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1年ってこんなに重いものなの?

「さぁ!次の試合はお待ちかね!我が国の王子リンク様の登場ですっ!!いやぁ、リンク様って1人だけ全トーナメントで決勝の舞台まで勝ちあがって来てるんですよね?すごいですねぇ。」

「昨日の団体戦の方は棄権だったでしょ。」


「え、そうなんですか?何かあったのでしょうか?」


そ、そうなんですかってリアさんボクと一緒にいたのに……。


「知らん。見てなかったの?ま、団体戦の方は結果も見えてて出るだけ無駄だったしなー。くっそ面白くもなかったし。ああいう出場は来年から規制するべきだなー。」

「ああ~それもこれも、リンク様のお相手である……あーなんか気取ってる顔がやけに癇に障る人ですねぇ。またこの人ですかぁ……。」


「あいつを気に入らないのはリアだけ。リアはフェルトに振られたの根に持ちすぎ。」

「ちょ!!ふっ、振られたんじゃなくて振ったんですぅ!!!」


試合開始前で魔法モニターに映るのは実況席にいるリアさんとリゥイさんの2人。

リゥイさんに関しては頭の一部しか魔法モニターに映ってないけど、その頭の動きがなんとも言えず可愛いんだよね。


なんというか今度はフェルトさんの立ち位置がとても可哀想。

試合前に実況側から精神的なダメージをチクチクと蓄積させられて、笑っているお顔がどこか引きつっているのがわかるんだよ……。


まぁ既にこの会場にいる皆は気付いているかとは思うけど、この組み合わせは昨日もやった組み合わせだ。

リンクが槍に突き刺さる光景。

嫌な記憶が蘇る。


「昨日はリンク様フェルトくんに負けちゃったけど、今日は勝ってほしいですね!」

「リンク様とフェルトは基本タイプが一緒。能力をブーストして兵科の能力を押し出して戦うのであれば、昨日その試合で上回ったフェルトに軍配は上がる。」


「え~!?フェルトくんの串刺しとか超スカッとするのになぁ。」

「その能力差をどう埋めるかがリンク様の課題。」


司会進行の2人、会話噛み合ってる……?ま、まぁそんな事はどうでもいいんだけど、実況席から頭しか出てないリゥイさんが、なんで試合を見れているのだろう?それが不思議でならない。本体はあの頭のお団子なんでしょうか?2つあるからお目目でもお団子から生えてるのかなぁ……。


なんてどうしようもない事を考えていると、リングの中央で再び向かい合う2人の姿が揃っていた。


「はぁ。ツイてるのかツイてないのかわかんねぇな……。卒業前にこれだけ手合わせさせて貰えりゃありがてぇことだな。センパイ。」

「お?王子が先輩と認めてくれるなんて嬉しいね。」


「けっ。」




「お願いだから昨日みたいな事にはなりませんよぉ~にっ!!ではフェルトvsリンク王子の試合を始めますっ!!」


リアさんの合図で観客席も盛り上がり、審判の合図で試合が開始される。


フェルトさんの軽装の右胸に刻まれている紋章が淡く光ると、次の瞬間。

フェルトさんが立っていた位置のリングが陥没した。


「うげっ!?」


試合開始から1秒も経たないであろう内にリンクの右肩から鮮血が噴き出す。

フェルトさんの姿が消えたことに気づいた時には二人の立ち位置が逆転し、リンクが肩を抑えながら振り向く。


「王子。気を抜いてちゃだめじゃないか。」

「っくそっ!!一瞬たりとも抜けてねぇんだよ!」


慌てて動き出したリンクも魔法種禁止トーナメントの時とは比べ物にならない力とスピードで応戦し始めた。




「……うひゃぁ。な、何あれ……?」


この控え室に来てから誰も知り合いのいないボクに気を使ってくれて、いつも一緒にいてくれてたリンクは今試合中。ボクの問いに答えてくれる人なんていないのに、思わず口をついて出てしまった。魔法モニターの向こう側に映る光景があまりに不自然すぎて理解が追いつかない。


魔法が使えるトーナメントなんだから、別に自己強化だけが全てではない。というか本来であれば自己強化は状況へ対応できる程度に掛けておくくらいで、主に元素魔法が主力となるのが常なんだけど。とは言え試合前にリゥイさんが言っていたように、リンクは自己強化型の前衛タイプを主な戦闘スタイルとする。つまり魔法自体に攻撃や防御を頼るのではなく、自分の肉体やスキルに頼り、その補助や性能の底上げに魔法を使用するわけだ。


そしてフェルトさんも同じタイプ。

最初の1撃なんかは明らかな自己強化だったんだろうけど、それにしたっていくらなんでも踏み拉いたリングが陥没するなんて、どんだけの力よって話だし、何よりも発動から体になじむスピードが段違いに早い。




あ、ちなみにボクが何あれ?って思わず口走っちゃったのはそのことじゃないんだけどね?何が気持ち悪いって、その後ずっとリンクを襲い続けるあのフェルトさんの槍よ。


魔法種禁止トーナメントでは何の変哲も無……くはなかったけど、槍にしては刃の部分が異常に長くて、ちょっと細い綺麗な装飾があるような、変哲もないって言ったら相当なレア物なんだろうから間違ってるだろうけど、ティグロ先輩の魔道剣みたいに『何あれ?』とはならない武器。

確かに金属製の武器にしては柄がしなっていたし、なんかプレセアさんとの試合では直角に折れ曲がったりもしていたけど……。でも、ただそれだけだったのに。


その槍が今度は更に、伸びるわ曲がるわ折れるわ……。あんなのどうやって避けろって言うんでしょうか?プレセアさんとの戦闘で曲がったのは、ボクなりに節があるんじゃないかと当たりをつけていたんだけど、それだけという訳ではなさそうだ。


まるで刃先が対戦相手であるリンクへと誘導されるかの如く、リンクがフェルトさんの槍を避けたり受けたり弾いたりする度に、急にフェルトさんの槍の先端がリンクを襲う。まるで槍に蛇の霊でも乗り移っているかのように、生きているような軌道を描くのだ。

このレベル帯だと、神聖魔法以外は殆ど実用レベルとはいえないリンクにこんなの防ぎようもなく。生傷が一太刀を負うごとに増えていく。


リンクの折角修復した防具が削れ、また鮮血が鎧を赤く染めていく。

リンクが着ている上等な防具を物ともしない破壊力に、どこから襲ってくるのか分からない刃先。更に最悪な事に、自己強化後の身体能力すらも魔法種禁止トーナメントから比べて更にかけ離れてしまっているのだ。


単純に全てをフェルトさんが上回っている。

身体能力も、戦闘能力も、魔法性能も、武器の扱い方すらも。


「あわわわわっ!!」


魔法種禁止トーナメントでは、それでも2人の試合は様になっていたのに対して、明らかに一方的な試合になっていることに会場中が言葉を失ってしまった。

リアさんだけが目の前の光景にうろたえ、拡声器に乗った声が会場に響く。




あのフェルトさんが持っている槍は、プレセアさんのシザーレイジでも破壊できず、魔力を注がずとも撓ったり曲がったりする程度の芸当ができる特殊な槍である事は確か。でも魔力を込める事でこんなに伸びたり縮んだり、折れたり曲がったり、それが直線に戻ったりするなんて誰が想像できるだろうか?武器のリーチが思い通りになるというのは、ボクの想像を超えるくらいには優位な事なんだと思う。リンクのやり辛そうな顔を見れば、少し位武の心得がある人であれば想像に難くないだろう。


この場が試合であるが故に、リンクだって本気で使える魔法やスキルは限られているとは言え、それはフェルトさんだって同じ事。目の前の光景を見てしまえば、その抑えた力ですらもあそこまで兵科の能力でリンクを圧倒できる人がいることが驚きでしかない。

そもそもあの武器は初見で避けるなんて出来るはずがないし、もしも試合でなく、あの槍に本来の殺傷能力が戻るのだとすれば、フェルトさんは既に戦術級の戦闘能力を持っているのかもしれないね。




結局、武器の性能もそうだけどフェルトさんの兵士としての身体能力が高すぎてリンクは防戦一方に追い込まれ、そのまま削られきってしまう結果となった。


試合を審判に止められ、負けを告げられたリンクが何も言わず会場を後にした。


両者が武器を取って戦う状況で、リーチが長い武器種代表である槍の攻撃を、受ければ確実にダメージを食らい、回避するには2手3手先まで読んで避ける必要があるなんて無理すぎる。


……ただ、昨日よりも成す術なく会場を後にしたリンクは、今何を思っているのだろう。


控え室に戻ってくる事の無かった彼を思いながら、ボクも控え室を出た。

今回はボクがちょっかいをかけに行っている暇はないのだ。


だって次は……。


リンクがいるのであろう教護室を見つめていると、後ろの部屋の扉が開く音がして振り返る。




ボクも、つい先日ボロボロに負けた相手と再戦となるのだから。




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