……。


ママ、びっくりしちゃったわ。

だって映像に映し出されている人達って、すごい人達ばっかりだったんだもの。

その中で飛び回るレティを見て、正直信じられなかったわ。もしかしたら似ている他人かとも思ったけど、レティに似てる人なんてそうそういるわけないものね。


1回勝って。2回目に武器が突き刺さるような負け方をして……。

2日目も、3日目も頑張って。

甚振られて、傷ついて。

何日も、何回も……。


そして今日……。

さっきまでレティが戦ってる所見てて。

ついに怖くなって逃げ出してきちゃった。


どうして?

なんでか弱い女の子が、あんなに頑張らないといけないの?

だって最後、レティちゃん怖くて震えてたじゃない。


それも、ここではそれが当たり前かのように皆さん笑って大声を出して……。


もうママ、どうしたらいいのかわからなくなっちゃって。

それで、逃げ出しちゃったの。


ごめんなさい……。





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