気になる理由は可愛いからだけじゃなくてね?
ヴァンさんとアデンさんの試合は、2人とも特殊な戦闘スタイルだったのを覚えている。
ヴァンさんは魔導具の銃を左手に、右手に特殊な形をした白い石剣で戦うスタイル。
特殊な形っていうのは、剣の形を模したような石剣じゃなくて、なんていうんだろう……柄から剣身までが真っ直ぐになっているような、大きな石から切り取ったブレイド型をしている剣。無骨と言ってしまえば確かにそうなんだけど、ちゃんと綺麗に模られているので、どちらかというとスタイリッシュに見える。
相対するアデンさんなんかはもっと珍しくて、神聖魔法オンリーだった。
神聖魔法オンリーと言っても、もちろん自己強化だけじゃなくて、ボクが予選の時にあたったエリザさんが扱っていたような外部に影響を及ぼすような神聖魔法を行使していたのだ。
あれって使える人すごい少ないんだって。
珍しい戦闘スタイルの2人がぶつかった試合は、結局ヴァンさんの勝利となった。
石剣がどうとか、外部への神聖魔法が弱いとかそういうんじゃなくて、単純にヴァンさんの魔導具に対する扱いがめちゃくちゃ上手かったのだ。
この世界では魔導具自体の扱いが、魔法適正が少なかったり、魔力量が低い人のサポート用と言うイメージがあるのは否めない。
でも、魔導具を使っているからと言って魔力量や魔法適正が低いとは限らないことを思い知らされるほど。ヴァンさんはその典型だった。
戦闘用の魔導具は扱い難い。
魔導具は魔法行使を補佐してくれるけど、用途がものすごく限られるし、内包できる魔法陣が1つだけという自由度の少なさから、魔法を普通に扱える人達にとってはあまり重宝される物ではない。
1つしか魔法が登録できない魔水晶の欠片を取ってみても、何度も書き換えることで登録魔法を変える事ができるのに対して、魔法陣自体が内包されている魔導具は、魔法の内容すらも書き変える事ができないのだ。
生活用品としては、一度魔力を注げばランプの様に光を照らし続けてくれたりと、いちいち魔水晶に光魔法を登録する必要もないから、そういった使い道も多数あるにはあるけど、戦闘用としては多様性の欠如はあまりにも不利で扱い難い。
でも魔法陣が内包されている魔導具は、一定の魔力さえ払えば望んだ魔法を望んだ火力で発動させる事ができるから、魔力量が低い人や魔法適正自体があまり無い人は好んで扱う傾向にあったりもする。
それならば、その魔導具を魔力量も魔法適正もちゃんとある人が、自分の能力に合わせた目的を持って、きちんと扱えるのだとしたらどうだろう?それは魔法構造を自分の魔力で捻出しなくて良い分、魔力の消費量低減に繋がるだろうし、『魔力を魔水晶に流して登録した魔法を呼び出す』という動作を一切必要としないわけだから、それが僅かだったとしても結果魔法の速射性を高めることに他ならない。
確かに魔法適正がきちんとあれば、魔法種類が限られてしまう魔導具というのは使い勝手が悪いように思えるが、じゃあ魔水晶と並行して使っちゃいけないなんてことはないわけで。
要は自分の魔法適性に合うものは魔水晶で即時登録・即時行使が可能で、魔法適正に合わないものは魔水晶に事前登録しておけばよく、更にサポート用に目的を以って魔導具を扱えるのであればプラスに転じさせることだってできるわけだ。
魔水晶や魔結晶をボクがいくつか持っているように、魔導具と魔水晶を組み合わせたら魔法が使えなくなるなんて事にはならないのだから。
じゃあ皆それをすればいいじゃないかと思うかもしれないけど、そんなに簡単ではない。
そもそもの所、魔水晶には自分の適性が無い魔法を事前に登録して置くことが多い。適正さえあれば一瞬で魔法を登録して発動する事が可能なのだから当たり前なんだけど、かと言って実戦中に思い描いた必要な魔法を事前に全て登録して置けるかといえばそんなことはまずありえない。
もちろん汎用性の高いボクでいう所の設置盾なんかは当然登録しておけばいいだけなんだけど、じゃあいつ必要になるかわからない魔法は何を登録しておいたらいいの?と言われれば、ボクの体感でしかないけど、試合が始まる前に事前に登録しておいた魔法で実際使えるのなんて、良くて半分程度。それも試合形式なんていう、ある程度相手が分かっているこの状況下で、ボクの魔宝珠を用いて、ボクの魔力量があっての話だよ?
つまり一般的な魔法士で言えば、汎用的な魔法と必要な魔法合わせても1・2種程度と、魔法適正がなくて必要な魔法数種類程度が事前登録されているだけで、実際試合中に必要な魔法は随時魔水晶に登録しながら魔法を行使することになる。
しかも戦闘中に魔法を登録しながら相手と対面して魔法を発動するなんて事自体、結構難しいわけだ。
ここまで学園内で1学年の実力差が顕著に出ているのも、こういう実技面による差が大きいんだと思うんだよね。実行可能な魔法種の記憶、呼び出し、登録、魔力の注入、行使、そして応用。
これを実践的に使うのは魔法学園に入ってから。
1年生なんて実技の前に講義を受けてるんだから、実技をやり始めて半年すらも経っていないわけなのだ。そりゃ差も付くってものでしょ。
そこに魔水晶とはまた別の扱いを必要とする魔導具を一緒に扱うとなれば、ものすごい集中力を必要とする。ヴァンさんの魔導具の扱い方は、見事で綺麗だった。
では、こんな特殊な対戦カードの試合を“覚えている”だなんて曖昧な表現をしたのは何故か?
単純に次の試合のインパクトが強すぎたのだ。
全兵種解禁単騎戦 決勝トーナメント 1回戦最終戦。
セレネ・ルナ・ラゴス 対 ヤシロ・ヤガミ
正直ボクは、ヤシロさんと対戦はしたけど実力なんか一切見ていない。
ヤシロさんとぶつかる前にヤシロさんが違反をしてくれて勝ってしまったせいで、ヤシロさんの実力を全く知らないし、もちろん今まで通り先輩達の実力を見るのはこの大会が初めてなんだから、セレネさんの実力だって知らない。
ちなみに予想通り、セレネさんが兎人族の人だった。
特徴的なうさみみに、兎の丸いふわふわした尻尾が隠れているだろうローブの突起。そして赤く光っているような虹彩。
ボクがイメージしていた兎の獣人さんとはちょっと違って、兎の耳が結構大きい。頭よりも大きいかな?それなりに重そうで、途中で折れ曲がって下を向いている。
もちろんバニーガールみたいな衣装を着てくれているはずもなく、全身ぴっちりとした軽装みたいなローブ服。まぁあれはあれで体のラインがしっかり出ているので恥ずかしいっちゃ恥ずかしいけどね。
獣人さん達にも、それぞれのモデルとなる動物にも種類があるように、同じ種族の獣人でも特徴的な違いとかあるんだろうか?セレネさんの黒目部分は真っ赤。そして耳や尻尾の色が白い。
控え室にいた頃からずっと気にしていたのは、別に珍しい兎人族の獣人さんというからだけじゃないんだよね。
まぁそりゃ気になるよね?
だって白毛で赤眼の兎ちゃんは、アルビノ種なんだから。
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