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ごめんなさい・・・。

いくら今のところ姿は消したままで、まだバレていないとは言え、このままこの場所に留まり続けてしまえば、いつかは接近されて次元の内側から攻撃されてしまうかもしれない。


そうなれば次元面の弱点を曝け出すことに加え、ボクのトラウマまで白昼の元に晒されかねないわけで……。


これまでも工房でハイドワーフの人達に囲まれたりだとか、こういう体験は何度かしてしまった事があったけど、トラウマって言うのは自分で思っているよりも数倍厄介なのを改めて実感した。頭がとにかくパニックになるんだよ!ほんと、もう何にも考えられなくなるくらい。




ただ、一つ分かった事もある。


ガルドさんはおじさん顔とは言え、実際は本当にボクの2個上の先輩。

ってことはまだ10代ってことだ。よくよく観察してみれば肌はぴちぴちな10代のそれだし、鍛えられているせいもあって肉体も相当若い。顔さえ見なければだけど。

それでもボクのトラウマが蘇ってくるってことは、年齢は関係ないって事だ。


まぁ流石に明らかに見た目が女性であれば、ある程度おじさん顔のおばさんだった所で大丈夫そうだから、ボクのトラウマが蘇る条件は、おじさん顔をしている男性で、尚且つそんな感じの人達に取り囲まれる事。

そこに年齢や種族による条件などないのだろう。


つまり、トラウマが蘇ってくるようなおじさん顔か、取り囲まれているかのどちらかを見なければいい。感じなければいいのだ。




いつもだったらガルドさんが今してくれているように、少し離れただけのあんな位置で警戒して止まっていてくれるのであれば、すぐにでも次元牢獄に捕まえているだろうに。

今は次元魔法をちゃんと扱える自信すらない。

下手をしたら殺しちゃいかねない。


次元魔法は怖くて使えない。


ってことでクリアの光を吸収する性質を使わせてもらおうと思うんだよ。




ガルドさんをなるべく凝視して、意識を一点に集めながらクリアの魔法を発動していく。

すると、ガルドさんが黒い靄に包み込まれていった。


「ぬぐっ!?」


あわててガルドさんが振り払おうとするも、そもそもガルドさんの体に沿って座標を指定しているのだ。振り払おうとすればその腕の振りに沿って靄が移動する為、振り払う事などできようもない。


靄はガルドさんを包みこみ、やがて黒い人型が形成された。

あえて例えるなら、マリアンヌさんの召喚英霊のように見えるかもしれない。

真っ黒なガルドさんが完成した。




「が、ガルドくん!?……なにあれ、大丈夫なの!?」

「……何が起きてるのかわからない。レティーシアちゃんの魔法なのか、ガルドの魔法なのか、それとも別の何か?」


「でも、ガルドくん嫌がってるよ?」

「じゃあレティーシアちゃんの魔法?相手を覆う闇系統の魔法?光魔法の適正がないと自分の姿を消し続ける魔法なんて魔力が足りないのに闇魔法も?……予選の時からそうだけど、あの子の使う魔法は何かおかしい。あの子、何者?」


「こないだの戦争では大活躍したって話だし、やっぱりすごい固有魔法を持ってたりするんじゃない?」

「すごい固有魔法って……そうだとしても魔法の幅が広過ぎる気がするけどな。大体使える固有魔法は魔力量の消費が半端ない。こんな連発できるものじゃない。」



うっ、そっか。相手の周りを取り囲むように魔法を設置するっていうだけでも十分おかしなことだったっけ。色々隠したほうがいいことはわかってるけど、この力がなきゃ今のボクじゃこの大会ですらついていけなさ過ぎてどうにもならない。

ついでに言えば、収まったとはいえさっきまで混乱していたのだ。未だに頭の整理がおいついていなかったりね……。




「ね、ねぇリゥイちゃん。」

「何?」


「な、なんかガルドくん、苦しそうじゃない?」

「うん。嫌がってるんじゃなくて苦しんでるなー。」


「な、なんなのよ……あの魔法……。」

「知らん。」




吸収するは()()()()


苦しそうに悶えるガルドさんを確認しつつ、自分を透過させていたクリア魔法を解除した。



「あ、出てきた。」

「やっぱり光魔法かなんかで姿を消してただけだったのなー。」


「何のために?あの闇魔法を使うのに必要とか?」

「そりゃ本人に聞くしかわからない。」


聞かれても困るけど……。


「なんで何も攻撃を受けていないはずのあの子が、あんなに憔悴したような顔してる?」

「え?……あ、本当だ。顔真っ青だね。元々真っ白だけど。やっぱり魔力酔いだったんじゃない?」


「魔力酔い……ねぇ?」

「?」


すべてをボクにとって都合のいいように解釈してくるリアさんはとてもありがたい。

昨日みたいに隣にいるのがシルだったのなら、ボクがどんなヘマをやらかしてもシルがフォローしてくれただろうし、リアさんが都合よく解釈してくれて終わっただろうけど……。


どうやらリゥイさんは違うらしい。

彼女はとても勘が鋭そうだ。

あまり弱ってもいられない。


とりあえずガルドさんのお顔が見えなくなったおかげでトラウマは消えてくれたらしい。今の状況でさっきまでのようにガルドさんが俊敏に動けるわけも無いしね。そんなことをしたら自殺行為だ。


精神ダメージはすぐに払拭できるものでもないけれど、気丈に振る舞って何かをしている体を装った。もちろんこんな無駄なことする必要ないんだけど、ガルドさんに起きている魔法現象は、ボクが引き起こしているんだという事をわかってもらえないとまずい。


ちょっと今回は自分に余裕がなかったせいで、ガルドさんにかなり危険な魔法をかけてしまっているのだから。



何分くらい経っただろうか。

ガルドさんがもがき苦しみ、やがて膝をついてそのままうつ伏せに倒れこんだ。


「審判!」


唖然としている審判の人を怒鳴りつけてしまった。

審判はこの学園の先生なのだ。あまり礼を失した事はできない。


「決着!勝者レティーシア!」


黒い靄に包まれたガルドさんを審判の先生が呼びかけたりして確認し、返答が帰ってこないことから意識が無いことを確認すると試合終了のコールが成された。

すぐさま自分の周りに張っていた次元牢獄を解除し駆け寄る。ガルドさんにかけていた魔法も解除し、低下しているであろう酸素量を元に戻す魔法を構築し、ガルドさんに流し込む。


こんな魔法、学生の、それも試合なんかで使っていいようなものじゃないんだけどね……。

あまりに危険すぎる。一歩どころか数cm踏み外しただけでも殺してしまいかねないような魔法。ガルドさんが悪いわけでもないし、もしかしたら10代でおじさん顔してるなんてガルドさんからしたらコンプレックスかもしれないのに。


この学園には自分にコンプレックス持ってる人多いよねって、さっきリアさん達が実況席で話してたしね。



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